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僕の事を称えよ

 二日後、王城に来た勇者エリオット達だが。

「ああ、お前達か。ではほどほどに頑張ってきたまえ。はい、旅の資金だ」

「ありがとうございます」

 王様とそのような会話をして終わりだった。

 そして城を出て少し歩いてから、ソラが家の壁に手を添えて、

「……き、緊張した」

「ソラは真面目だからねー、よしよし頑張った」

「頭をなでるのは止めてくれ。それとカミル、その能天気さに俺は羨望を覚えざる終えない」

 そう疲れたようなソラを、カミルがよし、能天気を注入してやるー、といって抱き付いていた。

 そのやり取りがどう見ても……。

「やっぱり二人は恋人同士」

「違うよ」

「違うな」

「……そうなのか」

 本人達が否定をしているので、どうも恋人同士ではないらしい。

 なので、エリオットはそれについて考えるのを止めてから、

「では、このまま打倒魔王への旅に出るがかまわないか? もし忘れ物があるようであれば……」

 そこで、カミルが手を上げた。

「はいはーい、今の時間だと二つ先の町までいけるけれど、どうしますか?」

「いや、一つ先の町にしよう」

「何で?」

「……普通、魔王を倒す過程で、その場所その場所の特に強い奴を相手にするだろ?」

「ああ、その地域のボスですね。人間に酷い事をするそんな魔族……でも、そんなのいたかな? 東の魔王様関係でそういうのは、初代がぶち切れてた時くらいだしな……」

「……カミルは、俺でさえも知らない事を知っているんだな」

「ふ、ふ、ふー、この僕の事を称えよ! ……むぐっ」

 そこでカミルの口を、ソラが手で塞いだ。

「すみません、エリオット様。カミルがこんなで」

「エリオットでいい。というかこの前まで呼び捨て……」

「実の所、本物かどうか疑っていました。しっくりさんの可能性もありますし」

「……俺はそんなに頼りないのか」

「い、いえ……ただ昔のような覇気が無いだけでして」

 ソラのその言葉にエリオットは、自分はそんなに変わってしまったのだろうかと考えていると、

「ぷはぁ……エリオットはね、幼馴染の男女に裏切られたんだって。しかも女の方は、エリオットの彼女の振りしていたんだって」

「……すみませんでした」

「いや、いい。でも俺はそんなに鈍って見えるか?」

「はい。昔、剣術大会で見た貴方様は、例え俺でも、剣に関してどんな点においても勝てない、そんな素晴らしい方でしたから。だから剣士になるのは諦めたんです」

「でも、剣は使える……」

「一番じゃないと知名度が無いから駄目って、カミルで言われていまして」

 そう笑うソラに、エリオットはカミルを見て、

「……厳しすぎるんじゃないか?」

「でも、ソラならそれが出来るから。僕は出来ない事を要求したりは……あまりしないよ?」

 そう笑うカミルに、いつもの気楽さが消えてどこかとても賢く見えて、それ故に威圧感を感じる。

 中々の曲者だと思いながら、エリオットは今の言葉で、

「やっぱりカミルはソラにべた惚れなんじゃないか」

「もう、どうしてそう色恋に結びつけるかな。そう思わない? ソラ」

「そうだな。そういう所がエリオットの悪い所だ」

 そう口々に答えるソラとカミルに、そういう事にしておくよとエリオットは嘆息して……掲示板に張られた紙から普通の馬車に、空きがない事に気づいたのだった。


 荷物を積んでいる荷台に乗せてもらえる事になった。

 この荷馬車の主は、良い小遣いになったと喜んでいたのはいいとして。

「エリオット、ようやく終わったー」

 突如現れた東の魔王ディア様は、目に大きなくまを作って虚空から現れると思うと、そのままエリオットに抱きついた。

 長い黒髪がさらりと宙を舞い、その姿を隠そうとしていない。

 疲れのためかいつもよりも無防備な魔王ディアのその様子に、エリオットが必死で劣情と戦っていると、抱きついたままの魔王ディアが勇者エリオットを見上げてにっこりと笑った。 

「準備が整った。えっとこのルートを進んでこの赤いマークの所で腕試しをしてくれ。ちなみに何回でも手合わせしてやってくれと伝えてある。あとは、一応こちらでも医療班を揃えたから、怪我をしても大丈夫だ」

「至れり尽くせりで、ありがとうございます。俺の最愛の魔王様」

「な! え、えっと……ふ、ふむ。私もようやく魔王らしい仕事が出来たし、五傑の……」

 そこでふと、エリオットが疑問の声をあげた。

「五傑? 五人衆ではなく?」

「我々の間では、両方使う。何せ魔王を守る勇敢で強く賢く美しい男の五家の者達だからな」

「……絶対に倒してやる」

 魔王ディアが何処か誇らしげに自分以外の男を褒めるので、勇者エリオットのささやかな嫉妬心に火がついた。

 と、そこでカミルが魔王ディアに近寄ってきた。

「魔王ディア様ってこんなお姿なんですね。これはもう、勇者エリオットが惚れるのは間違いありませんね。ね、ソラ」

「そうだな。これだけの美姫にはお目にかかった事が……」

「……私は男なのだが。そのお姫様のように言うのは止めてくれないか?」

「え? だってエリオットのお姫様なんでしょう?」

「まだ姫とは決まったわけではない。私がこの勇者エリオットを負かせれば、エリオットがお姫様だ」

 カミルが、魔王ディアを見てふむ、頷いてから、チラッとエリオットを見ると俯いている。

 この魔王ディアが手に入らないかもしれないと思って、やっぱり戻ってベットで寝ていた方がましだな、と思っているのだろうとカミルは推測し、実際にエリオットはそんな事を考えていた。

 罪作りな魔王様だと思いながらも、カミルは、

「所で、さっきの五人衆の話について、魔王様にお聞きしたい事があるのですがよろしいですか?」

 墓穴を更に掘る前に、カミルは話題を変えたのだった。

次回更新は未定ですがよろしくお願いします。

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