31話──表面張力
それは、王城から少し離れた場所ににある、騎士たちが寝泊まりする、とある部屋での会話だった。
一人一人に部屋を与えるのはスペース的な問題から難しく、能力による制限や制約が無い限りは二人部屋になっていた。
そしてこの部屋も例外ではなく、二人の騎士が親しげに会話をしていた。
「ねぇベルク」
「どうしたんだ?」
ベルクと呼ばれた騎士はベットに寝転がって休憩を取っていた。
現在は訓練終了後の夕食前。肉体の疲労がかなり出ていて、更に筋トレをして追い込む気になれず体を休めていた。
そしてベルクのことを呼んだ騎士は、ベルクが寝転がるベットの下、二段ベットの下側に腰掛けて、側の棚を机替わりに訓練記録をまとめていた。
青年は訓練ノートに今日の反省点などを記入しながら、ふと思ったことを口にした。
「最近なんかおかしくない?」
「……城の話か?」
「うん」
それは、溜まりつつある王城及び上司への疑念だった。
「まー確かに、うちのナースィン隊長から連絡が途絶えてるんだよな。昨日ササーラ隊長から、ナースィン隊長は任務に出てるだけって伝えられたらしいけど、ナースィン隊長が連絡を途絶えさせたことは無い」
「でしょ?僕の隊のスィッタ隊長も顔を見せなくなったし、やっぱりなにかあると思わない?」
「そうだな~。……そういや、急な武器のメンテナンスも初めてだよな。たまーにメンテナンスする時は一週間くらい前から告知があったのに」
「だよねだよね!」
「……あとさ、他にも思い当たる節……ある……な。うん、あるわ」
ベルクが記憶を掘り返すと、当てはまりそうなピースが見つかっていく。
「アルバァって知ってるか?」
「アルバァ?……人の名前?」
「俺と同期の隊員だよ。あの~、めっちゃ強い奴。戦闘狂のさ」
「ああ!わかった!それでその人がどうしたの?」
「行方不明なんだよ」
「……え?……行方不明って、いつから?」
「ナースィン隊長の連絡が途絶えた日の朝は居たらしい。だから昨日だな。昨日の朝から居ない。怪しくないか?」
「なんか、繋がってるような気がするね。それとさ、今思い出したんだけど、もしかしたら関わりがありそうな噂が僕の隊で流れててさ」
「噂?どんな?」
「僕たちって王城の二階以上には入れないでしょ。勇者さんの召喚っていう記念日?の時は例外に入れたけど、隊長とかじゃないと無理じゃん?」
「そうだな」
「でも使用人の人たちは別でしょ?メイドさんとか執事さんとかさ。その人たちは国王様とスィフル姫様の身の回りのお世話をするから入れるよね」
「だな」
「でも今は僕たちと一緒で入れなくなっているらしいよ。なんでも、国王様が病気らしくてさ、感染対策で侵入禁止になってるとかなんとか……みたいなね」
「なんだそりゃ。じゃあワヒュード様の看病は誰がやってんだよ」
「そこまではわからないけどとにかく隔離されてるみたいでさ、さっきの話と繋げるなら隊長たちがその看病に付いてるのかもって考えられるよね。スィッタ隊長の能力ならその感染もどうにかできそうだし」
「でもそれなら一切の連絡が無いのはおかしくねぇか?極秘だとしても、混乱を防ぐためになにかしらの任務とかで外に出てるから連絡できないって事前にあってもいいと思うんだよなぁ。それに、うちのナースィン隊長はどんな裏の任務があったとしても絶対に一日一回は特訓の内容とかの指示を送ってくるし」
「そっかぁ……」
「ま、裏の任務をしてるかどうかはハッキリしてなくて、ただの噂程度の話なんだがな。でも、嘘だとしても毎日欠かさず指示指令を出してくれてたことに変わりはないな。…………ザアファ?……なんだお前その顔」
ベルクがベットの外に身を乗り出し、逆さまの状態になってザアファを見てみると、
「スィッタ隊長のことが心配か」
「別にそんなんじゃ……」
「嘘吐けよ。ザアファが言ってたことだぞ?気になってるって」
「……マジ?いやいや、そんなわけないって。言ってないし、そもそも気になってなんて無いし」
ザアファ訓練ノートから手を離し、ベルクの言葉を真っ向から否定した。
しかし、次のベルクの一言で、己の失態を察することになった。
「なぁザアファ……酒」
「あ……。あぁ!」
「やっぱり記憶飛ばしてたか。俺以外が聞いてなくてよかったな」
「ほんと……?他の誰も知らない?」
「多分な。俺の知る限りだと俺以外は知らないと思うぜ」
「そっかぁ~。よかった……のかな?」
「よかったってことにしとけ。で、どうなんだよ。スィッタ隊長のこと、心配かって」
「心配。しんぱい……か。うん。心配だよ。心配に決まってるじゃん!でも……僕になにかができるわけじゃないし、ただの隊員が勝手な行動したら迷惑かけるかもでしょ。だから心配とか思っても仕方ないよ」
ザアファは諦めたように呟く。
隊員と隊長という差があるし、そもそもザアファには目立てるような能力も無く、戦闘技術の成長も芳しくない。
スィッタ視点だとただの部下でしかないだろう。
だから、無駄なことして悪印象を覚えられるよりはなにもせずに待つベきだと、ザアファはそう考えていた。
「ま、悪いことが起きてるとも限らないしな。こういう時こそ楽観的に過ごすべきだ」
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