39話──ザアファと勇者2
やがて誠はザアファと共に、目的の部屋の前まで辿り着いた。
部屋の外には、異臭は漂っていない。
「心の準備は良い?」
「……大丈夫だよ」
少し不安な返答を受けつつ、誠は扉を開けようとして……
「マコト……?どうしたの?」
「あーいや、妙に硬くて開かないんだよね」
「僕が開けてみる?」
「ちょっとやってみて」
「うん。……?普通に開いたよ?」
「あれ、なんでだ?」
というひと悶着がありつつも、部屋の中をザアファへ見せるという目的を達成する。
「まぁいいや。ほら、中見ていいよ」
誠は一歩後ろからそう告げた。
死臭を嗅ぐ趣味は無いからだ。
「……ッ、ぅ……!」
ザアファの反応だけを見て、内部の状況の悪化をある程度察することができた。
「吐く前に離れてな」
「ッ……」
ザアファはバッと離れて扉を閉め、目に焼き付いた光景を消すように、両手で目を擦った。
しかしそんなことでは掻き消せない。視覚と嗅覚で脳は記憶した。
「こういうこと。判別できてたかわからないから補足するけど、ワヒュード様と、ササーラさんと、アルバァさんと……ナースィンさん。その四人がこの部屋に置かれてる」
「……」
「だから君たちに連絡が言ってないし、国王も病気って言い訳を通してたってことだよ」
「……他の方々は大丈夫なの?」
衝撃から立ち直ったザアファは、声を震わせつつ質問をした。
「他の方々はっていうと、団長と副団長?」
「あと、スィッタ隊長も……!」
「うーん。その三人か。……難しいね。とりあえず歩きながら話そっか。今開けたせいで臭いが出てきてるからちょっとここでの立ち話はね……」
「わかった……」
今すぐにでも知りたい気持ちを抑えて、ザアファは頷いた。
誠とザアファは来た道を戻りながら会話をする。
「まずサムハさんは死んでる。君たち隊員の怪我に関しては、サムハさんが死んだことが原因らしいよ」
「……どういうこと?」
「俺もよくわからないから、詳しくはサマーニャさんに聞いてよ」
「ってことは、副団長は生きてるんだ」
「そうだね。さっきも話したしね。で、スィッタさんだけど、まだ生きてるよ」
それは真実。まだ生きているのは確かだ。
だが、生きてるという言葉を聞いて、あからさまに安堵しているザアファには申し訳ないが、まだ話は終わっていない。
しかし、言うべきなのだろうか。誠は言葉を続け、真実をザアファへ伝えることを迷った。
(三番隊となると、スィッタの隊だよな。サマーニャとのあれこれを話して、勝手な行動を始められるのは俺としても困る。……問題は危機察知か)
「……君の危機察知の能力は今どんな感じなの?危機は迫ってる?」
「危機察知はずっと疼いたままなんだ。数日前から、ずっと……」
気が沈んだ様子のザアファと、普段通りの誠。
「身近の危機って、隊員たちの深夜の負傷とは別だったってこと?」
「わからないんだ。そういう細かいことは僕の能力じゃ判別できなくて、ただ危機があるかないかだけしか感じられないんだ」
「はーなるほどね」
誠はザアファの返答を受けて、納得したように、満足したように頷いた。
「それで、事態の核を知った君は、これからどうする気なの?」
「どうするというのは……?」
「君の隊のところに戻るのか、それとももっと核心を追及したいのか」
「……」
誠の問いかけを受けたザアファは俯いて。少しばかり思案した後に答えた。
「これ以上迷惑を掛けるわけにもいかないし、もう戻るよ」
「戻るんだ」
「うん。僕がいても仕方ないしね。あ、もちろんここで見聞きしたことは誰にも話さないから!」
「それは助かるよ。まだ騒がれたくないからさ」
飄々とした様子の誠は、それからなにも言わずに足を止めた。
ザアファはそのことにすぐに気付き、不思議な顔をしつつ止まる。
「どうしたの?」
「せっかくだしさ、ちょっと暇つぶしに付き合ってくれない?」
「暇つぶし?」
誠は年相応のにこやかな笑顔で告げた。
「そう、暇つぶし。君は体を貸してくれるだけでいいからさ」
「でも、あんまり長い時間いないのも心配かけるし……」
「勇者に連れまわされてたって言えばなんとかなると思うよ。いざとなれば俺もそっちいくし」
「うーん……それならまぁ……」
「決まりだね。じゃあ行こうか」
渋々といった様子のザアファを連れて、誠はなだらかな階段を登っていった。
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