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果てしなく続く物語の中で  作者: 毛井茂唯
エピソード 奈落の受胎 八大地獄
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第2話 開帳と忠告



 後藤さんたちの来客から2日後、元々僕が相談を投げていた政府の人と父さん経由でコンタクトが取れた。


 マサムネや絶縁の箱庭で手に入れた物品の扱いについての相談だ。

 政府の情報収集で分かったことだが、ストレージは入れる専用みたいだ。

 絶縁の箱庭の試練中は入れることが出来たが、一度出すとストレージには入らなくなる仕様になっていた。

 機能としては残ったままになっているので、今後も使用する機会はありそうだ。



 僕は今日学校を休んで朝から父さんと共に市役所の会議室に来ている。

 中には男性が三人いた。

 代表者らしき人が僕に名刺を差し出しつつ挨拶をしてきた。

 

「初めまして青野信也様、私は試練対策委員会関東支部長の元町圭史と申します、以後お見知りおきを」


 挨拶と共に、名刺を差し出された。フルネームは元町圭史さんというみたいだ。

 黒々とした七三分けの黒髪に痩せ気味の体躯。

 どことなく幸が薄そうな感じの男性だ。20代だとは思うけど、何だか疲れていてそれより老けて見える。

 目だけはキラキラして輝いているのが印象的だ。

 良いことでもあったのだろうか。


 他の二人は源さん、多田さんと名乗った。彼らは元町さんの直属の部下と紹介を受けた。

 この二人も元町さんほどではないけど目が輝いている。

 全員同年代のようだ。


「青野敏夫様とは既に何度かお会いしておりまして、警備や情報統制について話しております」

「はい、父さんからは聞いています。本日は宜しくお願いいたします」


 頭を下げてくる元町さんたちに、僕も頭を下げる。

 父さん曰く真面目で信用は出来る人らしい。

 ただし彼単体では信用できても、組織としては信用しすぎないように釘を刺されていた。

 

「早速ですがストレージのリストを表示いただけますか?」


 僕は頷いてステータスを表示させ、ストレージの項目をタップする。


『ストレージ

・大太刀・・・・1→

・打刀・・・・・1→

・脇差・・・・・1→

・戦装束・・・・2→

・長弓・・・・・1→

・矢・・・・・・1→

・首飾り・・・・1→

・食料・・・・・45→

・薬・・・・・・12→

・糸・・・・・・2→

・反物・・・・・1→

・鉱石・・・・・15→

・金属・・・・・1→

・木材・・・・・14→

・土・・・・・・3→

・石・・・・・・7→

・水・・・・・・5→

・果実・・・・・35→

・酒・・・・・・3→

・野菜・・・・・14→

・肉・・・・・・4→

・雑貨・・・・・10→ 』


「ストレージについてですが、名前に当たる部分が分類、数字は種類の数となります。矢印をタップすると詳細が出てきます。試しに戦装束をタップしてみましょう」


 食料の種類が多いのは加工品だからだろう。野菜とか肉は別の分類だし。

 お土産で食べきれないほど詰め込まれたから、僕もいまいち把握していない。

 元町さんの説明を聞き、戦装束の矢印をタップする。


『戦装束・・・・2→


 黒綱の戦装束(破損)

 狐人族によって作成された上下からなる装束。

 箱庭の綿を月葉木の染料で染めることで柔軟で強靭な黒糸を作り、それによって編まれた布をあしらった一品。

 急所は二重構造になっており、防御力を高めている。

 7割が炭化している。


 シンヤの戦装束

 狐人族によって作成された上下からなる装束。

 細かい調整がなされ、身体の動きを阻害されない造りとなっている。

 箱庭の綿を月葉木の染料で染めることで柔軟で強靭な黒糸を作り、それによって編まれた布をあしらった一品。

 急所は二重構造になっており、防御力を高めている。

 青野信也の体型に合わせた一点物。狐人族の乙女の加護が付与されている』


「……このようにストレージ内の物品の情報を見ることが出来ます。しかし試練中はこの機能はありませんでした。今後もストレージの中身の情報は試練後に開示されると考えるのが妥当でしょう」


 シンヤの戦装束の説明を見たとき、何か言いたげだったが説明を続けてくれた。

 僕としてもその方が有難い。


「分かりました。それで刀剣の類なのですが、こちらの扱いは……」

「それについては試練中に入手したもの、試練に必要なものに限り、登録証を発行いたします。信也様の場合は3振り分の登録証を発行いたしますので、ストレージから取り出していただけますか?」


 僕はストレージを操作し、情報を確認した。


『打刀・・・・・1


 白鷺

 狐人族の歴代随一と言われた鍛冶師が白燐鉱を限界まで精錬し作り上げた大業物。

 持ち主の技量によっては同じ白燐鉱の刀を両断するほどの切れ味を宿す』


『脇差・・・・・1


 小狐丸

 ある狐人族の長が生まれた娘に健やかたれと贈った白燐鉱の脇差。

 刀身は黒色に結晶化しているが元の金属の靭性を維持している』


 打刀はダンクロウさんから送られたものだ。

 多分マサムネが抜けなかったらこれを渡すつもりだったのだろう。

 

