均衡、甘い嘘……そして六つの神々のコメント
日々は、奇妙なほど穏やかに流れ始めた。
気づけばリアナの生活には、新たなリズムが生まれていた。
朝は母の手伝いをし、父と一緒に羊の世話をし、家の雑事をこなす。
午後は森に入り、魔法、反射、筋力……そして何より難しい「忍耐」の訓練。
夜になると神々の声に耳を傾ける。
時に助言、時に古の戦争の思い出話、そして時には――
「宇宙最高の戦略家は誰か」という果てしない議論。
普通の生活とは言えなかった。
けれど――それは「彼女の」生活だった。
その夜、果物をたっぷり詰めた籠を抱えて村を歩いていると、聞き慣れた声が響いた。
――リアナ！ やっと見つけた！
ミラが手を振りながら駆け寄ってくる。
その後ろからはダリエルが箱を抱えてついてくる。
リアナを見るなり、箱を落としそうになっていた。
――ねぇ、なんか最近変じゃない？
ミラが腕を組んで詰め寄る。
何かあったでしょ？
リアナは無邪気な顔で瞬きをする。
――え？ 変？ 私が？
――姿勢も、目の輝きも、肌の感じも……一週間で十歩くらい成長したように見えるのよ！
リアナは苦笑いしながら答える。
――たぶん、最近はお父さんの仕事を手伝うことが多いからかな。
重い袋運んだり、羊を動かしたり……そんな感じ。
心の奥、ゼウスが鼻で笑った。
――「父の仕事」だと……？
宇宙最強の五大神による超絶訓練だというのに！
――いい嘘ね。
フレイヤが愉快そうに笑う。
私も昔、自分の力を「農作業で鍛えた」って言ってたわ。
リアナは顔色を変えないように必死で笑顔を保つ。
――それに……最近よく食べてるし。
――たくさん食べてるだと！？
ケツァルコアトルが抗議する。
それなら正直に言ったらどうだ？
「雷を吸収し、霊を呼び、魂を神の渦に変えました」ってな！
――静かに。
イシスが叱る。
彼女にはその「仮面」が必要なの。邪魔をしないで。
一瞬の沈黙。
そして、ヴィシュヌが柔らかく呟く。
――あの少年……ダリエル。
彼は、お前をまるで女神のように見ている。
リアナの頬が一気に熱くなった。
ダリエルは心配そうに覗き込む。
――だ、大丈夫？ なんか顔赤いよ。熱ある？
――い、いやっ！ ただ……今日は日差しが強いだけ！
フレイヤが大笑いする。
――あぁもう、たまらないわ。
「神々による恋愛実況」、これ最近の流行かしら？
ゼウスがため息混じりにぼやく。
――宇宙を司る六つの柱が……
結局、恋する少年をからかってるとはな。
――あまり想像を膨らませないでね、ゼウス。
イシスが皮肉っぽく返す。
ミラが楽しそうに次の祭りについて語り、ダリエルが照れながら頷く横で、
リアナは変わらぬ笑顔を必死に保っていた。
外側は静かに微笑む少女。
内側は、神々のコメントと感情の洪水で大混乱。
けれど、ふと思った。
もしかしたら――
ほんの少しだけ、かもしれないけど……
この人生、
なんとかやっていけるのかもしれない。
神々が、一瞬たりとも黙らないとしても。
普通の会話中に六柱の神が脳内でしゃべり続けたら……あなたは耐えられますか？
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次の騒動と新たな真実は……すぐそこに！
