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果てしなく続く物語の中で  作者: 毛井茂唯
エピソード 絶縁の箱庭 天の頂
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第3話 絶縁の箱庭と天竜



 狐人族の集落から6日の道程。

 かつて見た、絶望の頂へと辿り着いた。


 時間の許す限り修練を行った。僕もテンマもマサムネも三人で強くなった。


 それでも頂は遥か遠い。

 生命の気配のない岩ばかりの山肌の天辺。

 天竜が首を持ち上げ、こちらを見詰める。

 絡みつく重圧の中、山の中腹まで歩みを進めた。

 大きく開けた場所まで辿り着いたとき、変化は起きた。


『何の用だ。人間よ』


 重圧の籠った声が響く。空気ごと体が震える。

 離れていても、脳に刻み込まれるように声が響く。

 天竜は悠然としているが、僕には何の余裕もない。

 気付けば言葉を飾らないばかりか、必要な事だけを端的に告げていた。


「あなたにお願いがあって来ました。僕に拠点の一時的な使用権をお与えてください」


『断る。何も持たないお前たちの話を何故我が聞かねばならぬ。立ち去れ』


 高レベルの読心を持っているからか、僕の物言いに対して余計な問答を挟むことなく答えが返って来た。


 立ち去ることを許してくれるのか。

 それは弱いが故に歯牙に掛けない強者の在り方なのだろう。


「強さを示せば拠点の使用権を与えていただけますか?」


『強さとはなんだ。どう示す。我は我より強きものを知らぬ。我以外の全てが弱き者。我を死に至らしめるものこそが唯一の強き者』


「力でもってあなたから、奪う。それ以外ありませんか」


『ない』


 交渉は初めから決裂している。

 交渉ですならない。

 事実確認が出来ただけだ。

 

『相棒、行こうぜ』


『主様、どこまでも共に』


 二人の声に応えるようにマサムネを抜く。

 テンマはひらりと僕の前に舞った。

 答えは初めから、一つしか用意されていなかった。


「戦おう。天竜を倒す」



『オオオオオオオオッ!!』

「はあああああああっ!!」


 こちらが戦闘の意思を示した瞬間、目の前に咆哮と共に暴風が巻き起こり、壁のように岩を削り飛ばしながら向かってくる。

 裂帛の気合と共に白色の力を斬撃と共に放ち、風を分かつ。

 無風となった場所に体を潜り込ませ、天竜へと駆ける。

 崩れる岩の足場を蹴るように飛び、一足で数十メートルの距離を詰めていく。

 

『いっぱいの冷たい氷の氷柱!』


 テンマの手から数十にもなる鋭く巨大な氷の氷柱が放たれ天竜を襲う。

 だが氷が届く前に風の壁に阻まれ全て粉々に砕け散る。

 それでいい、別にダメージが与えられるなんて思っていない。わずかでも牽制できれば。


『相棒っ!かますぜっ!!』


 マサムネからの力の供給が爆発的に増し、体から白い炎が上がった。

 身体能力と刀の白色の力が跳ね上がる。

 踏み込み、体の軸に沿って力を伝達させた。


 一歩間違えば肉体を崩壊させかねない循環を斬撃に込める。目の前の天竜の腕へと。

 刃が触れた瞬間、火花のように白が弾ける。

 あまりにも重い手応え。木刀で山のように巨大な鉄の塊でも叩いたかのようだ。


『くそがっ、あの野郎、俺っちと相棒の渾身の刃で切れねえなんてっ!』


 傷が付いたかどうかすら怪しい。

 今のは鍛錬の末の最高の一撃だった。

 それすら通じないのか。

 

 すれ違うように駆け抜け、天竜の足元の後ろへと向かう。

 早く死角をとらなくては攻撃されてすり潰される。


『あっちっちの光線、最大出力なのです!!』


 テンマが翼竜を切り裂いた光線を天竜の羽に向ける。

 あの時より明らかに巨大な光の線が羽に当たったが、羽をよけるように光線が幾条にもなって弾ける。


『ほう、それなりの術は使えるようだな』


 天竜は声と共に目を僕に向けた。それだけの動作で周囲の熱量が上がるのを感じる。

 不味い!


『テンマちゃん、切り換えろ!』

『っつ!?守りの結界よ!』


 体が青い守護の光に包まれた瞬間、爆炎が襲い掛かる。

 火山のように足元から吹き上がり、体を燃やす。

 テンマの守護のおかげで致命的なダメージこそ負わないが、僅かなタイムラグで熱に晒され皮膚が爛れていた。

 

 僕は炎から逃げるように天竜の尻尾側に飛び上がり、爆炎の風に乗った。


『疾く守れっ!』


 咄嗟にテンマの声が響く。

 飛んだ先で目の前で波打つように尻尾が動き、無防備な体勢のまま打ち据えられ、体に纏っていた青い光が弾け飛び、高々と空へ飛ばされる。


 余りの衝撃に意識が僅かに暗転したが、あれだけの一撃を受けてなお、骨に異常はない。

 瞬時に強固な守護を張り直した判断能力のおかげだ。


 空中で小さくなっていく天竜を見て、寒気に襲われる。

 自分の死を直感した寒気。

 天竜の喉から光が漏れ出している。ゆっくりとこちらに向けて口を開いている。

 極大のエネルギーが渦巻き、空間が軋む。

 正しく無限を冠するものの一撃。

 

