「またね」
◇◆◇
昨日までは六角広場に商隊の人たちが来て村がすごく賑わってたけど、その商隊の人たちも撤収作業が終わってもうすぐ村を出るところ。
そんな土月も終わって水月の初日。水月になってからは急激に寒くなって、雨が増え始める。そして雨が雪に変わって山や森に水が蓄えられるんだって。でもまだ水月になったばかりだから今日はいい天気だった。
僕はいい天気でよかったなって思った。だって今日はアインさん一家が帰る日――、アンシェちゃんとラークくんとお別れの日だから。
「おーい、アンシェちゃーん。ラークー」
「むっ、ソーラか?」
「ほんとだーっ! それにカイトくんもっ! 見送りに来てくれたのー?」
一台ずつ順に村の門から出ていく商隊の馬車に続いて出発待ちをしているアインさん一家の馬車。その馬車に姉ちゃんが声をかけると最初にラークくんが、それに続いてアンシェちゃんが身を乗り出して僕たちを確認すると手を振ると、すぐに馬車からラークくんと一緒に降りてきた。
「ありがとー。あっ、リックさんとチハヤさんもこんにちはー」
「オッス。それより馬車から下りて大丈夫なのか?」
「えっと……」
「なんだ、リックも来ていたのか」
アンシェちゃんが困ったように少し馬車のほうを見るとアインさんとセナさんも馬車から降りてきた。
「出発時間については少々なら問題はない。私たちの馬車は隊の最後だからな」
「あぁら、チハヤさぁん。チハヤさんも見送りに来てくださったのねぇ」
「ええ、セナさんには楽しいお話をたくさん聞かせていただけましたもの。私にもお見送りさせて下さいな」
父さんとアインさん。母さんとセナさんがお互いに話し出す。
あれ? 父さんとアインさんは同じ村で子供のころから育ったから仲がいいのはわかるけど、母さんとセナさんは違う村のはずなんだけどなぁ。
「母さん、セナさんと仲いいんだね?」
「ふふ、カイトもアンシェちゃんとラーク君と子供同士で仲がいいでしょ? それと一緒、ママ同士の友達。ママ友よ」
「そうよぉ、ママ友なのぉ」
そういいながら二人して口元に手を当てて笑う。
なるほど、ママ友ってのもあるんだと頷く。でも、普通に友達でいいんじゃないかなってちょっと思いながら顔をアンシェちゃんとラークくんのほうに戻した。
「この前はごめんねー。突然泣いちゃったりしてー」
「いいよいいよ。別にそんなの気にしなくていいんだから。ねっ、カイト」
アンシェちゃんが少しうつむき加減で言うのを、姉ちゃんが手を横に振って答える。僕もその隣でうんと頷いた。そうするとアンシェちゃんはホッとした顔で笑顔がこぼれると、アンシェちゃんの頭をぐりぐりとラークくんが撫でた。
「よかったなアンシェ。実はな、アンシェのやつがずっと気にしていたんだ。最後にあんなお別れになったままになってしまうのかなってな。うーんうーんって帰りの準備をしながらずっと唸ってたんだ」
「もうーっ! ラーク、そんなこと言わなくてもいいでしょーっ! あ、そうだ」
アンシェちゃんはもうっとラークくんの手を両手で払いのけると、肩から下げていたカバンから蝶のようなアクセサリーを取り出した。
「ソーラちゃん、これあげるー」
「わっ、蝶々のアクセサリーだね。かわいいっ! えっと、どう使うの?」
「これは髪留めなんだー。ほら、ソーラちゃんラークと勝負してた時髪が邪魔かもって言ってたでしょー。だからこうしてね」
アンシェちゃんは姉ちゃんに後ろを向かせると、カバンからクシを取り出して手際よく姉ちゃんの長い髪をとく。そしてささっと姉ちゃんの髪を束ねると蝶の髪留めでパチンとまとめ上げた。
「はいっ、これでバッチリよー」
「ほんとだっ、動きやすい。ありがとうアンシェちゃんっ! へへ、カイト。あたし似合ってる?」
「うん。いい感じだよ、姉ちゃん。女の子っぽくてとっても似合ってる。……あっ」
「そっかぁ、似合ってるかぁ。えへへー」
よかった、姉ちゃんったら嬉しすぎて僕の失言に気がつかなかったみたい。いつもなら「女の子っぽいじゃなくて女の子だーっ!」なんて言いながら、アンシェちゃんやラークくんのようなよい子の前では見せられないようなことになるのにね。
僕はホッと姉ちゃんにばれないように胸をなでおろした。
「ねぇ……、カイトくん。カイトくんにもね、プレゼントがあるんだー」
「えっ? なになに?」
「ちょっとだけ目をつぶっててくれる?」
なんだろう、サプライズ系かなぁ。僕をドッキリさせるなんて結構ハードル高いんだからねっ!
