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果てしなく続く物語の中で  作者: 毛井茂唯
エピソード 絶縁の箱庭 天の頂
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第7話 絶縁の箱庭と大陸周遊2



 妖精族の集落から離れてベリエルと合流して狐人族の集落へ向かう。

 一刻も経たずに到着され、天竜の生物としての出鱈目さを目の当たりにした。

 僕はよくこいつに勝てたな。

 

 岩場が多くベリエルの着地点に困らなかったが、目立たないように集落から死角になる場所に降りてもらった。


 既に顔を覚えてもらっているので、堂々と集落の入り口から入っていく。


「止まれ、何奴だ」


 あれ~?門番の人に止められた。

 メッチャ警戒されている。

 いや、考えてみたら狐人族は多い。

 直接僕の顔を見たわけじゃないなら分からないのも仕方ない。

 

「ここが狐人族の集落と知ってのことか、貴様、まさか人間ではないだろうなっ」


 興奮している門番さんの声に注目が集まり出す。穏便に行きたかったのに。


「僕はこの集落でアオイさんの目を治して、マサムネを引き抜いた人間の信也です。これ証拠です」


 僕は外套を開いて鞘に収まったマサムネを見せる。


『おうおう、なに相棒にガンくれちゃってんだ、てめぇ!何処の集落のもんじゃ、おらぁっ!』


 ガラ悪っ!狐人の集落以外ありえないだろ。

 ノリで喋っているだけだろうけど。


「マ、マサムネ様!?し、失礼しました!ということはこの方が本当に……」

『おめぇ、こいつは天竜殺しで俺っちの担い手でぇっ、頭がたけぇ、頭がたけぇぞ!』


 門番さんは慌てて土下座をして謝ってきたが、僕は必要ないからと制して中に入れてもらう。

 長の家まで駈け出そうとしていたが、何とか止めた。


「マサムネ勘弁してよ……」

『いいや、勘弁ならねぇなあ。この集落の人族ならしっかり礼節を弁えて貰わねぇっといけねぇ。それに後々大恩ある相棒にあの門番が粗相したと分かっちゃあな』


 マサムネなりの親切だったようだ。僕はそれ以上何も言わずにマサムネを撫でた。

 ちなみに天竜殺しについては完全スルーされていた。そもそも天竜死んでないし。


 狐人族の長の屋敷につき、屋敷のお手伝いの人には流石に顔は覚えられていたので、中まで案内してもらえた。

 通された部屋でダンクロウさんを待っていると、襖が開き少女が顔を出していた。


「シンヤ様!お戻りだったのですねっ」

「やあ、アオイさん。その後変わりないかな?」


 尻尾をブンブン振り回しながらのご登場である。遅れてキリカさんも顔を出す。

 同じく尻尾ブンブンである。

 狐の尻尾の意味が犬と逆だったら、僕はショックで寝込むかもしれない。


「し、試練はどうなったのですか?」

「無事突破したよ。ちょっと怪我しちゃったけど、問題なし」

「ああ、よかったです……」


 アオイさんはかっくり腰が抜けたようにその場で女の子座りする。

 キリカさんも安堵しつつも、こちらを咎めるように見詰めてきた。

 

