戦うなら――ひとりじゃない
そよ風が葉を優しく揺らし、森は古の真実をささやいていた。
ミラとリアナは岩の上に並んで座っていた。
かつて宿題から逃げ、冒険を夢見て隠れたあの場所で。
けれど今――
世界は変わっていた。
リアナもまた、変わっていた。
「……やめてもいいのよ」
視線を落としながら、リアナは言った。
「でも、やめられないの」
ミラの声は、迷いなく。
「あなた、何に巻き込まれてるか分かってない。
これは遊びじゃない。
私の中には神々がいる。
この世のものじゃない存在も。
理に背く魔法も……」
「それでも、あんたひとりで全部背負うのは違うって思ってる」
ミラが一歩、前に出る。
「私はあんたみたいに、雷を呼べない。変身もしない。
でも、他の何よりも大事なものがある」
「私は――
“親友”を持ってるの。
そしてその親友が、ひとりで崩れそうになってるのを黙って見てるなんて、できない」
リアナは唇を噛んだ。
拒否したい気持ちはあった。
けれど、それ以上に――孤独に疲れていた。
—
《フレイヤ:「気に入ったわ。あの子、火がある」》
《イシス:「知識は共有された時、最も永く残る」》
《ゼウス:「だが、忘れるな。彼女は“人間”だ」》
《ケツァルコアトル:「時に、それが最も重い」》
《ヴィシュヌ:「彼女に学ばせろ。見させろ。影に置くな」》
リアナは深く息を吸った。
「……分かった。でも簡単にはいかないよ」
「まずは基本から。動き。持久力。周囲の読み方」
「で、雷は?」
「それは……忘れて」
リアナは珍しく笑った。
「せめて、近くに落ちても死なない方法からね」
ふたりは笑い合った。
そして、森の奥深く。秘密と木々の間で、訓練は始まった。
田舎町の少女がふたり。
ひとりは魂に神々を宿し、
もうひとりは、揺るがぬ忠誠を燃やしていた。
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