目覚めし六柱
。世界は変わっていた。
大地ではない。
空でもない。
それは彼女の内側――
深く、燃え上がり、抑えきれない何かだった。
リアナは両手で耳を塞いだ。
無駄だった。
その声は胸の奥から、心の中から、吐き出す息の中からさえ響いていた。
天を引き裂く雷のように轟く声。
――ようやく……目覚めたか。
昨夜、ゼウスと名乗った瞬間に、リアナの人生は崩れた。
どうしてただの羊飼いが神を宿せるというのか。
どうしてあまりに広大で、永遠なる存在を耐えうるのか。
だが彼女を待っていたのは、一柱の神ではなかった。
夜明けとともに、新たな声が次々と湧き上がった。
まず、戦いを告げる冷たい風のように、誇り高く強い女の声が響いた。
――お前は一人ではない、リアナ。
私はフレイヤ。愛……そして戦の女神。
次に、古き水のように深く、包み込むような母性に満ちた声。
――私はイシス。均衡と再生。
過去と未来を見守る者。
空気が変わり、暖かな息吹が肌を撫で、遠くで巨大な何かが目覚める気配がした。
――ケツァルコアトル。
天と地を貫く者。
風、創造……そして破壊。
四つ目の声は静かで、ほとんど感情を持たぬようだが、その広がりは無限にも思えた。
――私はヴィシュヌ。
あらゆる転生を支える秩序の守護者。
輪廻はお前を通して続いていく。
そして最初の声――嵐そのもの――が再び語った。
――そして我はゼウス。雷とオリュンポスの王。
お前のおかげで……我らは再び息をする。
リアナは震えながら膝をついた。
名が響く。
古き鐘のように頭の中で鳴り響く。
六つの柱。
六つの神格。
六つの世界。
六つの意志が彼女の内に宿っていた。
――なぜ……? どうして私なの……?
声にならないほどのかすれた囁き。
まずゼウスが答えた。雷を閉じ込めたような響きで。
――お前は力を求めなかった。
支配を望まなかった。
フレイヤが、破壊的なまでに優しく続けた。
――野心なき魂だけが、私たちに呑まれない。
だからこそ、お前は神を宿すにふさわしい。
ヴィシュヌが永遠の静寂の中で語った。
――遠い昔に分かたれた道が、今……お前によって交わる。
そして、これまでの誰とも違う、声ではない囁きが響いた。
魂の奥深くで震える古の気配。
――我らの世界は滅んだ。
だがお前たちの世界には鍵がある。
再誕のための。
あるいは完全なる終焉のための。
リアナにはすべてを理解することはできなかった。
広すぎる。
重すぎる。
神々しすぎる。
だが一つだけ確かな真実があった。
彼女の人生は、もう彼女だけのものではなかった。
もしあなたの中に神が眠っていたら?
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物語の続きで、神々が語る「真実」を見逃さないで!