僕は鼻を膨らましながら気合いを十分にして待ちかまえた。
やわらかい手で僕の顔を触る。これはたぶんアンシェちゃんの手。なんだろう、僕も髪留め?
でも違ったみたいで、少しだけ横に向けさせられる。あれ? って思ったら、ほっぺにやわらかくチュッって音と一緒に何かが当たる感触を感じた。
僕は心臓が飛び出そうなくらい驚いて目を開けた。
「アンシェちゃんっ! 今のってっ!」
「へへー、カイトくんとっても優しかったからねー。いろいろ教えてくれたしね」
アンシェちゃんはほんの少しだけ肩をすくめてほほ笑んだ。なんだか僕にはアンシェちゃんがほんの少しだけおとなの感がしてすごく胸がドキドキした。
「はーはっはっは。そうかそうか、アンシェはカイトの事がお気に入りのようだな」
横からアインさんの声が飛び込んでくる。僕はハッとして振り向くとアインさんが両手を腰に当てて高らかに笑っていた。でも、その満面の笑みとは別にすごく威圧的なオーラが前面に出てるのが僕にも感じることができる。
「よーし、ではカイト。私と勝――」
「アナタは、少し黙っててぇ」
「ぶっはぁっ」
どこからともなくセナさんが取りだしたヤカンを至近距離からアインさんに向けて打ちだされる、ガコーンという音がなってアインさんは馬車の中まで吹っ飛ばされた。
「ごめんなさいねぇ。あの人ったら帰る前の最終チェックがまだだったようで馬車に戻ったのぉ。なかなかいいわよぉ、アンシェ。確実に効いてるわぁ」
セナさんは何事もなかったかのようにウフフと笑うと、アンシェちゃんに向かって親指をぐっと立てて見せた。
それにアンシェちゃんが笑顔で答えると何かに気がついたようにラークくんの顔を見た。
「ラークー? どうしたのー? そわそわしてー」
「うえっ? べ、別にそんなことはないぞ」
とてもそんなことありそうな表情で言うラークくん。いつものクールな感じはどこかへ行ってしまっている。
「ははーんー。ラークってば、ソーラちゃんにチューして欲しいんでしょ」
「うええっ? べ、べべべ別にそんなことは――」
「へっへ、そうかそうか。じゃあラークは俺と勝――」
「あなたも黙ってて下さいな」
「ぶっ! むーっ! むーっ!」
すごい笑顔でしゃしゃり出てくる父さん。母さんはバチーンと気持ちのいい音をならして口に思いっきりお札を張り付ける。そのお札はなぜかどれだけ引っ張っても取れないらしく父さんはモガモガ顔を真っ赤にしながら剥がそうとしている。
っていうかそれ、鼻までふさいでない?
それより、そんな事はたいした問題じゃなくて。まさか、ラークくんがっ?