「シンヤ様、アオイ様にちゃんと謝るべきです。お別れの挨拶もせずに集落を出て行かれてしまって、アオイ様は本当にお嘆きになっていたのですよっ」

「それは申し訳なかった。この通りだ、許してほしい」


 僕は素直に頭を下げた。

 僕、知ってるんだ。どんな事情があっても女の子の言う事に真摯に対応することが長生きの秘訣だって。


「い、いえ、私はシンヤ様がご無事であるならばなにもっ。キリカ、シンヤ様を困らせないで!」

「いいえ、シンヤ様にはしっかりと首輪を繋いでおかないと。きっとフラフラとまたいなくなってしまいますよ。アオイさまはそれでいいんですか?」

「ええっ!それは嫌だけど、首輪だなんて……ゴクリ」


 僕をよそに二人がこちらをチラチラ見ながら話し合っている。

 精神衛生上聞かない方がいい気がして、ダンクロウさんが来るのを静かに待った。


 少し待っていると、ダンクロウさんとタツキさんがやってきた。

 ハチクロは用事で集落から離れているようだ。

 ダンクロウさんは部屋にいるアオイさんとキリカさんを一瞥して、頭が痛そうにこめかみを抑えたが、何も言わずに腰かけた。


「7日ぶりですかな、シンヤ殿。御変りのないようで」

「ええ、少し身軽になってしまいましたが」


 僕は外套の上から左肩をポンと叩く。

 ダンクロウさん眉をピクリと上げ、タツキさんは沈痛な面持ちをした。

 アオイさんとキリカさんはよく分かっておらず、僕とダンクロウさんを見比べている。


「それはなんと言っていいか……。試練の方はどうなったので」

「お父様、シンヤ様は見事試練を突破したそうですっ!」

「お前には聞いていないのだが、まあいい。本当ですかな。本当に天竜を討ったので?」

『おいおい、疑うってのかよっ。俺っちが見定めて、俺っちが天竜の首をぶった切った。俺っちこそが天竜を討った証拠でぇ!』


 ババーンと時代劇の効果音が聞こえてきそうな啖呵を切ったマサムネ。


「いや、疑うわけではないが、マサムネ様。あなたの言う事を信じる信じない以前に、あれはそもそも倒せる存在だったのか?」

「天竜を知る身としてはそう思いますよね。僕だってハチクロが天竜を倒したなんて言っても信じられませんし」

「だよなぁ。天竜だぞ、天竜……いや、もう信じるしかあるまい」

「あははは、そうですね。そうしてください」

『初めからそう言っとけばいいのによ。全く』


 7日間の話を大まかに話し終え、出されたお茶を飲み干したところで席を立つ。


「では挨拶も終わりましたので、これにて失礼します」

「ゆっくりとしていかれないのですか?私どもはシンヤ様を歓待いたしますわ」

「いえ、今日中に妖精族の集落に帰ると言ってきてしまったので」

「今日ですか?いくらマサムネ様の担い手とはいえ、流石に半日で妖精族の集落まで戻るのは……」


 キリカさんの疑問はもっともだが、心配には及ばない。


「翼がありますから。心配しないでください。この大陸……いえ、世界でもっとも速い翼です」


 ダンクロウさんはまさかとい顔で僕を見てきたので、ご想像通りだと笑いかけておいた。


「帰ってしまわれるのですか……シンヤ様」


 立ち上がる僕にアオイさんが近付いてくる。外套の端を握られていて進めない。

 僕は屈んでアオイさんに目線を合わせる。


「ああ、今日は無事を伝えに来ただけだから。でもすぐにもう一度やって来るよ。ちょっとした用事があるからね」


「分かりました。名残惜しいですが、お帰りをお待ちしております」


 漸く手を放してくれたので僕は立ち上がり屋敷の外へと向かった。

 ダンクロウさんたちに見送られて集落の外に出る。

 ベリエルは元の位置で待っていたので、また妖精の集落まで運んでもらった。

 凄いぞ、ベリエルっ。便利すぎるぞ、ベリエル!




 妖精族の集落に着いたのは夕方の少し前。

 僕を下した後、ベリエルには一旦住処に帰ってもらった。

 なんとなく離れがたそうな目で見詰められた気がするが、きっと気のせいだろう。

 僕にドラゴンの表情は分からない。

 集落の中からはいい匂いがする。広場に人が集まっていて何やら焼いているようだ。


「あ、シンヤ君お帰り」


 ルーヴィさんが通りがかり、僕に気が付いて近付いてくる。

 手には大きな葉っぱのお皿を何枚も持っていた。


「どうしたんですか、この騒ぎ?」

「それがね、ルグランが鉄塊猪を仕留めてきたの。シンヤ君の携帯食料を使って」

「え、本当に仕留めたんですか……」


 冗談のつもりだったのに。


「見栄っ張りだからね。シンヤ君に食べさせたいというよりは、俺は凄いだろって自慢したいのよ」


 お可愛いこと。

 まあそのおかげで激ウマお肉が食べられるのだから、僕にとっては何の不都合もない。褒めて遣わす。

 

