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果てしなく続く物語の中で  作者: 毛井茂唯
エピソード 絶縁の箱庭 狐人族の守り刀
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第5話 絶縁の箱庭と担い手



 昔々あるところに喋る刀があったとさ。


 ずっとずっと洞窟の奥深くに、刺さったまま一人寂しく泣いていました。


 ある日、狐人族というものたちが喋る刀の前に現れました。


 喋る刀は寂しさを埋めるように狐人族と語らいました。


 故郷を追われた狐人族に、喋る刀は知る限りの知恵を、技術を与えました。


 狐人族は喋る刀のお陰で、追われる以前の暮らしより、ずっと豊かな生活が送れるようになりました。


 狐人族は喋る刀にお礼をしたいと申し出ました。


 喋る刀はいいました。


『俺っちを抜ける奴を連れてきてくれ。こんな辛気臭い洞窟にいたら腐っちまうよ』


 それからたくさんの人が喋る刀を抜こうとしましたが、抜けませんでした。


 喋る刀はいつまでも、いつまでも待ち続けました。


 いつか自分を引き抜いてくれるものが現れるその日を。


 かつての主と共にあった時のように戦えるその日を。




『これが俺っちの話さ。つまんねえ刀の話さ。大方ダンクロウにそそのかされたんだろ?もう俺っちのことは気にしなくてもいいのによ』


「そういうわけではない、マサムネ様。彼はこの集落の一番の武器を望んだ。マサムネ様を紹介しないのは有り得ないだろう」

『そう言ってくれるのは有難いけどよ。そもそも使えないもの紹介されも困るだろ。なあ?』

「え、いや、普通に感動してるよ。喋る刀なんて僕の故郷じゃいなかったし、お話しできただけでも、ここに来てよかった」

『良くできたガキだねぇ。こんな老いぼれに気を使って。俺っち涙が出ちまうよ……目はねえけどな。がはははははっ』


 これ、笑うところ?タイミングを逃して沈黙を返してしまった。

 まあ、マサムネ様は気にした様子はない。

 二人も苦笑いしているだけでウケてはいない。


「とりあえずシンヤ殿、試してくれるか?」

『おう、遠慮はいらねえ。一思いにやってくれ!』


 愉快な刀だな。

 僕はマサムネ様の柄を握り、力を込めた。

 

 酷く手に馴染む。懐かしいとさえ思う。

 僕が最後まで握ったボロボロな刀を思い出す。

 あいつも自己主張が激しかったな。

 喋りこそしないが、何となく意思が宿っているような感覚があった。

 妄想と言われればそれまでだけど、寄り添われ、支えられているかのような感覚を覚えていた。

 

 全力を込めてマサムネ様を抜こうとしたが、まるで根が張った巨木を地面から引っこ抜こうとでもしているかのように動かない。

 いや、これ実際に根が張ってないか?握ってみて気付いたが、この刀と大地の力が循環している。


『テンマ、マサムネ様の力がどうなってるか分かる?』

『うーん、大きすぎてよく分からないのです。全然底が見えないのです?天竜と似ているような……違うような』


 ステータス閲覧使ってみるか。


『対象の情報閲覧にはステータス閲覧LVが足りません』


 弾かれた!どういうカテゴリーで弾かれたのだろうか。

 夜刀さんのように格が高いのか、罠のようにLV的にものが適用対象外なのか。


『力のコントロールはどうかな?』

『無理です。すいません……』

 

 刀を握りしめたままじっとしている僕を、二人が真剣に見つめている。


『もういいかい?抜けねえだろ、俺っち。まあ、ダンクロウも悪気があったわけじゃねえんだ、許してやってくれ』


 手にし続けた、化け物を倒し続けた僕の唯一の刀。

 戦いが終わり、最後は捨てようかどうか迷っていたら、その刀は自ら形を変えて、僕はそれを故郷に連れ帰った。


 握る時間が長くなるほど不思議な感覚に包まれる。あの刀の事を思い出してしまう。

 そういえば大きな戦争の前、もう一振り、確かに僕は刀を持っていた。

 戦いの最中に永遠に失われた一振り。

 その姿がどのようなものだったのか、どんな力を持っていたのか、僕はもう思い出せない。

 余りにも度重なる戦争の繰り返しで死に続け、摩耗し、忘我によって手元から消えていた。

 