「そっかぁ、ラークったらあたしにチューして欲しいんだ?」
「いや、そういうわけでは――」
「えー、いいのぉ? あたし、別にラークにならチューしてもいいんだけどなぁ」
「ほ、ほんとかっ! ゴホン。いや、ソーラがそういうのならおれは断る言葉を知らないな」
ラークくんは一瞬すごく嬉しそうな顔をしたもののすぐに取り繕うと顔を真っ赤にしてそむける。でも、ラークくんの青色の尻尾はブンブンと横に振っていた。
姉ちゃんはちょっと意地悪そうにニヤっと笑う。
「えー、でもラークあたしとの勝負で一回も勝ててなかったしなぁ」
「むむぅ、それはそうだが……」
がっくり肩を落として尻尾もしなっと垂れるラークくん。
姉ちゃんはそれをみてアハハと笑うとラークくんの肩をポンポンと叩いて続けた。
「じゃあこうしましょ、今度出会ったときにあたしと勝負して勝てたらいいよ」
「本当かっ?」
「えぇ、本当よ」
「本当の本当かっ?」
「あーもうっ、本当の本当だったら。どこにだってしてあげるんだから」
「――っっ!」
目をまん丸にして絶句するラークくん。アンシェちゃんも口元を押さえて目を輝かせている。
「すごーい、ソーラちゃんなんてだいたんなのー」
「えっ?」
「よしっ、俺は強くなるぞっ! 絶対だっ!」
「えっ? えっ?」
ラークくんとアンシェちゃんのリアクションと違ってなんだかキョトンとしてる姉ちゃん。
僕もポカンと口を開けたままどうなってるのかと姉ちゃんの言葉を思い返してみる。
……はっ、そうかっ! わわわわっ、大変だっ!
「姉ちゃん――」
「あらあらぁ。アンシェ、ラーク、そろそろ私たちも出なきゃならないみたいだわぁ。もう馬車に乗りなさいなぁ」
「「はい、母上」」
僕が姉ちゃんに気がついたことを伝えようとするところでセナさんの声がかぶって止められる。
あっ、もう行っちゃうんだ。なんだかあっけないなって思うと、それと同時に涙がわーっと溢れてきた。
あー、ダメだ。止まらない。たまらず俯いてしまう。
「そっか、もうなんだな。こらカイト、泣くんじゃない」
「……ソーラちゃんもカイトくんも元気でね。バイバイ」
「……さようならだ。また会えるといいな」
涙を抑えきれない僕の頭を二人が撫でてくれる。
やさしい二人の手に僕は俯いてちゃ駄目だって思って見上げる。二人も必死に涙をこらえているのか目が赤かった。
もう大丈夫だと僕が顔を上げたのをみると、二人はニコッと笑ってから僕たちに背中を向けて馬車へと歩き出そうとする。
「待ちなさいラーク。会えるといいなじゃなくて絶対にまた会うんだから」
「だが、父上がこれだけの長い休暇をもらえたのが特別みたいなものなんだ。次はいつになるかわからないんだ」
「別にこの村じゃなくてもいいじゃない。なんだったらあたしたちが大きくなったらこっちから出向いてやるんだからねっ!」
二人は顔を見合わせるといっきに顔がほころんだ。
「ステキーっ! そっかー、じゃあ今度は私たちがいろいろ案内してあげるね」
「お願いするわね。その時はおいしいお菓子も用意してねっ」
「ああ、その時はとびっきりのを用意してやる」
姉ちゃんがそういうとアンシェちゃんもラークくんもアハハと声をあげて笑う。
もう、姉ちゃんったら。こんな時でも食べ物なんだから。でも、お別れのかなしい雰囲気も吹き飛んじゃったね。
「アンシェちゃん、ラーク。あたしはさようならもバイバイも言わないよ。また絶対に会うんだから。
……だから、またねっ!」
お日さまのようにニカッとした笑顔で言う姉ちゃん。
そうだよね、また会うから。「またね」なんだよね。
「そうね、またねだよー」
「そうだな。じゃあソーラ、カイト、またな」
二人はさっぱりした顔でそういうとさっと手を振って馬車へ歩き出した。僕もこの時「またね」って返したかったのに泣いてたせいかすぐに声が出なくて言う事ができなかった。
二人が馬車へ乗りこむと馬車はすぐに村の門に向かって動き出した。どんどん僕から離れていって馬車は小さくなって行く。
――「またね」って言えなかった僕。このままでいいの? ダメだよっ、良くなんかないんだっ!