「嬉しそうね」

「あのお肉は美味しいですから。楽しみです」

「シンヤ君の分はたくさん用意してあげるからね」

「えっと……僕は少しルフリアさんに会って来ますのでっ」


 至近距離でニッコリと微笑まれて、僕はそそくさとその場を離れた。

 相変わらずの距離感で照れる。

 ルフリアさん元に向かうのは逃げるための嘘ではない。

 今朝、中途半端になっていた話の続きをするためだ。



 ルフリアさんの家に着けば、何やら香辛料の匂いが漂っていた。


「ルフリアさん、いらっしゃいますか?」

「え、シンヤ様ですか?少々お待ちを……」


 しばらくしてエプロンのような前掛けをしたルフリアさんが現れる。

 自分の体を見て回ったり体の埃を叩くような動作をしたり、手で髪をすかしたりしている。

 別に変なところはないけど、汚れるような作業でもしていたのだろうか。

 

「いかがなさいましたか、突然?」

「今朝有耶無耶になったことをもう一度言うために来ました」

「えっと……私がシンヤ様の所有物になる話でしたよね。勿論、宜し……」

「いや、そんな話してないですよ。それ前に断った話です。そうではなく拠点を譲るという話です」


 そういうとハッと思い至ったような顔をした後、神妙な様子で首を横に振った。


「いただけません。それはシンヤ様が命を賭して勝ち得たものです。私たち妖精族がそれを受け取るなど、出来るはずもありません。それにシンヤ様にはそれが必要なものではないのですか?あなたの世界では資源が枯渇しているのですよね」


 すべての事情を話しているから、ルフリアさんは当然そこに思い至る。


「だからこそです。僕が拠点の保有権を持ったまま試練を終えたら、その時点でこの大陸の資源は全て僕のストレージに納まってしまいます。具体的に資源が何を指すのか僕には分かりませんが、皆さんの多大な不利益になることだけは分かります」


 ルフリアさんが迷うようなそぶりを見せる。

 彼女もこの大陸で生きるものの一人。重大さは分かっているだろう。


「僕はこの大陸で出会った人たちが不幸になるのに、自分たちだけが幸福にいられるならなんて開き直れません。それに試練はまだ始まったばかりです。誰かから奪わなくても、きっと助かるすべはあるはずです」


「シンヤ様……」


「僕はこの大陸の全ての拠点を、正しい相手に渡すようなことは出来ません。だからここの拠点だけでなく、全ての拠点の保有権を信頼できるルフリアさんに託していきたい。迷惑になるのは分かっていますが、僕はあなた以上の適任者を知らない」


 僕は頭を深く下げて言葉を待った。

 これが押し付けなのは分かっているが、僕には時間がない。

 信頼できる人格、そして強さと長き寿命を持つ彼女だけが適任だった。

 

 長い沈黙の末、肩に手を置かれた。


「シンヤ様はずるい方です。そのように頼まれたら私は断れません。分かりました、拠点の保有権はすべて私が預かります。顔を上げてください」


「有難うございま、す……」


 顔を上げた先で、ルフリアさんは涙を流していて言葉に詰まる。


「あなたの心は真っ白です。それは清らかであり、正しくもあり、寂しくもあります。あなたの白は元の色を失ったが故の白なのですから……」


「ルフリアさん?」


「いつの日か、あなたの心が色付いたときにお会いしたいです。叶うなら、私は傍で見守りたいのですが、あなたは許してくれないようですから」


「……」


「申し訳ございません、読心の制御が乱れました。どうもあなたを前にすると自制が緩くなってしまうようです。ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません」


「いえ、構いませんよ。でも恥ずかしいのであんまり見ないでくださいね」


 ルフリアさんは僕の心の内を見て涙を流したのだろうか。

 その言葉に覚えがあった。

 少し違うが、二人の子どもが言っていた言葉に似ている。

 あの二人も涙を流していた。


「努力いたします、シンヤ様」


 ルフリアさんは涙を拭い、少しぎこちない微笑みを浮かべた。

 