『主様、もう一度守りを』

『いや、あれは防げない。マサムネ、頼む』

『ああ、やるしかねぇ、遠慮はすんなよ。でもって無理も無茶もほどほどになっ』


 天竜の咢から竜の息吹と呼ばれる巨大な紫紺の光が放たれる。

 景色がその光に塗り潰され、まるで世界が書き換わったかのようだ。

 進む先、その全てを消し飛ばす破滅の光。防ぐこと躱すことを許されはしない。

 

 マサムネからの力の供給。

 鍛錬では行わなかった僕がコントロールできる危険域を置き去りにしてなお取り込む。

 空に向けて放射状に吹き荒れる斬撃を放ち、射角から僅かにずれるが、全ては避けきれない。


『ああああっ!口を閉じろ、このトカゲ野郎!』


 口悪っ、絶対マサムネの影響だよ!

 テンマの癒し呪う声と共に呪い手の発動、不可視の力が天竜の顔を覆い、何かしらの呪いを発動させた。

 結果、天竜は僅かに仰け反り下顎を上げ、射角がさらに上へと変わり、なんとか避け切る。

 目の前を通り過ぎる極光に冷や汗を流しつつ、余波に巻かれながら空中で体勢を整えた。


 地面に激突する寸前に白色の力を地面へと叩き込み、反動で勢いを殺す。

 数秒完全に動きを止めてしまったが、天竜からの追撃はない。

 ゆったりとこちらに視線を寄こしている。

 

『以前滅ぼした時より、わずかばかり人間も強くなったようだな』

「それはどうも。僕はあなたの滅ぼした人間とは別物だから比べられても困るけどね」

『どうでもよい。少しはまともに相手をしてやろう』


 天竜の中に渦巻いていた力が格段に大きく膨れ上がる。

 地面が揺れ、苦しい圧迫感が襲う。

 天竜の体に紫電が走り、風が逆巻く。

 白色の力を纏っていなければ、存在ごと消し飛ばされかねないほどの力の波動。


 おいおい、今までのは何だよ。羽虫を払う程度とか言わないよね。

 いや、本人からしたらそれくらいの力加減だったのだ。この竜が弱者に見栄を張る必要なんて何一つない。

 会話のタイミングを利用してテンマが癒し手で傷や火傷を治療してくれる。

 

「強い。悲しくなるくらいの強さだ。泣けてくるよ」

『諦めて逃げ帰るか?止めはせん』


 僕の抱く天竜ベリエルとイメージと違うな。

 戦いを挑んできた人間を見逃すなんて。


「あなたは過去にこの大陸の人間を滅ぼしたと聞いた。どうしてそんなことをしたの?」

『向かってくるから滅ぼした。ただそれだけだ。何度も向かってこられて煩わしくなり、全て滅ぼした。随分と静かになってしまったが、また人族が住み着いているようだな』


「この大陸で暮らす人族は人間から迫害された人たちだ。彼らのことはどう思っている?」

『何も。好きに生きればよい』


「拠点を使用する権利を彼らに与えれば、彼らはもっと豊かに暮らせる。少しでもあなたに思慮があるなら考えてみてくれないか」


『煩わしいだけだ。何故弱き者のために動かねばならぬ。お前は理解していないのだろう、弱き者は弱いゆえに、直ぐに死に、直ぐ生まれる。我が多少関わったとして、次も、次も、その次も、古い関係が途切れ、新たな関係を築き続けることの虚しさを』


「……そうか」


 天竜にとって戦いとは人との関わりだった。

 だけど弱い相手は簡単に死ぬ。

 

 戦い、病気、寿命。天竜は煩わしくなりその元凶を全て大陸から一掃した。

 それが真相なのだろうか。移り住んできた人族が今まで天竜と関わらなかったから生きることを許されている。

 

 もしこの先発展を望めば、人間族が大陸を支配しようと侵略をしてくれば、同じことが繰り返されるのだろうか。

 

『回復は済んだか?』

「ああ、待たせたね」


 天竜は僕の状態を分かっていて回復を待っていた。

 つくづく凶悪な見かけと合わない穏やかな竜だ。倒し辛くなるじゃないか。



「第二ラウンドを始めようか」









『カバーストーリー:技能 〇〇の理』



 自然現象そのものに干渉し操るノーマル特殊技能。

 場に存在する力を操る技能であり、技能によって限定された対象のみ操ることが出来る。

 生命を使用するが、生命術と異なり存在する力を操ることにのみに注力しているので、燃費は非常に良い。


 生命術と併用することで、規模や汎用性が大きく上昇する。

 中には自然現象の枠組みに無い理も存在している。


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