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勇者の力は……不必要?せっかく異世界転生したので、新しい人生も謳歌したいと思います。 ……国王死亡!?  作者: 成田楽


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13話──勇者として

 サマーニャは誠が先ほど寝転がっていたベットに腰掛けた。


 誠は隣に座るわけにもいかず、椅子を引っ張って近くに座った。


「サマーニャさんはなにを求めているんですか?終わりはどこですか?」


「ぼくは、君を利用して犯人を暴きたいと思ってる」


「……当分は俺を容疑者と置きたいってことですか」


「そ。話が早いね。シナイシくんの疑惑が高まれば高まるほど、真犯人は油断する。その尻尾を踏みたいって考えてるんだ」


「では、俺がサムハさんに色々喋ったのはまずかったですか?」


 サマーニャが知っていると、そう誠がサムハへ言った時の反応は微妙なものだった。


「サマーニャさん的には、秘密にしておきたかったんですよね」


「そうだけど……別にいいかな。シナイシくんが拷問を受けたり処刑されたりするまではいかないよう手を回すからさ、不確定な立ち位置を保っていてほしい」


 誠が有罪判定されれば、事件は幕を閉じる。


 誠が無罪判定されれば、犯人は自分に焦点が向けられることに焦って、次の一手を繰り出す。


 でも、誠が不安定な立ち位置にいることによって、証拠を集めようと捜査は着々と進んでいく。


「……現状、俺は昨夜の行動について嘘をついていると考えられている。でも、まだ俺が暗殺したと立証するには証拠不十分……。もう一人くらい、仲間が欲しいところですね」


 このままでは、サマーニャがどう手を回しても、誠に口を割らせようと動く者がいるだろう。


 サマーニャの言葉通り、拷問か、洗脳的な力があるのならそれで。


「誰かいませんか?」


「一応いるけど」


「……早く言ってくださいよ」


 サマーニャ以外の協力者がいるだけで、相当状況の変化が期待できる。


 誠が立ち回りやすくなるのは確実だろう。


「うーん……言ってもいいかな。王国団の二番隊隊長のササーラって人。タイミングが合ったら会わせるけど、今は無理」


「わかりました。それでそのササーラさんはどれくらいこちらの味方なんですか?」


「ぼくと同じくらいって考えてもらっていいと思うよ。ぼくの右腕みたいな存在の人だからさ」


「わかりました。ちなみにサムハさんは?」


「団長は駄目だね。あの人は国王に忠誠誓い過ぎてて、相当荒れてるから話にならないよ。なんなら君のことをめちゃくちゃ疑ってるし」


「……そうですか」


 サマーニャのおかげで、王国の内部情報が少しずつ鮮明になっていく。


「隊長以上の役職の人はあと何人いるんですか?」


「二人だね。三番隊まであって、一番隊の隊長がナースィン。三番隊の隊長がスィッタ。隊長は番号に優劣無くて、ナースィン、ササーラ、スィッタの上に副団長のぼく。その上に団長のサムハがいるって感じだね」


「宰相などの官職は?」


「あー、それはほとんど団長がやってるよ。一応団長の下にそういう雑務職の人はいるけど、おまけみたいなものだよ。権力なんてほとんど無いしね」


「では、現状はサムハさんが王国の頂点に立っている感じなんですね」


「そゆこと。スィフル様は傷心になっちゃってて、いわゆる操り人形だよ。今はサムハが掛かりきりで対応してるらしいけど、どうなるかはわからない。どうにか立て直してもらって、新たな王女として権威を振りかざせるようにならないと王国も終わりだよ」


「王妃はどうしたんですか?」


「病気で死んじゃった」


 話題にもならず、存在すら感じられなかったのはそういうことだったのかと、点と点が結び付く。


「病弱な人じゃなかったんだけどね、なんの前触れもなく突然死だよ。幸いなのは、王様と違って王妃様はベットの上で眠るように死んでたことだね。王妃様が死んでから、ワヒュード様は一人娘のスィフル様ばかり気に掛けててさ、国の存続がかかってるのに全然子作りしない。そのせいでこんな窮地に立たされてるんだから、もうまったくーって感じだよね」


「俺に言われても……この国に思い入れはありませんし」


「そうだよね。でもまぁ、スィフル様を守るって決めたんでしょ?協力してね」


「もちろんですよ。姫様のため、俺のため」


 完全に心を許すわけではない。


 あくまでサマーニャとは協力者という関係性に留めておく。


「よろしくお願いしますね、サマーニャさん」


「うん。よろしく。ちなみにこの件はぼくたちの秘密だからね」


「もちろんですよ」


「そうじゃなくて……」


 サマーニャは首を振って誠の了承を訂正する。


「ワヒュード様が死んだこと。王城内の人に言いふらさないでね」


 王城内の人というのは使用人や騎士のことだろう。


「国王が死んだのに隠すんですか?」


「死んだのにじゃなくて、死んだからだよ。国王が殺されたってなると混乱待ったなしでしょ?その情報が他国に流れるのも良くない」


「なるほど。そうですね。じゃあ俺からは一切なにも口にしないようにします。しかし、食事や入浴時には使用人との接触が日頃あったはずですよね。そこはどのようにして誤魔化すんですか?」


「一旦体調不良だから部屋で寝ていて、流行り病かもしれないから看病は強靭持ちの人が担当してる。ってことにしてる」


「いつまでも先延ばしにすることは不可能ですよ」


「一応、そのまま病に侵されてこの世を去ったってことしようかなって。それなら殺害されたってお知らせするよりは騒ぎも低減されるだろうしね」


 今朝遺体となって発見されたはずなのに、サマーニャは王国の行く末をかなり先まで見通している様子だ。


 それならば、誠が口を挟む必要はないだろう。


「とにかく、そんな感じだから下手な行動はしないでね」


「えぇ、足を引っ張らないようにはしますよ」

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