 夕食前に拠点No.ELD_00001からNo.ELD_00108全ての拠点を譲渡した。

 これで僕のステータスには拠点が一つもない。

 その上で妖精族の集落の拠点であるNo.ELD_00013の使用を許可して貰う。

 

 僕はルフリアさんに伴われて拠点を訪れ、台座に触れ確認を行った。


『拠点No.ELD_00013

 拠点所有者:ルフリア

 拠点使用許可:青野信也

 拠点管理メニュー:使用可

 リソース交換:使用可

 帰還:使用不可(規定時間未達成)』


「うん、使用可になっています。これで大丈夫ですね」

「私の方でも拠点の管理メニューの使用が可能になっています。これで集落の皆の暮らしが良い方向に向かうことでしょう。これもシンヤ様の御蔭です」

「いえいえ、僕もニアの宝珠がなければ危なかったですから。それに情報がなければ、支援がなければ天竜に挑むことすら叶いませんでした。お互いさまという事でおしまいにしましょう」


 漸く肩の荷が下りた感じだ。後は規定時間まで適当に過ごして帰るだけ。


 ……あれ、リソース交換使えるという事は、僕の体は治るんじゃないか?

 僕はリソース交換を使用しポーションを一つ選択する。

 足元が光り、コロリとポーションが転がる。


「それはポーションですか?まさかリソース交換で得られるものだとは」

「え、もしかしてルフリアも使えるんですか?」

「はい、使えるみたいです。リソースがないので交換は出来ませんが、メニューは開けますね……昔の人間はどのように利用していたのでしょうか」


 僕は悩まし気にリソース交換のリストを見ているルフリアから目を逸らして、早く治してしまいたいので上着を脱いで服を脱いで、ポーションを左半身に一振りした。

 治ってはいるが、内臓も焼かれたり消し飛ばされたりしたので、すべては使い切らずに半分は経口で飲む。

 

 わき腹や左肩から先が逆再生するかのように治り始め、腕が生えてくる。

 失われたものが本来あるべき場所に帰ってきた。歪に治っていた部分も痕が残らず綺麗に生え変わっている。

 

 出鱈目だよ、ポーション先輩。

 治るかどうか少し疑った僕を許してください。

 紛らわしいのでエリクサーに改名したらどうでしょうか。


「あ、相変わらず凄まじい効能ですね……」


 ルフリアさんは穴が開くほど僕の体を見詰めてその効果を確かめている。

 薬師だしポーションの効果が気になるのだろう。僕としては少し恥ずかしい。

 手をグーパーグーパーして振り回してみても違和感がない。

 僕はさっさと上着を着た。

 

