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「うむ、ピンチじゃ」

「二本ともかわされちゃったよっ!」

「いかん。必殺適当に投げただけソードがかわされてしまったようじゃ」


 あれ? そんな技名だっけ?

 適当に投げただけで必殺ってまたトンチンカンな……


「ヴォルクス様ピンチじゃない?」

「うむ、ピンチじゃ」


 姉ちゃんが小首を傾げて呟くと、ヴォルクス様に聞こえていたのかすぐさま答えた。


「名付けてヴォルクスピンチじゃ」


 続けて胸を張ってそう言うヴォルクス様。

 ……なんでピンチにまで名付けたんだろう?


「なーんちゃって――」

「ヴォルクス様よそ見しちゃっ――」


 ヴォルクス様がこっちの方を振り向きながらニコっとしながら言いかけたところで、一角馬が土煙りを立てながらヴォルクス様のいる所を角を突きたてて烈風のごとく通り抜ける。

 ……ヴォルクス様やられちゃったの?


「あっぶないのぅ」


 そう思ったところで聞こえてくるヴォルクス様の声。

 だけど、ヴォルクス様の立っていた位置の土煙りが薄くなってきても、ヴォルクス様はそこには居なかった。

 一体どこに?


「えっ? あっ、上だっ!」


 姉ちゃんが空を指さす。

 するとヴォルクス様がくるりと回ってから空で髭をなびかせていた。

 一角馬はヴォルクス様をしとめれていない事に気が付くと、身をひるがえして再びヴォルクス様の方を向く。

 ヴォルクス様はにやりと笑うと、両手を引く動作をする。

 すると地面に刺さっていた剣がヴォルクス様の手元に吸い込まれるように飛んでいった。


「え? あれ? いつ西魔術使ったの?」

「いや、あれは最初に使った奴をずっと切らしていなかったんだな」


 僕の疑問にすかさずライガさんが答えてくれた。

 それって、一角馬が来る前に使ったやつ?

 そうか、それで白い尾を引いていたのか。


「へー、西魔術って一回放って終わりじゃないのもあるんだね」


 姉ちゃんが僕に向かって感心したように言ってきた。

 そうでしょ? すごいでしょ?

 僕はそう思ってうんと一度頷いて返すと、なんとなく鼻が高くなった。

 そうこうしているうちに一角馬が嘶く。

 それと同時にヴォルクス様が着地をする。


「ソーラ、カイトよく見ておれ。これが剣と西魔術を使った戦い方と言うやつじゃ」


 ヴォルクス様がそう言うと、一角馬とヴォルクス様が同時に駆けだした。

 一角馬のスピードが今度は瞬時にトップスピードに乗り出すと、そこを見計らったかのようにヴォルクス様が高くジャンプをすると、空中から剣を投げる。

 しかし、それはさっきと同じように避けられてしまう。


 ……ヴォルクス様ダメだよ。それはさっき通用しなかったのに。


 そう思った瞬間に二振り目を投げる。そしてそれも当然のように避けられる。

 だけどそれと同時に一振り目を手元に引き寄せる。 

 そして戻ってきた一振り目を続けざまに投げると二振り目を同じように引き寄せる。

 繰り返されるヴォルクス様の剣の投擲。

 やがて一角馬はよけきれなくなってその胴体に次々と投げられた剣が命中する。


「ふんふんふふふーん」


 楽しげなヴォルクス様の鼻歌とは一転して、一角馬のいる地点には二本の剣が雨のように降り注ぐ。

 空中から投げられた剣が一角馬の体を突き抜けて地面を掻いて土煙りを上げる。

 ヴォルクス様が地面に降りてきて攻撃をやめる頃には一角馬は土煙に覆われて見えなくなった。


「どうじゃ、ソーラ、カイト。参考になったか?」


 ヴォルクス様が自信満々にそう言ってきた。

 ……僕たちは揃って首を横に振った。


「なんじゃとっ! 何故じゃっ!」


 心底ビックリしたかのようなヴォルクス様。

 何故と言われてもねぇ……

 あれは剣と西魔術の戦い方というか――


「翁よ。あれでは西魔術で剣を扱って見たという方が正しいですな」


 僕の気持ちを代弁してくれるライガさん。

 僕と姉ちゃん。それに母さんまでうんうんと頷いた。


「ぐ、ぐぬぬ――。リックならわかってくれるはずなんじゃが」


 悔しげに唸るヴォルクス様。

 どうかなー? 父さんならわかっちゃうのかなー?

 でもまぁ、確かにすごかったし、あれじゃどんな敵でもひとたまりもないよね。

 あれが≪幻双剣≫って言われているところなんだろうか。

 そう思っていたところで、土煙が不自然に裂ける。

 裂け目から一角馬が飛び出してきた。

 しかも無傷だった。

 ど、どうなってるの……?


