力の裏にある重み
午後の陽が森にやわらかく落ちていた。
影は長く伸び、風は冷たさを増していた。
リアナとミラは木の下で休んでいた。
背中を幹に預け、二人とも息を切らしていた。
「魂まで痛い気がする…」
ミラが苦笑しながら言った。
「魂は、最後まで痛めちゃダメよ」
リアナが微かに笑って答えた。
沈黙。
風のささやき。葉の軋む音。
そして…ミラが口を開いた。
「どうして、あなただったの?」
リアナはすぐには答えなかった。
空を見上げ、雲の中に言い訳を探すように。
けれど、今回は逃げなかった。
「はっきりとはわからない。
でも、あの日の森で…忘れられた聖域を見つけたの。
五つの像。五つの存在。」
ミラがゆっくりと身を乗り出した。
「神様たち…?」
リアナはうなずいた。
「ゼウス、イシス、フレイヤ、ケツァルコアトル…ヴィシュヌ。
彼らは語りかけてきた。私を選んだ。
それが運命か偶然かはわからない。
ただ…その瞬間から、彼らはただの名前じゃなくなった。
私の中にいる。」
― ゼウス:「選択は、まだ終わっていない。」
― フレイヤ:「彼女には聞く価値がある。」
― イシス:「語ることで…心は軽くなる。」
― ヴィシュヌ:「魂と永遠をつなぐために。」
― ケツァルコアトル:「話せ、リアナ。自分を解放しろ。」
「私は戦ってる。そうしなければならないから。
世界が何かに動かされてる。
アウィソトルみたいな存在。誰にも見えない闇。
そして彼らは…」リアナは自分の胸に手を当てた。
「私を鍛え、準備させる。
ときには…引きずられるように。」
ミラは黙って聞いていた。
その目には驚きと…悲しみの光があった。
「怖くないの?」
「毎秒、怖いわ。」
「じゃあ私は?どうして私を訓練させてくれるの?」
リアナは真っ直ぐミラを見つめた。
「あなたは私を、“私”として見てくれる。
中にあるものじゃなくて。
もし私に何かあった時…
本当の意味で知っていてくれる人が欲しいの。」
ミラは唾を飲み込み、拳を握りしめた。
「じゃあ、私は絶対に…あなたを裏切らない。
見捨てたりもしない。」
リアナは微笑んだ。
長い間抱えていた重みが…
初めて、彼女だけのものではなくなった。
誰かに、何も言わずにただ“聞いてもらえた”ことはありますか?
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