「あっ……」

「さて、戻りましょうか。お肉が待っていますよ。お肉」

「ふふ、そうですね。主役はシンヤ様ですから遅れるわけには行きませんね」


 何やら残念そうな声が漏れていたが、僕は話を逸らして拠点を離れた。

 まあお肉が気になるのは本当だ。ルグランの奢りで腹一杯食べるとしよう。


『うまっ、うまっ、うまっ!』


 目の前でテンマが僕のお肉に噛り付いている。凄い勢いだ。

 いつの間にこんなに食いしん坊になったのだろうか。


 テンマは僕に配膳された肉の匂いで目が覚めた。

 起き抜けで食欲全開である。

 僕も負けていられないのでお肉に噛り付く。血だ、血が足りねぇ。


「うまっ、うまっ、うまっ!」

「たくさん食べてね。私が作ったものもあるわよ」


 右隣に座っているルーヴィさんから何かを差し出されて反射的に口に入れる。


「……なんでしょうこれ?ぷよぷよとした食感で甘いですね」

「木の実を煮て、そのゆで汁を水分がなくなるまで煮込んで練って作るものよ。食感が面白いでしょ」

「はい、美味しです。素朴で結構好きな味です」

「こちらもどうですか?」


 また差し出されたものをパクリと食べる。

 今度は左隣のルフリアさんから食べさせられた。

 味が衝撃的すぎてそのまま顔に吐き出しそうになったが、咄嗟に歯を噛み締めて耐えた。


「……な、なんですか、これ?」

「今日私が調合した香辛料で味付けしたお肉です。体に良いものを配合したんですが、どうですか?」


 甘くて苦くて爽やかで辛くて臭くて食べ物の冒涜みたいな味なんだけど。

 これなら黒焦げの肉の方がまだマシだって、正直に言っていいのかな。

 嘘が通じないし、どちらにしろバレるから同じだけど。


「お、なんだシンヤ。珍しいもの食ってるじゃねぇか。うん、旨い」


 ルグランが僕の目の前に現れ、皿からルーヴィさんの作ったぷよぷよを強奪する。


「ちょっと、それはシンヤ君に作ったのよ。シッシッ」

「調子が戻ったかと思ったらこれか。別にお前の料理なんて選ばなくても、もっと旨そうなものがあるからいいけどな」


 そう言って隣の皿のものを手掴みで口に運んだ。


「うん……うん?ッグ、ウオエエエエェ、ペッ、ペッ、な、なんだこりゃ!?誰が作ったんだよ、こんな食べ物を冒涜するような料理は!クソ不味いにも程があるだろうっ!!」


 しっかりと咀嚼した後に吐き出して荒ぶっている。

 作った本人の前で。

 気持ちは分かるけど、タイミングが悪かった。

 

「え、そ、そんなに美味しくなかったんですか?」

「ルフリア様、これを作った奴はシンヤに相当な恨みがあるやつです。ここまで不味いものを手の届く範囲に置くなんて」


 料理を作った本人は顔色を青くさせて、どんよりとしたオーラを出している。

 もうやめて、ルフリアさんのライフはゼロよ。

 いいじゃない、欠点の一つや二つ。

 プルプルと震えるルフリアさんを尻目に、僕は彼女の作ってくれた名状しがたい料理を食べた。

 ……まあ、ゲロよりはマシだ。


「シンヤ様、そのようなものを口にされなくとも……」

「味はちょっと残念なのかもしれないですけど、僕は嬉しいですよ。ルフリアさんの料理が食べられて。僕のために誰かがご飯を作ってくれるだけで嬉しいですから」

「シンヤ様……」


 きっちりと食べきって、お茶で口をさっぱりさせる。

 ルフリアさんは僕をチラチラ見つつ、せっせと新しい料理を見繕って渡してくる。

 それもルフリアさんが味付けしたものらしいが、口にしてみるとどれも美味しかった。

 どうやら危険物はあれだけだったようだ。多分僕の体を気遣って健康以外の一切を置き去りにしたのだろう。

 

 僕らのやり取りを気に留めず、周りの料理を食べるテンマを見てホッと安堵の息を吐く。

 折角目覚めたのに、テンマの口にでも入っていたら大変だからね。歯を食いしばって完食した甲斐があった。

 こんなもの食べたらまた休眠に入ってしまう。


「え?……まさかあの料理……」

「あんたはシンヤ君を100分の1でも見習った方がいいわよ。まあ、見習ったとことでどうにもならないでしょうけど」



 たらふく料理を食べてお腹いっぱいになったところで、同じくお腹いっぱいになって眠そうな子ども二人がやってきた。

 ルカとルリは定位置とばかりに僕の膝に乗ってきた。

 そういえば無事に帰ってきたら性別を聞こうと思っていたんだった。


「ルカとルリは男の子ですか?女の子ですか?子どもだし、中性的でよく分からなくて」

「二人は女の子よ」

「あ、そうなんですね。じゃあ、あんまり僕にベタベタするのは良くないですね」

「シンヤ君が嫌じゃなければ別に気にする必要はないわよ」


 ルーヴィさんが何でもなさそうに答える。

 そういうものなのか。

 妖精族の男女感覚が分からない。

 

 膝に乗ったまま僕の懐でスースーと寝息を立てる二人の将来が少し心配になった。


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