表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険者アシェルは特異点 ~サキュバス×レベリング!  作者: エリーゼ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/20

014 ダンジョン&レベリング・5

 先程の咆哮は、間違いなくレイモンの咆哮と同じものだった。つまり、レイモンの模倣体も出現してしまったということにほかならない。ここでアシェル達に取れる行動は4つある。

 まず1つ目、ドラゴンから遠ざかるために奥へと進む。これは向かい合っている部屋を通らなければならず、未知の魔物に襲われる可能性と、挟み撃ちになるリスクが存在する。

 2つ目は、この場に待機して事態が好転することを祈ること。アイヴィの魔法の大盾を駆使すれば、ドラゴンのブレスがこの通路にきたとしても、ある程度やり過ごせるかもしれない。ただし、事態が好転するという保証は全くなく、むしろハイリザードマンがもう一度出現してしまう可能性のほうが高い。

 3つ目、あえてドラゴンに戦いを挑む。ドラゴンなど白金級冒険者を大勢集めて討伐するような存在で、とてもではないが2人で討伐出来るような相手ではない。ただしアシェルはドラゴンスレイヤーを所持しており、無抵抗のレイモンの首なら容易に斬り落とすことが出来た。勝機がゼロというわけではないが、この選択を選ぶのは現状得策とは言えないだろう。

 そして4つ目、すべてを諦め自害する。そうすればこの苦しみから即座に解放され、いつか次の冒険者が彼女達の亡骸を見つけて弔ってくれるだろう。

「待機と、諦めるっていう選択肢はありえない。私はレイモンさん達を超える冒険者になるって誓ったんだから」

「じゃあ、ドラゴンから遠ざかるために、奥に向かう……?」

「…………奥へ向かっても、ドラゴンの脅威を排除出来るわけじゃない。それに、今が一番ドラゴンに近づいている状態。今後、これより物資が揃っている状態でドラゴンと対峙出来る機会は、もうこないと思う」

 だが、この状況でアシェルがあえて選択したのは3つ目……ドラゴンに戦いを挑むという選択肢だった。無謀にも思えるこの選択だが、アシェルにはしっかりとした考えがあったのだ。

「倒せるかわからない奥の敵より、一撃入れば倒せるドラゴンに戦いを挑む……。私は、勇気を出してドラゴンのほうへ行くべきだと思う」

「…………アーシェが居なかったら、僕はきっと誰かにボロボロにされて、今頃どこかで冷たくなってたと思う。僕はね、アーシェのことを信じて戦うよ」

「よし……。じゃあまず、私が朧鴉で近づけるだけ近づく。アイヴィは効かないかもしれないけど、ファイアボールを可能な限り連打して。生き残ることを優先して、魔法の大盾はいつでも発動出来るようにして」

「うん……!」

 元よりこの階層は、本来アシェル達にどうこう出来るような魔物は存在していない。これまではギリギリ、運や地形が味方をして勝ちを掴んできただけなのだ。今度は相手が自由に動ける大部屋で、遮蔽物は先程自分たちの手で片付けてしまった。部屋中に火炎のブレスを吐かれるだけで死んでしまうかもしれない。

 だが、ドラゴンをなんとかしない限り、アシェル達に安息の地はないのだ。いつどこから襲われるかわからない、ドラゴンのブレスがいつ通路を埋め尽くすかもわからない、しかも食料はドラゴンの部屋に置いてきてしまっている。そんな状況ではどの道、長くは生きられないだろう。

「私に考えがあるの。出来る限りのことをやってみるつもりよ」

「僕は、アーシェを信じるよ」

「よし……。いくわよ」

 アシェル達は勇気を振り絞り、ドラゴンへ挑むことにした。ドラゴンスレイヤーを一撃叩き込めさえすれば、あのドラゴンの首を刎ねることが出来るのだ。その一撃さえ掴み取れれば、アシェル達の勝利ということになる。

