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大まかな自己紹介

 場所を、今度は喫茶店に移して。

 そこで大まかな自己紹介をする事になった。

「まずは俺から。エリオット・テンダーです。職業は勇者?、剣士? です。よろしくおねがいします」

「よろしくー、次は僕だね。僧侶で、治癒系呪文が得意。蘇生っぽい事もできるよ、なお得感満載の僧侶です。趣味でえろい小説書いてます。キラッ☆」

「……これの幼馴染で、魔法使い兼剣士兼弓使い兼槍使いの……普段は槍を使う事が多い、戦士です。よろしく」

 カミルの事をこれ扱いしたソラがが、カミルになんで僕の事をこれだというんだと、責められていた。

 けれどソラは、あー、はいはい、と適当に受け流している。

 その二人の仲の良さが、どことなく……と、エリオットは思ったので。

「二人は恋人同士なのか?」

「ごふっ」

 ソラが可哀想な事になっていた。

 喉に牛乳を詰まらせて、少し苦しそうにしながらどうにか飲み込んだようだった。

「違います。ただの幼馴染です。このカミルにいつも巻き添えになっている……」

「えー、ソラって、僕の事そんな風に思っていたの? じー」

 カミルが、じーとソラを見ると、ソラが顔を赤くして顔を背ける。

 そして、牛乳を再び手に取り、ごくごくと飲む。

 その様子を見ながらカミルが、

「……ソラが牛乳を飲みだしたのって、僕より背が大きくなりたいからなんだよね」

「……誰に聞いた」

「ソラのお母さんからだよ」

「母さん、どうしてそんな余計な事を……。だが、今は酒場で牛乳を飲んでいるのには理由がある」

「ほほう、どんな?」

「お子様だからだ! 俺は酒が飲めないからな!」

 何処か偉そうなソラだった。

 つまり、『お酒が飲めない→大人じゃないな→お子様→子供はミルクでも飲んでいろ』、という三段論法?によるらしい。

 そんな堂々としたソラに、エリオットは別の気になる事を聞いてみた。

「でも、魔法から何から幅広く出来るなんて、凄いと俺は思う。どうしてそこまで?」

「……俺の個性が、不純な動機で決まるからだ」

「? どういう意味だ?」

 ちらっとカミルを見て口をつぐんでしまうソラ。

 そんなソラを見て、カミルが嬉しそうに、

「僕が、魔法使いが素敵だなー、ていうと、魔法使い目指して、槍使いも素敵だなー、っていうと槍使いを目指すんだ」

 そんなにこにこ笑うカミルを見て、エリオットは冷や汗をたらしながら、

「……付き合ったらどうなんだ。二人とも」

「どんな風に?」

「そうだな。二人っきりで公園に遊びに行ったり、劇を見に行ったり、喫茶店で話し込んだり……」

「そんな事、よくやっているよ。ね、ソラ」

「そうだな、変わり映えしないな」

「……愛の形は人それぞれか」

 新たな世界が開けたようにエリオットは感じた。それは良いとして。

「これから、色々と大変になると思うがよろしく。明日は王様に一応挨拶に行くから」

「だが、エリオット、侵攻はしてきていないのだろう? だったら特に報告は……」

「だめだよ、お金! 貰えるものはきちんと貰っておかないとー、むぐっ」

「カミルは口を塞いで黙らしたから良いとして……特に激しい戦闘は無いのだろう?」

 むーむー言うカミルの口を押さえながら、ソラがエリオットに問いかけると、

「……東の魔王対策として、俺が派遣されるのには理由がある。西の魔王との戦闘の間に手薄になった人の国を、東の魔王が侵攻しないとは限らないからというのだ。もっとも、俺は先の勇者が西の魔王に倒されてしまった場合の予備の意味合いも強いが」

「つまり東の魔王はどうでも良いが、監視対象であると?」

「一応魔王で魔族だからな。西の魔王達と同じ。だから不安なのだろう」

「確かに完全に信用は出来ないが……分った。では明日礼服を着て……」

 王族の前に私服というのはおかしい。だがエリオットは首を振り、

「そのまま旅に出るから、そういう格好の方が良いと思う」

「え! 一日で用意するのか?」

「……どれくらい日にちは必要ですか?」

「二日は欲しい」

「では二日後に、城の前で……カミルはそれでいいか?」

「おっけーでーす。色々持っていこうっと」

 そんなこれから旅行でもするかの様な気軽さで答える僧侶カミルと、疲れたような戦士ソラ。

 その二人とその日エリオットは別れたのだった。


「今何とおっしゃいました、魔王様!」

「え、だから勇者に会って、ここまで来るようにって……」

「何て事だ……まさか勇者に一目惚れをしたなどという事はありませんよね、ディア!」

「え、あ、う……えっと……」

「……ああもう、勇者許すまじ」

 そう怒って走っていく、魔王の側近、五人衆が一人、“緑の人”のレイト。

 彼は他の仲間に、その危機を伝えるべく走っていく。そんな彼の後姿を見送りながら、

「……どうして分ったのだろう」

 そう、魔王ディアは不思議そうに首をかしげるのみだった。

次回更新は未定ですがよろしくお願いします。

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