アーティファクトの男
午後の空気は重く、リアナとミラはゴブリンの死体から漂う痕跡を追っていた。
それは微かに、しかし確かに生きた闇のエネルギーだった。
死体の皮膚に刻まれていた紋様は、部族の印ではない。
それは、支配のための導管だった。
そしてそれは、誰も足を踏み入れたがらない森の一角へと二人を導いていた。
──ゼウス:「誰かが彼らに意志を押し付けた。」
──イシス:「それには強大な力か…禁じられた絆が必要。」
──フレイヤ:「あるいは、ただの残酷さ。」
静かな三十分の歩行の後、二人はそれを見つけた。
開けた空間。
中央には黒い石でできた円。
その中に、男がひとり立っていた。
灰色のマントをまとい、背が高く、顔はフードに隠れ、
手には紫色の光を放つ金属の杖のようなものを持っていた。
リアナが一歩踏み出すと、男は首だけをゆっくりとこちらに向けた。
体は動かさずに。
──来るとは思っていた──男は空洞のような、柔らかい声で言った──
だが、連れがいるとはな…器よ。
ミラはごくりと唾を飲む。
リアナは眉をひそめた。
──お前は何者だ?
──まだ重要ではない者さ。
だが、これ──杖を持ち上げる──はお前たちの言う「アーケイン・チャネラー」。
どの神よりも古い時代の遺物だ。
これがあれば、どんな愚かな怪物でも踊らせることができる。
──ゴブリンたちを操ったのはお前か?──リアナが問う。
──操った? いや…
私は彼らを愚鈍さから解き放った。
目的を与えた。
だというのに──お前がそれを壊した。
──ヴィシュヌ:「嘘だ。そしてその嘘を信じている。」
──ケツァルコアトル:「ただの敵ではない。これは“兆し”だ。」
──私たちに何の用だ?
男は微笑んだ。
だが、その笑みは人間のものではなかった。
──今は何も。
ただ──選ばれし者が本当に生きているのか、確かめに来ただけさ。
杖を地面に叩きつけた。
闇の波が走り、
地面が震える。
そして二人が何かをする前に──
男は風に散った煙のように、姿を消した。
リアナはその場に立ち尽くし、
ミラは震えていた。
──な、なに…あれは…?
──警告よ──リアナが拳を握りしめながら言った──
そして、これはまだ…始まりにすぎないという約束。
誰かを見かけただけで、不吉な予感がしたことはある?
もしこの章があなたに鳥肌を与えたなら、評価を忘れずに。