「まずはこれが、見つからないことを祈るところからよね……」

「気をつけて、アーシェ……!」

「アイヴィも」

 アシェルが朧鴉を発動して透明になり、ドラゴンの居る大部屋へと侵入する。幸いにも、先程整理した干し肉や金が入っているマジックバッグはそのまま残っている。だがクロバネの遺体が部屋の隅に追いやられており、先程金の山があった場所に戻っている。どうやら、彼女の遺体をあの場所へ置いたのはレイモンだったようだ。その時の行動を模倣し、このドラゴンも遺体をあの場所へと移したのだろう。何故そうするべきなのか考えることもなく、模倣したレイモンの行動を再現しているだけなのだが。

『グルゥゥゥウウ…………』

 レイモンはドラゴンスレイヤーを扱っていたということは、元々戦士系の役割だったはずだ。斥候系のスキルを身に付けていたのであれば、クロバネの日記はもっと内容が充実していたはずである。恐らく斥候の役割をしていたのはクロバネであり、罠の探知も出来なかったことから、レイモンには探知系スキルがなかった。アシェルはそこまで考え、朧鴉中の自分を発見出来ないだろうと踏んで、この暗殺作戦を思いついたのだ。

「…………ッ!」

『グガアアア!!』

 しかし、長年冒険者として培った危機感知能力というものは存在していた。アシェルがドラゴンスレイヤーを抜き放ち、頭部目掛けて振り下ろした瞬間、それを既のところで回避してしまったのだ。

『ガアアアアアアアアアアアア!!』

「シルフィード!!」

 巨大な体を起こし、ドラゴンは薙ぎ払うように右の剛腕を振り回す。アシェルもまた、既のところでその剛腕による斬り裂きを回避することに成功したが、ドラゴンに位置が完全にバレてしまった。ダメージを与えることもできず、ただ居場所がバレて空振っただけとなってしまう。

「ファイアボール!!」

『スゥ…………』

 アイヴィが奇襲に失敗したのを見て飛び出し、ファイアボールで援護を仕掛ける。しかし、ドラゴンは息を大きく吸い込み、そのファイアボールを打ち消さんとブレスを吐く構えを取る。

『グガァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

「ひっ……!!」

 案の定、炎のブレスが部屋を埋め尽くす。その威力はアシェルが想定していたものよりも強く、拾い損ねていた金貨や金塊が即座に溶解してしまうほど。アイヴィは魔法の大盾を全方位に展開し、このブレスをなんとかやり過ごすことに成功した。しかし、アシェルはこの炎のブレスに飲み込まれてしまう……。

「ああああああああああ!! うわああああああああああああ!!」

 火だるまになったアシェルを見て、ドラゴンは余裕の笑みを浮かべる。脅威となる相手が死んだので、後はこのファイアボールを撃ってきた魔族を踏み潰せば終わりだと、ドラゴンは勝ち誇っていた。

「アーシェ!!」

「ああああああ!! あっははははは!! ははははははは!!」

『グルゥ……』

 死を目前としておかしくなってしまったと、ドラゴンは嘲笑を浮かべて居る。ゆらゆらと接近してくるが、自分の寝所が汚れるのは不快だと思い、至近距離でブレスを浴びせる準備をする。頭を下げ、ブレスを吐くために大きな口を開いた瞬間、ドラゴンは口の中に何かが飛び込んできたのを感じた。

『グ、ガアアアッ!?』

「300年分の重みの片鱗、良く味わって食べなさい!!」

 次の瞬間、ドラゴンの口の中で何かが弾けた。刹那、ドラゴンは口の中に溶岩が広がったような感触と、凄まじい重み(・・)に襲われることとなる。

 アシェルは火だるまになりながら、銀を溶かしたあのポーションと共に、金が大量に詰まったマジックバッグを投げつけていたのだ。それがドラゴンの口の中で破壊され、破壊されたマジックバッグに詰まっていた大量の金塊が一気に解放されたのである。これが、アシェルの暗殺が失敗した場合に備えて用意していた二の矢である。

『ゴガアアアアアアアアア……!?』

 金とは非常に重い物質だ。それが口の中で大量に発生したとなれば、その重量は計り知れないものとなる。頭部が何十倍の重さにもなってしまっては、さすがのドラゴンでも支えきることは出来ない。余裕の勝利を確信していたにも関わらず、何故このようなピンチに陥ってしまったのか、ドラゴンには理解が追いつかない。それに、火だるまになってなおも動き続ける人間も、全く理解が出来なかった。