僕は走って馬車の後を追いかけた。誰かが声をかけた気がするけどそんな事は構わず僕は走った。
馬車はそんなにスピードを出してないから少しずつ距離は縮まる。
――精いっぱいに地面を蹴る。それは僕の思いを近づけるため。
――精いっぱいに足を前に。それは僕の思いを伝えるため。
――精いっぱいに息を吸う。そして「またね」を届けるため。
少しずつ、少しずつ追いついてきた。
あと少し、手を伸ばせば届くんじゃないかな?
そう思えたところで僕は誰かに強引に体を止められる。
「キミっダメだよっ。勝手に村の外に出ちゃ――ってカイトじゃないか」
「ドライ先生」
夢中になって追いかけてたから気がつかなかったけど、追いつくよりも先に馬車は村の門を抜けてしまったみたいだった。
「でもっ、ドライ先生。僕、アンシェちゃんとラークくんに「またね」って言えてないんだっ。絶対にまた会おうって言ったのに……。ううっ」
父さんのように……、姉ちゃんのように走れたら村を出る前に追いつけたかもしれないのに……。
僕は僕の力のなさにすごく悲しくなった。
「そうか、あの馬車はアイン兄たちが乗ってるやつだな。よし、泣くなカイト。泣いたらちゃんと声が出なくなるぞ。「またね」ってちゃんと言うんだろ? じゃあここで泣いちゃダメなんだ」
「……でも、もう追いつけない」
「ここから声を飛ばせば大丈夫さ、俺もちょっとだけ助けるよ」
しゃがんで僕と目線に合わせながら頭をぽんぽんと撫でてくれるドライ先生。
ドライ先生の言う通りだ。泣いてる場合じゃないよね。
「でも、どうやってですか?」
「ふふーん、カイトにとって俺はなんだ?」
「えっと、おもし――あっ、西魔術の先生っ!」
「まぁ、最初のはおいといて。そう、俺は西魔術の先生だ。だから西魔術でなんとかしよう」
「はいっ、ドライ先生っ!」
さすがドライ先生だ。すごいね、そんな事もできちゃうんだね。僕は服の袖で涙をぬぐっているとドライ先生が僕の後ろに回って僕を抱え込むようにしながら緑と白の珠を出す。
「いくよ、カイト。風は声を増幅し、光は声を彼の人に届ける助けとなれ。ほら、カイト」
ドライ先生が両手を前に突き出すと西魔術でできたうっすら見える緑のわっかが連続して馬車のほうにむかって行く。きっとこれが声を届けてくれるんだ。
僕はドライさんに背中を向けたままうんと頷くと大きく息を吸い込んだ。
「アンシェちゃーんっ、ラークくーんっ、またねーっ。またねーっ」
全身の力を振り絞って僕は叫んだ。どうか届きますようにって立てなくなりそうなくらいの力を使って叫んだ。
どうかな? ちゃんと届いたのかな?