 時間も場所も明らかに違う。マサムネ様は失われた刀だったなんて話は有り得ない。

 だけど、手放してしまった刀に意思があったのなら、僕の最後の刀と同じであるのなら、寂しいと思ったのだろうか。

 共に戦い続けたいと思っていたのだろうか。

 これは感傷かもしれないけど、マサムネ様も似た思いを持ち続けているなら、この場所で一人は寂し過ぎる。


 僕は握りしめた手に意識を集中する。

 かつて、切り裂くという概念を宿した特殊な刀で化け物を倒し続けた。

 刀の力を引き出し、コントロールすることでそれを成した。

 何度この身が滅びようとも、刀の力を扱う技術は僕の魂に刻まれ続けている。

 それだけは、世界の誰にも負けない自信がある。


『お、お、な、なんだこれ!?』

「マサムネ様!?」

「おいおい、シンヤっ、大丈夫なのかこれ!」


 地面が微細に揺れ、マサムネ様から漏れ出る光が徐々に大きくなる。

 根を生やした力の流れをコントロールし、マサムネ様に供給させる。

 全部吸収しきれば根は細くなり、引き抜けるはずだ。

 マサムネ様の中の力をコントロールするには僕の生命が消費されるようだ。

 血が抜けるような倦怠感に襲われ、意識が薄くなる。

 だけど諦めず、気力を振り絞り大地に存在する全ての力を集め続けた。

 

 マサムネ様が眩しく光り輝く。

 僕の体は白い炎が灯り、発火する。

 熱くはない。それどころか心地いい熱だ。


『心は熱く、頭はクールに、なのです』


 薄れゆく意識の中に声が聞こえる。テンマのようで、どこか違う、遠い声。

 前にもこんな声を聞いたことが……あったような気がする。

 

 今は気にしている場合じゃない、力のコントロールを誤れば大惨事だ。

 それほどの力がマサムネ様に集まっていた。


 あと少しだ。

 僕の全てを燃えがらせ、手に力を集中させる。



 シィンと金属をこする音と共に、それは抜けた。


 僕の身長ほどはあろうかという長大で肉厚の刀身。

 反り返り、波打つ波紋を描く白銀の刀。

 吹きこぼれるほどの白の光。

 

 完全に拘束を解いたことで、白い光の性質が理解できる。

 マサムネ様はこの白い何かを増幅する力を持っているようだ。

 無限とは違う、燃え光る太陽の様な脈動を感じる。

 力が流れ込んでくるようで、疲労感が消え失せていた。

 

『嘘だろ、おい……まさか、今になって……俺っちを抜けるものが現れるなんて……』


「いい刀だ。これなら天竜に届きそうだ」


『は?天竜?マジで言ってんのか!?』


「そうだよ。残念ながら大マジだ。起き抜けで悪いけど、マサムネ様には天竜退治に付き合ってもらう。勿論拒否権はなしで」


『おいおい、俺っちの新しい担い手の相手は天竜かよっ!たまんねぇ、たまんねぇなあぁ!!』




 その日の夜はまた宴だった。

 いい加減にしてくれ。肝臓大事にしようよ。

 とも言いたいが、マサムネは(様付けは気持ち悪いから止めろと言われた)狐人族の大恩刃だ。

 その彼の長年の望みがかなったのだから喜ぶなという方が無理だろう。

 