「はぁああああああああ!!」

『ゴ、ガアアアアアア!!』

 それでも、炎のブレスを吐き出す準備は既に出来ていた。口の中に大量の何かが詰まっていたとしても、それごと吐き出してしまえば何も問題はない。ドラゴンは無理矢理ブレスを吐き出して撃退する決意し、下顎が溶けてポッカリと穴が空いているのもお構い無しにブレスを発射する。

「シル、フィードォオオ!!」

『ガ、アア!!』

 ドラゴンのブレスも、吐き出した金塊も、アシェルに命中することはなかった。目の前から迫ってきたはずの相手を、瞬きをする間に見失ってしまったのだ。そして、ようやく消えた相手を見つけたドラゴンの瞳には、若干の火傷が残りつつもドラゴンスレイヤーを構えている人間の姿が映っていた。

「だあああああああああああああああああ!!」

 回避不能の一撃は、ドラゴンの首へと吸い込まれ、大量の血が噴水となって溢れ出した。

 

 ――――致命的な一撃(クリティカルヒット)である。


「やったぁ!! アーシェが、勝ったぁ!!」

「は……っ!! ああ……!! アイヴィ、ポーションをちょうだい!! 体が、体中が痛い……!! もう、動けないわ……」

 ドラゴンの体が力を失い、どさりと地面に倒れ込み、凄まじい衝撃と共に土煙が上がる。

「待ってて、すぐに持って行くから!! でも、どうやってあのブレスを耐えたの!?」

「アイヴィのファイアボールを纏いながら、傷治しのポーションを、大量に頭から被ったのよ……。それでも貫通してきて、体中が火傷だらけだけど……」

「凄い力技~……!! はい、傷治しの」

 だが、アシェルは忘れていた。

「アイヴィ!! 危ない!!」

「えっ」

 首を落とした後、レイモンは数秒間だけ生きていて、最後の言葉を口に出していたということを。

『ギャガァアアアアアアア!!』

「…………ッ!!」

「アー……シェ……?」

 

 ――――アシェルはアイヴィを咄嗟に庇い、右腕を食い千切られた。


『ゴ、ァアアア、アアアア……!!』

 まるで、『やってやったぞざまあみろ』とでも言っているかのように、最後の力を振り絞って奪った右腕をブレスで焼き尽くし、ドラゴンは嘲笑を浮かべたまま力尽きた。

「アイ、ヴィ……!! 怪我、してない……? 大丈夫……?」

「ふ、くげ、ん……。復元、しなきゃ……。アーシェ、アーシェの右腕……」

 アシェルは右腕を失ったことよりも、アイヴィに怪我がないかの心配をしていた。アイヴィがどこも怪我をしていないと確認すると、ほっと安心した様子で座り込む。

「……復元のポーションじゃ、この右腕は、治せないと思うわ」

「でも、でも、だって、だって!!」

「ドラゴンに食い千切られて、灰にされた。やられたわ……。うっ……!!」

「アーシェ!! やだ、やだ、死んじゃやだ!! 僕を置いていかないで!!」

 アシェルは考えていた。自分はこの先寿命で死んでしまうかもしれないが、アイヴィはサキュバスだから生き延びられるかもしれないと。自分はここで終わりだが、アイヴィには可能性がある……と。

 アイヴィはアシェルの話を無視して復元のポーションをアシェルの右腕にかけるが、復元される様子は全くない。奪われてしまったものは取り戻せないという仮説が当たってしまった、最悪の瞬間である。

「良い? アイヴィ、今から従魔契約を、解除するわ」

「やだ、お願い。お願い、そんなことしないで」

「アイヴィは強くて優しい子だから、きっとこの先も生き残れる。お姉様達に言われたんでしょ? 生き延びなさいって」

「アーシェが居ないなら死んだほうが良いよ!!」

「そんなこと言わないで……。まだ出会って1日とちょっとよ? アイヴィの人生の、ほんのちょっとよ。きっと1年もしたら忘れて、格好良い王子様みたいな冒険者が颯爽と現れて、アイヴィのことを迎えに来てくれるわ……」