僕は膝に手をついて肩で息をしながらそう考えていると、ドライさんの手が僕の肩を叩いた。
「いい声だったよカイト」
「はぁはぁ、ドライせんせ……。ぼくの、こえ……、ちゃんと、届いたのかな?」
「ちゃんと届いてるよ、ほら見てごらん」
ドライ先生に促されて僕は顔をあげて馬車を見る。するとだいぶ遠くなった馬車の左右から泡のようなものがフワフワフワっていっぱい出てきた。
あれは、僕が初めて覚えた西魔術。アンシェちゃんの教えてくれたやつだ。アンシェちゃんとラークくんが出してるんだね。
良かった、僕の声ちゃんと届いたんだ。
「ドライ先生。ありがとうございます」
「ハハ、いいってそんなの。かわいい弟子と、かわいい甥っ子姪っ子のためなんだからね。あ、そうだそうだ」
ドライ先生は少し照れくさそうにニヘヘっと笑うと、腰につけていたウェストポーチから小さな布袋を取り出して僕に渡す。
「昨日、市でいい物を見つけたからカイトに上げるよ」
「えっと、これは? あれ? 固い。中になにか入ってるのかな」
「その袋の中にはねアブラナタブラで作った丸薬の入った器が入ってるんだ」
「へぇ、食べ物ですか?」
「食べ物というより薬の一種かな? 食べると魔力を回復させる効果があるんだ。西魔術を本格的にやるなら万が一の御守りみたいなもんさ。法力も回復するらしいからカイトには無駄がないね」
「ふむふむ、そうなんだ。ありがとうございます」
ドライ先生からもらった袋を大事にしまうと、ドライ先生と一緒に馬車が森に入って見えなくなるまで一緒に見届けた。
それにしてもアブラナタブラの丸薬っておいしいのかなぁ?
◇◆◇
「カイト、いい走りっぷりだったぜ」
アインさん一家を見送った後での帰りの道中で僕をほめる父さん。
「僕も自分でも信じられないくらい走ったよ。なんだか膝がガクガクしてる」
「すぐ戻ってくるのかなって思ったらカイトったらずーっと行っちゃうんだもん。あー、なんだかあたしも走りたくなっちゃったな。よしっ、カイトかけっこよーいっ!」
ねぇ、聞いてた? だから膝がガクガクなんだって。
言ってるそばからかけっこしだそうとする姉ちゃん。うー、まともに言っても聞かないのはわかってるけどどうしよう。えと、とりあえず。
「あー、姉ちゃんっ!」
「何、カイト? よーい?」
できてなーい。
そう思いながらニコっとして話題を探す。
「えー、あー。あっそうだ、よかったの? ラークくんとあんな約束しちゃって」
「え? 何が?」
「だって、姉ちゃん次ラークくんと会ったときに勝負して負けたらどこにでもチューしてやるって言ったじゃない」
「……言ったっけ? うーん、言ったなぁ。言ったけどどうしたの?」
あっけらかんと言う姉ちゃん。かけっこはとりあえず防ぐことはできたけど、そんなにあっけらかんとされるとなんだか僕のほうが釈然としない。
「だって、どこにでもって言っちゃったらもし負けちゃったりなんかしたら。く、口になんてこともあるんだよ?」
「あー、なるほどねぇ。それでアンシェちゃんが大胆なんて言ってたのかぁ」
やっぱりあっけらかんとしたまんまの姉ちゃん。
むきー、なんだか僕が一人でやきもきしてるのがやたら悔しい。
「あららぁ? カイトったら心配してるんだ? バッカねぇ」
僕のこの胸のやきもきをバカで一蹴する姉ちゃん。さすがに横暴じゃない? って思ってほっぺを膨らましながらにらむと姉ちゃんは嬉しそうに僕のほっぺをつつく。
「どこにだっていいのよ。だって、あたしに勝てたらって言ったでしょ? あたしは負けないよ。あたしはカイトを守らなくちゃなんだから、強いんだから。お父さんにだってそのうち勝ってみせるんだから」
姉ちゃんはニカッと笑ってみせると僕の頭を少し乱暴にぐりぐり撫でた。少し痛かったけどきっとそれは固い決意がそうさせたんだと思う。
それを見て父さんは嬉しそうに笑う。
「そうかそうか、そのうち俺も負かされちゃうんだな。じゃあしょうがねぇ、その時は俺がチュー――」
「謹んでお断りしますっ!」
「そんなご丁寧に……」
姉ちゃんに間髪いれず拒否されてがっくり肩を落とす父さん。
そうだね、これからもっともっと姉ちゃんは強くなるんだもん。ラークくんももっと強くなるんだろうけど負けないもんね。
僕はホッと胸をなでおろすと、僕の頭に乗っかる姉ちゃんの手を握って笑い返した。