 上座に飾られたマサムネの元には色々な人が来て話かけている。

 必然、隣の僕も対応に追われて心の底から疲れる。

 マサムネはずっとハイテンションで上機嫌だけど。


『いや~一目見たときから俺っちには分かったね。あ、こいつ抜くは、俺っち今日で抜けちゃうわってよ!』

「嘘つけ、完全に諦めてただろう。そこ、信じない!」


『そこで相棒がこう言ったんだ「おめ、ちょっ、抜くぞ、おめぇ!」ってよ!』

「言ってないよ。マサムネの中で僕はどんなキャラだよ……」


 そんなこんなで強制的に漫才のツッコミ役をやらされ続けてご飯すら食べる暇がない。

 完全に酔っぱらっているダンクロウさんもハチクロも、男衆に僕の刀を抜くシーンを何度も実演して大盛り上がりしている。

 回数を重ねるごとに大げさになっていくのは止めるべきだろうか。


 反面この場に相応しくない暗い雰囲気もある。

 タツキさんを含む女性たちだ。

 否応なく天竜と戦う話を聞いてしまっている。

 男共は偉業に挑むことへの憧れのような感情が見えるが、女性は現実主義なのか僕が自殺をしに行くようにしか思えないのだろう。

 間違っていない。あれに挑むのは正しく自殺だ。



 夜は更けり、酔っ払いが寝入るまで僕も付き合わされて翌日の朝を迎えた。

 テンマは何処か不貞腐れたように、洞窟から帰ってきてから終始無言だったけど、なにかあったのかな。



 今日もダンクロウ一家と朝食を頂き、食後の茶を飲む。

 僕は一息ついてから提案した。


「武器も手に入りましたので、旅の準備が出来たらこの集落を出ようと思います」

「え?」

「シンヤ殿、それは些か性急ではないか?武器を手に入れた昨日の今日だぞ」

「僕には制限時間がありますので、悠長には出来ません」

『おう、俺っちも準備万端だぜ』


 マサムネは職人が徹夜して仕上げたのか立派な拵えに代わっていた。

 白燐鉱で作られた金属の拵えは重厚でいて、気品を漂わせている。

 ついでというわけではないが、僕の服も一新している。

 マントとジャージは一部結晶になって砕けてしまったため、和装の戦装束を一式送られた。

 軽くて強靭な黒い繊維で作られた逸品だ。こことは別の西の集落で作られたものを僕の体に合わせてもらった。

 

「親父、気持ちは分かるがシンヤの好きにさせてやろう」


 ハチクロは僕を止めないようだ。

 何だかんだで一番言葉を交わしているし、僕の頑なさを心得ているのだろう。


「ううむ…だがなあ……」


 ダンクロウさんは難しい顔をして押し黙る。

 ダンクロウさんの悩むようなことあっただろうか。特に覚えはない。


「あなた、無理に引き留める者ではありませんわ」


 タツキさんに言われて悩みつつも最終的には頷いた。

 アオイさんは一言も話さずに顔を下に向けていた。

 僕はそれに気付きながらも何も言わなかった。



 基本的な旅の道具は妖精族の里で貰ったものがあるのでそれを使うとして、食料品は残りの日数分食べられるように購入した。

 勿論、天竜を倒して妖精族の里まで行けるくらいの量だ。

 

 お店の人はダンクロウさんに言付かっていたようで、無償で提供された。

 代価に紙やペン、鉄塊猪の狩り用に携帯食料を売り渡そうと考えていたが、受け取ってくれなかった。

 僕としても消えるかもしれないものを渡すのは気が引けたので、助かったことには助かった。


 準備は時間がかかり結局今日集落を出るのは止めておいた。

 代わりにマサムネを使い熟すための鍛錬に時間を充てる。

 マサムネの刀身は長く取り回しが難しいが、相手が相手なので、対人戦でもない限りあまり関係がない。


 マサムネの最大の特徴は白色の力だ。

 一体何の力なのか分からないし最初は難儀したが、使うほど馴染んでくる。

 