「アーシェじゃなきゃやだ!! やだぁ!! やだぁあああああああああああああああああ!!」

 どんなに叫んでも、アシェルの右腕は復元されない。傷治しのポーションで断面を再生させ、傷口を塞ぐ程度の処置しか出来ないだろう。

「血が、足りなくなってきたかも……。アーシェ、私の腕をキツく、なんでも良いから縛ってくれる……?」

「う、ああ、う……! う、うう……!!」

「そう、そこを、ギュッて縛るの。血が出なくなるまで、力を込めて」

「うああああああああ!!」

 涙でぐちゃぐちゃになりながら、言葉にならない言葉を発し、アシェルの応急手当を進めていく。止血が完了したが、これ以上は傷口を塞ぐことしか出来ないだろう。


 ――――ふと遠くから、何者かの声が聞こえる。『ああ、これで安心だ……』と。


「私が寿命で死ぬか魔物に殺されるまでに、アイヴィがこのダンジョンで生き延びられるぐらい強く育てるわ。だから、頑張りましょう? ね?」

「アーシェ、僕のせいだ……。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……!!」

「アイヴィのせいじゃないわ。首を斬った後も少しの間喋ってたなって、私が覚えていたら避けられたことよ。私の油断なの……」

 右手が2人分揃わなければ、このダンジョンからは脱出出来ない。その右腕がドラゴンに食い千切られ、ブレスで焼き尽くされてしまった以上、もはや脱出する方法はない。アシェルはこの階層から出ることが出来ず、アイヴィは何年後になるかわからない救援を待ち続ける毎日を送ることとなる。

「…………アイヴィ、ごめんなさい。受け入れられないわよね……」

「アーシェ……。アーシェ…………」

 …………。

 彼女達には、レイモン達のような地獄の日々を味わって欲しくない。アシェルが死んでしまったらアイヴィは狂い果てて、ツェルゲリオンよりも悲惨な姿へと変わってしまうだろう。例え数十年、数百年後に救助が現れたとしても、彼女の心は永遠に救われることがないのだ。

 あのまま逝っても良かった。レイモンとツェルゲリオンを見送ったあの時、この子達を置いて消えても良かった。でも、危なっかしいこの子達を見捨てて逝くことは、どうしても出来なかった。だから私は……。私は…………もう一度やり直す権利を、その祝福(ギフト)を、この子達に使おうと思う。レイモン達を解放してくれたこの子達に出来る、せめてもの恩返しだ。

『…………私を、使いなさい』

「アーシェ……?」

「私じゃない……。今のは……?」

 お願い、どうかもう少しだけ干渉させて……。この子達に、可能性を託したい……。もう一度、チャンスを……!!

『私の…………を…………使い…………斬り…………して…………――――』

 ああ、神様……。いらっしゃるのであれば、どうかお願いします……。この子達にもう一度チャンスを…………。パパ……。ママ……。レイモン……。ツェルゲリオン……。私も今、そっちに――――…………。

 …………。

「…………クロバネさんの、遺体」

「え…………?」

「クロバネさんは、無事……?」

「う、うん。あのブレスから、咄嗟に守ったから、無事…………」

 どうやら、可能性はまだ潰えていないようだ。謎の声の導きにより、アシェルの絶望に一筋の光が差し込んだ。

「クロバネさんの、右腕を……! 貸して貰うわ……!!」

「え、ええっ!? ええええええ!?」

「他人の腕を接合するなんて、誰もしたことがないから出来るかわからないけれど、まだ可能性がある。クロバネさんの肉体は綺麗なまま!! 出来るかもしれない!!」

 謎の声の導きは、見事アシェルをクロバネの遺体へと運ぶことに成功した。そして、そこに可能性があるということを、アシェルに気付かせることに成功したのだ。

「アイヴィ、お願いがあるの」

「な、何!? 僕に出来ることなら、なんでもするよ!!」

「私の右腕の断面を、綺麗に切り落として」

「えっ……!!」

「お願いよ。可能性は少しでも高いほうが良いの!」

「アーシェ、痛くしないようにするから……!! 一番切れそうなので、一気にやるから!!」

 思い立ったら1秒でも早く行動すべきだと、アシェルはアイヴィに頼んで傷の断面を綺麗に整えて貰う。麻酔無しのトリミングなど狂気の沙汰だが、アシェルの希望はその苦痛を遥かに凌駕していた。