「なんとっ! あれだけ攻撃がまるできいとらんとは」

「翁よ。……一角馬の体はほぼ魔力によるもの。あれではまともにダメージが通ってませんぞ?」

「わ、わかっとるわいっ! ふー……」


 ヴォルクス様が二本持っていた剣を一本地面に突き刺すと、両手で一本のバスタードソードを構えて深く息を吐く。

 今度は一角馬が駆けながら角の先端から火の玉を連射してきた。


「ふんっ!」


 ヴォルクス様は剣を片手に持って一薙ぎで飛んできた火の玉の全部をかき消す。


「むっ!」


 離れた位置に居るライガさんがなぜか垂直に跳ねる。

 なぜ?

 一瞬僕の気をそらされているうちに一角馬がヴォルクスの真直に迫った。

 その時青く鋭い一閃が一角馬を横切るように走ると、一角馬の体がピタリと止まった。

 そしてキンと高い音をたてたかと思うと、角だけくるくるくると飛んでヴォルクス様を飛んでいくと地面に突き刺さった。

 今何かしたんだろうか? そう思ってライガさんの解説を期待して見てみると、ライガさんの足元が剣で斬ったかのようにするどく削られていた。

 その上に着地するライガさん。


「相変わらず。間合いが全く読めない技ですな。危うく巻き込まれるところでしたぞ」

「まぁ、その時の気合いで変わるしのう。……それよりライガ、ワシ、西魔術でたおしてしまったんじゃがのう? 一角馬は術への抵抗が高いんじゃなかったのか? うりうり」


 意地悪そうに笑いながらライガさんに言うヴォルクス様。


「さすがは翁ですな。弱点のまさに点を突くような攻撃。お見事です」

「……あっさり認めるんじゃないわい。張り合いのない」


 うんうん頷きながら認めるライガさん。

 ヴォルクス様は詰まらなさそうに唇を尖らせる。


「……あれ? 剣じゃなくて西魔術だったの?」

「剣と言えば剣だし、西魔術と言えば西魔術だ。あれこそが翁が≪幻双剣≫と呼ばれるところなのだ」


 西魔術で剣を作って、二振り目の剣を作る。

 だけど、見た目は一本の剣しかもっていないから、幻の双剣のごとくで≪幻双剣≫なんだ。


「これこれ、そこはワシが解説する所じゃろうが。……ま、ライガの解説も悪くはないが付け加えるなら、剣であり西魔術であるって事じゃな」


 ……それ情報増えてないよね?

 したり顔で言うヴォルクス様に苦笑いをした。


「そういえば最初のあれは違うかったの?」

「あれはちょっと行く前に思いついたからやってみただけじゃったけど。まぁ、余興くらいにはなったか」


 姉ちゃんが尋ねると、ヴォルクス様は髭を撫でながら答えた。

 あれを思いつきでやっちゃったの?

 僕から見るとあれはあれでものすごかった気がしたんだけど……


「さて、次が来たようで」


 僕が目を丸くしていると、ライガさんがそう言った。

 ライガさんは森の方を見た先からは次の一角馬が現れた。


「では、カイト。今度こそ我の西魔術を見せてやろう。」


 ライガさんは両手に僕の体ほどある巨大な赤と白のたねをだして迎えうった。


 ◇◆◇


「ひー、ふー、みー、よー、いつ、むー、なな、やー、ここ、とー。いよっし、これで全部だな」


 父さんが倒した一角馬からとった角を数えると、袋にまとめて放り込んだ。

 あれからライガさんとヴォルクス様が順番に倒していたけれど、まどろっこしい全部持ってこいってヴォルクス様が森に向かって叫で最後はヴォルクス様が四匹いっぺんに相手にしたりしていた。


「やれやれ、最後はワシに全部丸投げしおってからに、最近の若いもんは――」

「いや、じっ様。≪幻双剣≫あれだけ振りまわして一人でやる気まんまんだったじゃねぇか。あれじゃ手を出せねぇよ」


 父さんがヴォルクス様に対して手を横に振りながらそう言う。

 なるほど。僕もライガさんと、一角馬のおいこみを終わって戻ってきた父さんがなんでヴォルクス様を手伝わないんだろうって思ってたんだけど、妙に納得した。

 ヴォルクス様の周りはどこに青い閃光か走るかわからなくて危なっかしかったもの。


 前に一人で倒したって言う大きな魔竜のはく製が飾ってあったけど、あれはもしかしたらヴォルクス様と一緒に戦う事が出来る人が居なかったからなんじゃないだろうか……?


 僕はその考えに至ると、ヴォルクス様が最強の剣士で最高の戦士と言われない事に少し納得がいった気がした。


 ◇◆◇


 その日の夜。

 家で晩御飯を食べていると、戸をノックする音が舞い込んできた。


「あら? ライガさん?」

「え? ライガさんが来たのか?」


 母さんがそう言うと、父さんが席を立て戸を開ける。

 すると、母さんの言った通りライガさんが来ていた。


「夕餉時にすまぬな」

「ん、かまわねぇよ。それよりどうしたんだ? ライガさんも食っていくか?」

「いや、いい。それよりカリンは来てないか?」

「んにゃ、来てねぇよ」

「そうか。すまぬ、邪魔をした」


 ライガさんは軽く頭をさげると、足早に去っていった。


 まだ喧嘩してるんだろうか? 早く仲直りすればいいのにね。

 そう思っていると、しとしとと雨が降り出してくる音が聞こえてきた。



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