めまいがする
エリオットは眩暈がした。
あの、エリオットを裏切って、そして、幼馴染のエミからはエリオットが好きなのではと言った、昔から知っているリアネーゼが……外の世界の神?。
冗談としか思えなかった。
けれどエリオットに対抗できて、この前出会った魔族クロックも、リアネーゼが何者なのだと問いかけた。
外の神と言われて現実味を帯びてくる。
「突然こんなことを言われれば混乱するかもしれない。だが、私達はずっとリアネーゼの事を時折監視していたのだよ。そして確信した」
「監視……」
「そう。だから、私達は君の事をディアよりもよく知っている。……優しくて誰にも心を許さないような君を、ね」
その言葉に、エリオットはぎくりとする。
それは以前にエミにも言われた。
エリオット君は、誰にでも優しいから、と。
そんなつもりは無かったし、エリオットはあの裏切りがあるまで親友だと思って、エミのことも大好きだった。
けれど周りからはそう見られていたのだろうか。
もしかしたならディアも?
不安が膨れ上がるエリオットのその表情に気づいたのか、ディアの父が、
「とはいえ、普通に君が優しくて、とても平等なだけだったのかもしれない。ある意味、人がイメージする勇者そのものを体現したような、お利口な子、だったのかもしれない」
そう言われて、けれど悪さだって随分したようにエリオットは思う。
そして母に怒られたりと、色々した記憶があって、そんな子供ではなかったとエリオットは記憶のなかから探す。だからそこから、
「俺を勇者の血という面で見ているから、そうなるのではありませんか?」
勇者の血を引いているから正しい。
勇者の血を引いているから強い。
勇者の血を引いているから……。
幾度と無く陰口を叩かれたけれど、それでもエリオットはそれに見合うだけの実力を見せてきた。
そんな中であの二人の幼馴染の存在はエリオットにとっても支えでもあり大事にしていたつもりだ。
だから、特別といっても過言ではなかったのだが、
「ははは、リアネーゼも、本当の俺は見てくれていなかったって事か」
結局誰も分ってくれていなかったのだ、エリオットの事など。
そう俯くエリオットを、ディアの父と母が顔を見合わせてから慰めようとする。と、
「寝ているのにうるさいよ! エリオット……ディア?」
カミルがソラを連れて現れた。
そして中にいる人たちに目を瞬かせると、ディアの父がそれを見て、
「南の魔王様に、その勇者の末裔か」
「!」
二人が警戒するようにディアの父を見る。それにエリオットは、
「分るのですか?」
「それはまあ。一応元魔王だからね。気づかない方がおかしいよ」
「……ディアは気づきませんでしたが」
「……そうか。妙だな。だが、今私達はディアに会えないし、困ったな」
「どうして会えないのですか? ディアは会いたがっていますが」
以前に聞いたのだ、両親を探しに行ったと。けれど会えなかったと。
ディアは、少し悲しそうに言っていた。
だからそう問いかけるも、ディアの父は首をふり、
「まだ駄目だ。あったなら自動的に今まで集めた東の神が持っていた魔法が全てディアに注がれる仕組みになっているから。不完全なままの覚醒では無理だ」
「そうなのですか?」
「ああ、とはいっても後残りは君の力だけだから、君が早くディアに勝つか負けるかしないと、ね」
「……ディアとの関係を認めていただけるのですか?」
エリオットが勝てばディアはエリオットの花嫁で、負ければエリオットが花嫁だ。
もちろんエリオットは負けるつもりはないが。
「選ぶのはディアだからね。私も無理を押し通して、空から落ちてきた彼女を花嫁にしたわけだし」
「空から?」
「ああ、人間の祖先も空から降ってきたのだよ。とはいえ、昔よりもこの世界と外の世界はとても近くなっているがね」
それは余計に外の世界の神々に奪われやすい状況である。
「そんな、どうして……」
「神から魔王への反転によって、随分と近くなってしまったのだ。外とこの世界が」
「でもそれはずっと昔の話でしょう?」
「長い時間をかけてゆっくりと近づいてきたのだよ。そして、外の世界にいる四人の神が内の、最強の神、リアネーゼがこちらに来た。幼子に化けて、その気配を消して、な」
その話を聞いていたソラとそしてカミルが驚いた顔で、エリオットを見た。
エリオットと関係の深い幼馴染と同じ名だったからだ。
そこで、エリオットは疑問に思う。
「……ディアの力を戻して、そして、リアネーゼを殺すのですか?」
一応幼馴染で、裏切ったとはいえ殺されるのにはやはり不安があるエリオット。
そんなエリオットにディアの母が、
「それは私も止めて頂きたいわ。リアネーゼ様は私の祖国の神ですし」
「ではどうやって彼らに対抗を?」
「圧倒的な力の差があればそれだけで抑止力にもなるし、その力さえあればこちらも手加減が出来ますから、相手もそれほど深手を負わずにすむでしょう」
「……東の神は、それほどまでに強かったのですか?」
エリオットに疑問、それにディアの母親は、
「そうですね、私は姫という立場上、四人の神々とお会いした事がありますが、夫であればリアネーゼ様やもう一人くらいには対抗できます。ただ、四人同時はきついでしょう」
おっとりと呟いたのだった。