 脇差は他のおみあげの中に紛れていた。

 ハチクロ辺りが入れたのかと思っていたけど、説明文を見る限りどう考えてもアオイさんだ。なぜこんなことをしたのだろうか。

 

 僕は考えるのを止めてストレージからマサムネ以外の2振りの刀を取り出した。

 打刀は黒い鞘に収まった一見すると特に特徴がない拵えだ。

 脇差は白い拵えで、飾り紐などで装飾されていて、戦いに使うものというよりは儀礼用のような格式が見える。


 最後にマサムネをストレージから取り出した。


「「「おお……」」」


 現れた長大な威容にその場の全員が息を飲む音が聞こえる。

 白燐鉱によって作られた鞘に収まっていても感じる力の波動が部屋を満たす。


『大太刀・・・・1→


 情報なし』


 ストレージに情報が記載はない。

 僕のステータス閲覧と同じように弾かれたということは、マサムネもまた夜刀さんと同じような存在なのかもしれない。

 

「マサムネ、聞こえる?」

『……お、相棒か?俺っち、確かストレージに入れられて……』

「おかえり、ここは僕の暮らしてる世界だよ」

『マジか!ここが相棒の世界か、部屋の中だとよく分かんねぇな』


 マサムネの認識では入ってすぐに出された感覚らしい。

 どうやらストレージ内では意識がなかったようだ。思ったより待たせることになったから、変わりないようで安心した。

 職員さんたちはマサムネの声を聞いて歓声を上げていた。ファンタジーに大人も子どもも関係ないか。


「元町さん、これらの装備は、持ち歩き出来るんですか?」

「はい、既に今回の試練ではこの世界で行われることが示唆されています。登録証を携帯していれば問題ありません。信也様とマサムネ殿であれば全世界で顔パスでしょうが、ご理解をお願いいたします」


 全世界顔パスって、この人も冗談を言うのかとも思ったが、真面目な顔を崩さないことからどうやら本気の発言みたいだ。

 有名人という実感がいまいちない。




 その後は僕のストレージにある装備や加工品以外の物品を一通りの種類を譲ってお開きとなった。

 特に白燐鉱は僕しか持っていなかったみたいで、是非とも欲しいと言われた。

 精錬された金属があるからそれを渡しておいた。何に使うか分からないけど、性質は鉄に似ているらしいので加工は出来るだろう。

 後日査定して代金をくれるとのことだ。

 善意の品を売りに出して狐人族の人達に申し訳ない気がするが、有効活用してくれることを願おう。

 

 元町さんと一緒に来ていた職員が物品を運びに部屋の外に出たことで、この部屋には三人だけとなった。

 元町さんは一度ドアの外を確認してこちらに向き直った。

 この場所に来て、一番真剣な表情を浮かべた彼に居住まいを正す。


「信也様、私の方で一点お伝えせねばならないことがあります」

「なんでしょうか?」


「今回地球で執り行われる試練は、政府の意向が多分に干渉されます。信也様の意思とは関係なく試練の攻略を強要される可能性が大いにあります。ご注意してください」


「なんとなく予想は出来ますが、何故政府側の人間の元町さんがそのような注意を?」


「我々も一枚岩ではありません、当然思惑は存在します。ただ末端の、現場単位では信也様の意向を妨げるようなことはしたくはありません」


「全ての人間が敵でも味方でもないことを知っておいてほしく、思いこのようなことを申しました」


「ご忠告有難うございます。心に留めておきます」


 その返事に、元町さんは深々と頭を下げた。

 思惑はあるだろうが、それでも彼が誠実でいたいのだという事は分かった。


 そしてこれが宣言とも取れる忠告であるということも。

 きっとこの人は、場合によっては僕に不利になることを、意志に反することを行うことを伝えてきていたのだ。



 僕は元町さんを見送り、車で家へと帰る。

 帰りの車内で父さんが口を開いた。


「きな臭い話を聞かされたな……大丈夫か?」

「確かに色々動きはありそうだけど、今は平気かな。何か起きたわけでもないし」

「そうか。おかしく感じたら言ってこい、多少は俺の方でも動いてみる」

「有難う、父さん」


 それから僕らは口を閉ざした。

 聞かずとも、僕らはお互い同じ懸念を抱いている。

 平穏を望む僕の意思に関わらず、今回の試練を無難にやり過ごせないという懸念を。











『カバーストーリ―:箱庭の素材』



 ほとんどの試練資格者が絶縁の箱庭において、生き残ること、帰還を優先させた。

 そのため物品を満足に得られたものは少ない。

 拠点を狙ったものもいたが、到底手が届くものではなかった。

 

 しかし一部の人間は正しく試練の性質を理解し、多くの物品を入手した。

 彼らは今後の試練でそのアドバンテージを如何に活用するのか。


 自己の利益か。

 自国の安寧か。

 他者の救済か。

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