15話──思惑2
「お父様…わ、たしは……っ、どうすれば……」
明かりも付けていない部屋。
少女の嘆きは届かない。
血縁関係にあった両親はもういない。
母親は病死し、父親は殺された。頼る先は、父が信頼していた者たちか、それとも……
「……ゆうしゃ、シナイシ様……?」
なぜここで、そこまで関わり深くない勇者が頭を過ったのか。
それはただ、最も直近にスィフルへその身を案ずる言葉を投げかけたのが勇者だったから、というだけの理由だ。
偶然と言えば偶然。
必然と言えば必然。
彼なら守ってくれる。彼なら頼れると。
まだ幼い頃に母親を失った少女の心は未熟なまま。土台が揺るぎ、傾けば、純粋な丸い心はどこまでも転がっていく。
どこまでも……どこまでも……
「シナイシ様………っ」
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サムハ陣営
団長──サムハ・ピャーチ:能力──■■
一番隊隊長──ナースィン・ヴァドー:能力──■■
三番隊隊長──スィッタ・シェーチス:能力──■■
目的:犯人の特定及び、処刑。現時点での犯人の有力候補【勇者】。
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サマーニャ陣営
副団長──サマーニャ・ゼウォミー:能力──怪力?
勇者──枝石誠:能力──怪力?視覚妨害?
二番隊隊長──ササーラ・トリー:能力──■■
目的:【勇者】を利用してサムハ陣営を泳がせ、犯人の特定。
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無陣営
姫──スィフル・スクッシャ
目的:たすけて
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死者
国王──ワヒュード・モロ・スクッシャ
目的:死人に口なし。
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犯人
■■──■■
目的:■■
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月明かりに照らされていた。
「……」
王城の頂点に座るのは、副団長のサマーニャ。
ここは遮るものが無い高所なため風当たりが強いが、サマーニャにとってはそよ風程度。煽られることなく腰掛けて、足をぶらぶらと揺らしていた。
(ワヒュード様も死んじゃったなー)
考えていたのは、ワヒュード国王の死亡について。
サマーニャは復讐しようとか、大層なことは思わない。それが副団長としての役目だと思っているから、その役割を果たすだけ。
自分が狙われたら嫌だから、犯人を野放しにする気は無い。
(でも、身近な人間なんだよね。実は犯人団長でしたとかだったらどうしよ)
ワヒュード国王の殺害現場に残った手掛かりは皆無と言っていい。
王城への侵入を制限する結界が破壊されたり細工されていないので、王城内の人間の仕業だというところまでは絞れる。
派手な殺され方はしていない。動機に恨みつらみは無さそうに思えるが、そう思わせるために一刺しで殺したのかもしれないでの判断材料にはしにくい。
それに……
「なんで抵抗しなかったんだろうな~」
ワヒュード国王は、ただ王政を敷いているだけの、守られる国王ではない。最強とは誇張しない限り言えないが、少なくとも隊長レベルの力は持っていた。並大抵の隊員には手加減しても圧倒できる力だ。
にも関わらず、ワヒュード国王殺されていた。朝まで発見されなかったということは、叫び声や戦闘音が無かったということ。
更にワヒュード国王が抵抗した痕跡は見られなかった。
つまり、ワヒュード国王が信頼を置けるような存在か、ワヒュード国王に一切の抵抗をさせずに殺せるほどの実力を持っていた人物だったということ。
状況から推測できる条件に当てはまる者を考えれば……あのサムハの怒りすら、嘘に見えてきてしまう。
「疑心暗鬼はほどほどにしないとだよね……」
敵対心振り撒いたことで、誰からも信用されなくなり、疎外されてひとりぼっちになるのが一番怖いことだ。
勇者との協力関係は秘匿しておかなければ、犯人特定以前の問題になってしまうだろう。
「……鳥?」
カツカツと乾いた音が聞こえて、その方向へ目を移すと鳥がいた。サマーニャは鳥の専門家でもなんでもないので、明確な種類はわからなかった。
でもここまで近づいてくる鳥は珍しいな思い、サマーニャは手を伸ばした。
だが、サマーニャが触れるよりも先に、鳥はバサッと翼を羽ばたかせて飛んでいった。
「あ~あ。行っちゃった。……これ以上、犠牲者が増えないといいな~」
鳥が飛んで行った方向からは、『ホーォ、ホーォ』という鳴き声が聞こえた。
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