 トリミングが終わり次第すぐにクロバネの右腕と自分の切り落とされた右腕を合わせ、左右でおおよその長さが合うようにクロバネの右腕を切断する。

 準備を終えていざ結合と傷治しのポーションをかけたが、残念ながら死体の腕とは接合せずという結果になった。しかし、アシェル達はまだ諦めない。可能性はまだ残されている。

「アーシェ、いくよ……!?」

「ふーっ……!! ふーっ……!!」

 アシェルは口の中に布を詰め込み、舌を噛み千切らないようにジッと耐えている。死者の腕との接合は、これまで成功例が一度も存在しない。だが、幸いにもここには、ポーションの再生能力を吸い取り、それを一気に放出することが出来るサキュバスが居る。これが、残された最後の希望だ。

「再生能力を吸い取って、全部一気に出しちゃうよ! 痛み止めの効果はないから……!! 頑張って耐えて!!」

 傷治しのポーションと鑑定したものから高品質のものの順に100本、それらから再生能力だけを吸い取り、一点集中で放出する。痛み止めの効果はなく、まるでノコギリで腕を切り落とされるかのような激痛がアシェルを襲う。

「んんんんんんぅぅぅうううううううううううううう!! んぅううう!! んぅうぅううううううううううう!!」

「頑張って、頑張って!! あ、あ!! ああああ!! アシェル、くっついてきてる、くっついてきてるよ!!」

「んんんんぅうぅぅんうぅぅうううううううううううううううう!!」

「あと少し、もうちょっと……!! もうちょっとだからぁああ!!」

 想像を絶する痛みの中、アイヴィの言葉が希望となり、アシェルの精神を繋ぎ止めていた。その痛みはやがて冷たさへと変わり、アシェルの中の温かいものと混ざり合い、失われたはずの感触がアシェルに戻ってきていた。

「は、う……。ああ……っ……」

 莫大な量のポーションからドレインを一斉に行い、それを全て分け与えたアイヴィは力尽きて倒れてしまった。しかし、その体が地面に打ち付けられることはなく、途中で静止した。


 ――――アイヴィの体を受け止めたのは、アシェルの新たな右腕だった。


「アーシェ……。良かったぁ……」

「アイヴィのおかげよ……。ありがとう……」

「大好き……。どこにも行かないで……」

「私もよ。だから、勝手に居なくならないでね」

 こうして、アシェルは新たな右腕を取り戻すことが出来た。ふとドラゴンに目をやると、先程まで浮かんでいた嘲笑が、苦悶と憤怒の表情へと変わっているように見える。

「ざまあみろ、ドラゴン、だね」

「クロバネさんありがとうございます、でしょ?」

「うん……。クロバネさん、ありがとう……。アーシェ、僕……眠い……」

「力の使い過ぎね……。私が見張っているから、眠ると良いわ」

 力を使い過ぎたアイヴィはアシェルの腕に抱かれ、静かに眠りに落ちた。すぐに寝息が聞こえ、アシェルに安心感を与えてくれる。

「…………正直、ここからが大変ね」

 だが、油断出来ないのはここからだ。ドラゴンがいつ復活するのかわからず、ハイリザードマンの復活の可能性もある状況で、アイヴィを起こさないように寝ずの番をしなければならない。話をする相手が居ない中、相方が起きるのをジッと待つというのは、なかなかに辛いことなのだ。

「さっきの激痛より、何倍もマシだけどね」

 それでも先程の激痛よりはマシだと自分に言い聞かせ、アシェルの寝ずの番が始まったのであった……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
更新感謝です! クロバネさん!!右腕ぇ!! ぐわぁ……。感情ジェットコースターで何を感想に書けば良いか分からないです……。 アイヴィちゃんがアーシェじゃなきゃやだって言ってるの凄く好きです。 横から入…
良かった‥‥んだけど、これノンビリしてるとコピードラゴンリポップする‥‥?(゜Д゜;)
レベリング中の地の文はクロバネさんの視点だったのね…… 右腕をありがとう(*´ω`*)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