 この力は僕にも供給できるようで、その力を使えば身体能力が上昇し、相当な重量を誇るマサムネを羽のように軽く扱うことが出来る。

 反面、調子に乗って加減を間違うと、肉体を痛めつけるようだ。

 一時間ほどで両腕が使い物にならなくなった。それ以外も全身そこそこ痛い。

 今は休憩がてらテンマの癒し手で治してもらっている。


 使い始めは、のたうち回りたくなるほどの痛みが全身を襲ってたから、今のように冷や汗をかきつつも刀を振り回せるのは進歩した方だろう。


『………』

『すまねぇ、相棒。調子に乗って流し込み過ぎちまったみてぇだ』

『気にすることないさ。体に入ってきた力をコントロールしているのは僕だから、僕の制御が甘かった。旅をしながら慣れるしかないね』


 マサムネの力は底が見えないから、出力については器である僕次第だ。

 強大な相手と戦う以上、コントロールできる力の大きさを無理にでも上げていかなくてはいけない。

 痛たたたっ!→慣れる→出力上げる→痛たたたっ!→慣れる→出力上げる。まさに無限ループ。

 人間の肉体だし、何処かで出力の限界は来るだろうけど、それまでは痛みと慣れのイタチごっこを味わい続けないといけない。


『………』

『なあ相棒、テンマちゃんはどうして黙ってるんだ?』

『よく分からない。緊張してるのかな?』


 テンマとマサムネはお互いを認識している。

 マサムネは見えていないが、テンマが会話の信号をマサムネに対して送ると、お互い思念で会話が出来るようになった。


 二人の仲はいいのか悪いのか分からない。

 そもそもテンマは僕以外とコミュニケーションをとるのが初めてだから戸惑っているだけかもしれない。


『テンマちゃんよぉ、これから天竜に挑むもの同士、もちっと腹を割らねえか?おっちゃんに悪いところがあったら言ってくれていいからよお』


 流石生き字引、大人な対応である。言葉遣いはあれだけど。

 僕は二人のやりとりを見守ることにした。


『……主様の相棒はわたくしなのです』

『そりゃあんたも相棒だろうけど、俺っちも相棒だぜ?』

『主様と一緒はわたくしだけなのですっ』

『ええ~~そういうことかぁ。どうしたもんかねぇ、相棒?』


 ごめん、僕には分からなかったんだけど。

 マサムネにはテンマの不機嫌の理由が今ので分かったらしい。


『わかんねぇのか。テンマちゃんは俺っちに相棒を盗られたと思って焼餅を焼いてんのよ。可愛いもんだねぇ』

『そんなのじゃないのです!わたくしと主様が二人で最強なのです!相棒はわたくしだけでじゅーぶんなのですっ!』

『いやいや、天竜にそりゃねえよ。あれはテンマちゃんじゃ勝てねえよ』

『わたくしが倒します!わたくしが主様を守ります!』

『かぁー!処置がねえな。お手上げだ』

『ふんっ』


 僕の頭の中で起こる喧嘩。

 この二人、相性が悪すぎだろ。

 マサムネが言っていることは正しいが、正しいからこそ譲らない部分は譲らない。

 テンマはそもそも喧嘩腰。


 二人に任せたら仲直りなんてしないだろう。

 落ち着いたころにテンマと二人で話して、仲直りのきっかけを掴むしかない。

 僕は腕が治ったのを確認して二人を置いて、立て掛けてあった木刀を手に取った。


 昔から使い続けた化け物を倒すための剣を振るう。

 我流なのか、誰かから教わったのか、それすら分からなくなった剣技。

 ある意味、唯一残り続けている記憶と言えるかもしれない。


 1時間は振り続けただろうか。滝のように汗をかき、服は土砂降りにあったかのように濡れている。

 構えを解けば、離れた位置に何人かの狐人がいた。いつの間にか見物人がいたようだ。

 そのうちの二人が僕に近付いてくる。


「シンヤ様、こちらを」

「どうぞ使ってください」

「アオイさん、キリカさん、ありがとう」


 アオイさんとキリカさんがやってきて、僕に手ぬぐいと水で満たされた陶器の器をくれる。

 汗をゴシゴシと拭って器の水を飲み干した。

 井戸で汲んだばかりなのか、冷たくて澄んだ水が乾いた体に沁み込む。


「剣の事は分かりませんけど、シンヤ様の剣技はとても洗練されているように見えました。無駄なものがなく、髪の毛の一本から、剣の切っ先まで全ての動きがシンヤ様の思うように動いているようで」

