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4話 刀

 あらすじ


 なんか戦うぜ!!


 天使となった丸子の手には、白い刀剣が握られていた。そして、全身に神々しいオーラを纏っている。これを見て吉田は目を見開いた。


(初めて見た……! 人間が天使になるのを。こんな姿になるのかッ!)


 丸子の姿は至って何も変わりはない。服装も顔も、何も変わったわけではない。ただ、頭に天使特有の光輪がついている。ただ、吉田には生えている翼が、丸子にはついていない。おそらく、人間から天使になると、このような不完全な天使になるのだろう。


「吉田! お前さっさと梅野を治療しろ!」

「ハイッ!」


 そんなことをぼんやり考えていたら、丸子に普通に怒られてしまった。吉田は慌てて梅野という女子生徒のもとへ駆け寄る。


「キシャァアアッッ!」


 だが、四足歩行の悪魔がその行手を阻んだ。自分の食糧が取られないように守っているのだろう。


(マズイ……! さっさと治さないと、手遅れになるッ!)


 天使の治癒が及ぶ時間には、限りがある。急いで治療に当たらなければいけない。


 先ほど丸子が握っていた白い日本刀は、元々吉田の武器だ。つまり今の吉田は武器を持っていない。


 どうしようか、と吉田が困惑していると、後ろから──


「吉田伏せろッ!」


 という丸子の声が響いた。


 その声の通り、吉田はしゃがむ。すると刹那。頭上を一本の刀が通った。


 目にも止まらぬ速さで、その刀は悪魔の右目にぶっ刺さった。


「アァアアァアアッッッ!」


 悪魔は痛みで苦しんでいる。


「よしクリーンヒットォオ! 吉田早く治せ!」

「うん分かった、……て、おい! せっかく手に入れた刀を投げ捨てるやつがあるか! お前これからどうやって戦うんだよ!」

「あ、そっか。」


 おかげで吉田は梅野を治療することができるようになったわけだが、そのせいで丸子は武器を失ってしまった。


「まっ、私は適応力が高いんだ。何とかなるっしょ。」


 そして丸子は、武器無しの丸腰で悪魔に挑んだッ!


「グルル……ブルブル……!」

「来いよ雑魚ぉ」


 だが、武器を失ったとしても、丸子は天使になったのだ。未だその身に纏う天使のオーラは健在である。


 悪魔は目に刀が刺さったまま、ツノを丸子に向け、突進してきた。


「マズイ! 避けろッ!」


 吉田は大声で警告した。


 人間のときにできた胸の傷。そこを突かれたら、今度こそ手の施し用が無くなる。死んでしまうのだ。


「来いよ雑魚ぉッ!」


 だが、丸子は避けなかった。


 丸子はこの一瞬で考えた。コイツの突進はとても速く、とても避けられるものではない。中途半端に避けて変なところに当たるぐらいならば、避けないで立ち向かう、と。


 その判断は、間違っていなかった。


「ウッソだろ……!」

「捉えたぜ! ツノをッッ!」


 結果、丸子はツノを掴むことができた。


 胸を貫かれる寸前で、その先端を掴んで止めたのだ。


「おゥるらァッッ!」


 そして、陰キャ女子高生とは思えない叫び声を出して、ツノをへし折った。


「ギャアァアアア!!」

「これ返せ馬鹿ァ!」


 そして悪魔が痛みに怯んでいる間に、丸子は悪魔の目から刀を引き抜いた。悪魔はまたもや痛みで叫ぶ。


「よーし、私の愛刀『エンジェルブレード』よ! 必殺技をやってやるぜ!」

「オイ勝手に名前つけんなッ!」


 吉田の抗議には耳を貸さず、丸子はエンジェルブレードを振り上げた。


「『エンジェルスラッシュ』ッッッ!」


 そして、馬鹿みたいなネーミングセンスで刀を振り下ろし


「ヴァアァアアア!!」


 悪魔を頭から胴まで、一刀両断!


 悪魔は黒い煙を放ち爆発四散した。丸子の初陣大勝利ッ!



 *



 その後、丸子の友人である梅野を介抱して、もう心配ないというところまで治療した後、吉田は立ち上がった。


「これでもう放っておいても大丈夫だろう。」

「いやー良かった。勝った勝った。流石はエンジェルブレードだわ」

「だからお前勝手に名前つけんなって。」


 吉田は丸子の顔を見下ろして微笑んだ。


「まあでも、あんたに刀を託してよかったわ。丸子は戦いの才能があるわ。」

「だるォオ!? 私はね、強靭な精神力を持ってるんですよねこれね。」

「うん。ホントその通り。」


 吉田は、優しく手を差し伸べた。これは握手の構えだ。


「改めて、日本天使の下っ端として働いている吉田駿之助だ。よろしくな。」

「うん、田中丸子です! これからよろしくね!」


 二人は固い握手を交わした。



 *



「……。」


 そんな固い握手を、不敵に見つめる一つの影があった。


 全身を黒い装束に包んだ長身の男。右の頬に黒く大きい傷跡がある。彼はその握手を盗み見て、立ち去った。


「……分からぬ。頭目の考えることは理解できない。」


 男は人通りの多い駅前を歩いている。人々が沢山行き交うが、男の体は誰ともぶつからず、すり抜けている。


「天使どもはついに、人間を天使にしてまで我々を殺そうとしている。……なのに頭目は、なぜこの東京に我々を留まらせているのか。」


 男は悪魔だった。それも、封印が解かれた悪魔。


 彼は色々と考えていたが、すぐに思考を止めた。


「いや、考えるのはよそう。全ては我々を介抱してくれた頭目のため……!」


 男は不敵な笑みを浮かべ、その場から立ち去った。

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