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「ついホイホイと……」


「ん……」


 障子越しにほんのり部屋の中に色が差し込んでくる。それが僕を瞼越しに起きなさいと促した。

 起きなきゃと思うのが半分。まだ寝ていたいのが半分。そんな中で少し顔を横にそらして眉間にしわを寄せる。僕は薄く眼を開ける。

 隣には姉ちゃんが僕から背を向ける形になっていた。髪は真っ白。寝ぼけて法力解放でもしたんだろうか? それにいくらか体が小さくなって僕くらいの大きさになってる気がしなくもない。これはたぶん、寒さのせい。

 うーん、いくら寒いにしても縮こまり過ぎじゃないかなと思ったりすると少し可笑しい。

 ふふっと少し笑って目を閉じる。そんなに寒いなら今度は僕がだっこしてあげようかなと腕を姉ちゃんに回す。すると、姉ちゃんはもぞっと少し動いた。起しちゃったかな?


「んー? 誰? お父さま?」

「……え?」


 声と一緒に僕はギョッと目を開けると、僕の腕の中にいる人はクルリとこちらに振り返りながら薄く眼を開ける。


「えっ?」


 二人はばっちり目があって向こうもぎょっと目を開ける。しばし流れる沈黙。


「あー、ほんと寒いんだから。って、アレ? アズサ?」


 部屋の障子が開くとそこにはいつもの姉ちゃんが居た。姉ちゃんは一瞬きょとんとした顔をすると、わざとらしく両手を口に当てて息をのむ。


「そんなっ! あたしがちょっとトイレに行ってる間に、カイトが大人になっちゃうなんてっ!」


 大人になっちゃうってなんなのさ。と心の中でツッコミつつも目の前出来事に向き合う。 

 あぁ、まちがいない。隣の人はアズサちゃんだ。どうしてこうなったんだろうかと目線を少しそらした瞬間。アズサちゃんが叫ぶ。


「キャーッ! カイトっ、あなたどういうつもりですのっ!」


 布団から飛び出て叫ぶアズサちゃん。僕はなんのつもりもなにもないと弁明しようと少し身を起こす。


「まっ――」

「寒いっ! 布団をよこしなさいですのっ!」

「わあっ」


 起き上がろうと手をついてる間にまたたく間に布団を引き剝がされる。


「さ、ささ。さむいっ、ご、誤解だよぅ」

「言い訳は結構ですのっ! 動機など手を取るようにわかってますの。わたくしがあまりにも愛くるしいゆえに、わたくしの布団にもぐりこむという不届き千番な行為に出たに違いありませんの」

「ふあああ。オッス、アズサ。朝から元気だな」


 父さんが大きなあくびをしながら寝癖のついた髪で起き上がる。


「おはようございますリックおじさま。……あら? どうしておじさままでこの部屋に? はっ! いけませんのっ! おじさまにはチハヤおばさまと言うステキな方がいらっしゃるのにっ」

「あらあら、ありがとうアズサちゃん」

「あ、あら? チハヤおばさまもおはようございます……」


 父さんの隣から母さんが起き上がる。アズサちゃんは状況についていけてないようで混乱する。すると廊下の方から大人の人が足早に歩いてくるような足音が聞こえてきた。


「アズサっ」

「お父さまっ」


 アズサちゃんはびくんと背筋を伸ばす。


「アズサ、お前はまた寝ぼけてたんだろう。そこはカイトくんたちの部屋だぞ?」

「ち、違いますのっ! 寝ぼけてなんか――。そ、そうカイトですの。カイトがわたくしに向かってカモーンって手招きするからついホイホイと……」


 エボシおじさんに向かって必死に言い訳しだすアズサちゃん。でも、アズサちゃんの言ってるような事実は一切ございません。

 うーん、でも例えそうだったとしてもそれでついていく方もちょっと考えものだけども。

 それにしても鼻がムズムズする――


「へっくしっ」

「すまない、カイトくん。ほらアズサ、いい加減なことばっかり言ってないで布団をカイトくんに返して部屋に戻るよ」

「……はい、お父さま」


 しゅんとするアズサちゃんが布団を僕に渡すもなかなか手を離さない。そしてボソッとつぶやく。


「カイト。覚えておきなさい」


 えーっ! それって言いがかりだよ。って思ってる間に行ってしまうアズサちゃんだった。



 ◇◆◇



 朝から何かされちゃうのかなとちょっとビクビクしながら過ごしていたけどもう昼過ぎ。アズサちゃんは特に何かしてくるでもなく東法術の事とかいろいろ話したりする。やっぱり寝ぼけてたから忘れちゃったのかな?

 そう思ってトイレに立って戻るところにアズサちゃんがくる。


「カイト」

「どうしたの? アズサちゃん」

「昼になって雪も上がったしソーラお姉さまと外で遊びましょうとお話していたんですの。カイトも行きますわよね?」


 そういえばと吹雪いてたってわけじゃないけど、粉雪がいっぱい振っててかなり視界が悪かったのがすっかりお日さまも顔を出していた。


「うん。もちろんだよ」

「ふふ、それはよかったですの。でしたら先に外の階段を下りたあたりで待っていて下さる? ソーラお姉さまは少し準備があるそうで後で一緒にいきますの」 

「うん、わかった」


 僕は返事をすると早速準備をして外に出る。いくらか大人の人の足跡がついていたけど、ほとんど積もったばかりの新しい雪でテンションが上がる。


「うー、寒いっ」


 はーっと吐く息を白くしながら階段の方へ向かう。階段にも雪が積もっていて下の石が見えない。僕は手すりにつかまりながらゆっくり下に降りる。これは滑って転んで下までいったら雪だるまになっちゃうんだろうなぁなんて思いながらも下に着く。

 下りた先では人がちらほらと居て、雪合戦してる子たちや雪を山盛りにして削ってる人たちとかがいた。みんな楽しそう。

 まだかなぁ? 僕たちは何して遊ぼうかなといろいろ考えると待ちきれなくて階段を見上げる。


「お待たせアズサ」


 かすかに姉ちゃんの声が聞こえてきた。もうすぐ遊べると思うとその場で足踏みをする。このもうすぐが待ちきれないから早く来て欲しいところ。


「あれ? カイトは?」

「あー……、なんか用事があるとか言ってたんですの」

「え? 用事? カイトが?」


 姉ちゃんの少し不思議がる声。そしてもっと不思議な僕。


「ちょっ、ちょっとっ!」


 僕は階段の下から声を上げる。


「あれ? カイトの声がしたような」

「き、気のせいですのっ! さ、行きましょソーラお姉さま。実はこっちから抜けると面白いところに行けますの」

「え、ちょっとアズサそんな引っ張らなくても」


 声が遠くなって行く。

 ……やられたっ。

 この雪にまみれた階段を駆け上がったところで追いつけるわけもなく佇む僕だった。



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