「ふふ、そんなに褒められたのは初めてかもね」


 アオイさんは対面しているとき、常に瞳の中に僕を入れている。

 黒曜石のような瞳に、ずっと深い場所を覗き込まれているかのようだった。


「私は天竜を知りません。大人も強いとは言いますが、本当にその強さが分かっているように感じません。お父さまは分かっているようですけど、教えてはくれません」

「知っている人でも言葉では表現しにくいしね。実際に見てみないと本当の意味では理解できない。僕もあれをどういえばいいのか分からない」


 何度挑んでも必ず死ぬくらいには強いと思うが、そんなことは言わない。


「試練とは何なのですか?それは必要な事なのですか?」


 アオイさんに詳しく伝えるわけにもいかない。伝えても何かが変わるわけでもない。

 この子が僕に必要もない恩を感じていて、何もしなければその恩人が十数日後に死ぬなんて話、聞きたくもないし聞かせたくもないだろう。


「必要なことだよ。もっと大人になって、いつか妖精族の集落を訪れる機会があったら長のルフリアさんに聞いて見るといい。僕が何故試練に挑むことになったのか。それがアオイさんの納得いく理由かどうか僕には分からないけど」


「今の私には教えてくださらないのですか?」

「ああ、まだ早い」

「………」


 アオイさんは、何一つ納得していないだろう。

 キリカさんは何も言わずに不安そうに僕たちの話を聞いていた。


 僕はまた鍛錬に戻り、木刀を振り続ける。

 アオイさんはずっと僕を見続けていた。




 夜が明けぬ時間に屋敷の外に出る。

 見送りはダンクロウさんとハチクロだけだ。

 集落の入り口まで送ってくれるという。


「アオイと別れはしなくてもいいのか?」

「必要ない。なるべく早めに僕のことを忘れた方がいいよ。恩を感じているなら尚更」

「シンヤ殿はなんとも義理堅いというか、生き辛い生き方をしているな。うちの愚息と合わせると丁度いい感じになりそうだ」

「そうかもしれませんね。最近よく思います」

「俺、馬鹿にされてる?」


 日の空ける頃には集落の入り口まで辿り着いた。

 そういえばここに来た時も朝の早い時間だった。


「ダンクロウさん、ハチクロ。武器を有難うございました。最高の品を貰いました」

『達者でな、ダンクロウ、ハチクロ。俺っちはいっちょ、天竜の奴をぶった切ってくるからよ。土産話は期待しとけ』

「また来い、待っているぞ。今度は共に酒を飲み、大いに語らうぞ」

「シンヤ殿、ご武運を。マサムネ様、シンヤ殿を守ってくだされ」


 涙などない、さっぱりと笑い合う男同士の別れ。

 それでいい。もう話すことは話した。



 僕は狐人の集落を後にし、しばらく歩みを進めて、丘の上で振り返った。

 塀に囲まれた沢山の家々。それは街と言っていい。


『凄いね……』

『ああ、てぇしたもんだ。俺っちの話からこんなに立派なものを造っちまうんだから。これを見られただけでも、俺っちは未練の欠片もないぜ。存分に使い倒してくれよ、相棒』

『言われなくても。テンマも宜しく』

『はい、主様とわたくしは最強なのです!』

『おいおい、俺っちは?』

『………』

『無視すんなよ!俺っち、無視は苦手なんだよぉ~』


 締まらない二人の声を聞きながら、今度こそ僕は振り返ることなく歩みを進めた。

 天竜が座す、頂に向かって。









『カバーストーリ―:マサムネ』



 刃渡り120cm、柄は40cmを越える大太刀。

 刃の色合いは白銀であり、通常の鉄とは色合いが異なる。

 細波のような波紋を描き、人を惹きつける美しい刀。


 喋ることの出来る意思持つ武具だが、他者と意思の疎通が出来るようになったのはマサムネ曰く2000年前くらいから。

 それまでは漠然とした意識はあっても自我は薄かった。そのころの記憶は断片的に残っている。


 底が見えないほど膨大な白色の力をその身に宿し、担い手に供給することで身体能力を強化させることが出来る。

 また、担い手は供給された力をコントロールしマサムネの刀身に戻すことで、刃に白色の力を帯びマサムネ本体も強化することが出来る。

 身体能力、マサムネ本体の強化の幅は担い手の技量次第となる。


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