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果てしなく続く物語の中で  作者: 毛井茂唯
エピソード 混迷の大陸 黎明
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第6話 混迷の大陸とふるい



『ピーンポーンパーンポーン』


『新大陸の創造、全行程を完了しました』


『これより試練、混迷の大陸の事前参加登録を開始します』


『試練資格者のステータスに、本試練の事前説明を記載します』


『ステータスから事前参加登録を行ってください』


『本試練の参加は、試練資格者の意思と判断によって行ってください』


『試練開始前までに事前参加登録をした試練資格者には、資源ポイント1000Pからスタートとなります』


『試練開始後に参加登録をした場合、資源ポイント0Pからスタートとなります』


『良き戦いを』


『ピーンポーンパーンポーン』




 学校の授業中、昼休みに入った瞬間の正午にその放送は流れた。

 慣れることのない大音量に顔を顰めながらマーレの元に行き、半透明の板を開く。

 教室のみんなもそんな僕たちに注目していた。



『試練資格FRA_No.00681

 青野信也 男 15歳

 技能:なし

 称号:死の運命を超えるもの

 生命:10/10

 精神:10/10

 装備:鉄の片刃短剣 ジャージ フード付きマント

 保有アイテム:背負い袋 携帯食料(15) 水筒大(2) ポーション(23) 紙束 ペン ナビゲートピクシー 野営セット 物臭の地図

 リソース:10P』


『試練:混迷の大陸→

 事前参加登録時間04日23時58分20秒』


『試練:混迷の大陸に参加しますか?

 YES   NO』


 混迷の大陸という言葉の横で点滅している矢印をタップすれば別の半透明の板が出現する。


『試練 混迷の大陸


 ルール


・試練資格者の内、参加受諾者のみ新大陸にて試練を行う。

・リソースポイントの交換、還元は新大陸の入り口のみで行える。

・新大陸で生物の討伐及び、交渉によって資源ポイントを入手することが出来る。

・討伐の場合のレートは1:1。交渉の場合のレートは1:10とする。

・相手の持つ保有資源ポイントは、対象を視認し「サーチ」と唱えると視界に現れる。

・資源ポイントは試練終了後に、資源そのものと交換できる。

・新大陸に存在する物品や資源はストレージに納めることは出来ないが、持ち出すことは出来る。

・新大陸には5つの拠点が存在し、その機能は箱庭の拠点と同等のものとする』



『資源ポイント交換目録→』



「……マーレはどう思う?」


 マーレも自分のステータスを確認しながら考え込む。

 資源ポイント交換目録の矢印をタップすれば、膨大な数の項目と交換レートが表示された。


「これではあまりにも情報が少ないわ。新大陸を自力で調べろという事かしら。目録を確認した限りだと1ポイント辺りの資源のレートは破格ね。事前参加登録するだけでもかなりの量になるわ」


 物にもよるがトン単位で得られるし、資源の種類もかなりのものだ。レートが高いものに至っては未知の名前が並んでいる。

 後で分かったことだが、日本の試練資格者が全員事前参加すればあれば、それだけで湯水のように資源を使っても国を20年以上延命できるほどの量らしい。


「このルール、明確に終わりが決まっていない。箱庭なら条件が、奈落なら制限時間があった。これは何もない」

「本当ね……参加は自由だし、ポイントを集めさせるだけかしら?」

 

 残念ながらそんなに楽観的には思えない。

 恐らく始まらなければ分からない何かがあるはずだ。


「参加は自由だけど、参加した後のことについては上位観測者の胸三寸だと考えられる」

「フランスにも早速呼びかけるわ。目先の利益につられて、安易に登録して取り返しもないことになりかねないという事よね」

「その方がいい。そういかない国もあるだろうけど、フランスは大丈夫?」

「割と自由なものよ。それにあなたの言葉だから。今日大使館で話し合いの場を設けるから参加してね」

「了解。問題ないよ」

「それじゃあ、お昼に行きましょうか。今日は中々の出来なのよ」


 クラスメイト達がザワザワと騒ぎながら僕たちを眺めていたが、これと言って話しかけたりはされなかった。

 僕は了承の意を示して、ボッチ飯スポットに向かった。

 最近ボッチの極まっている僕は、マーレと昼食をとるのが主になっている。

 今はもう緊張しないというか、普通に友人関係に落ち着いていた。

 元々の世話焼き気質が幸いしてというか、鍛錬や学校生活など、付き合う時間が増えてくると、苦手意識が無くなって接しやすくなった。

 僕自身何かしたわけじゃないから、マーレが僕に合わせてくれているように思える。


 今はお弁当作りにはまっているみたいで、おかずを分けて貰うついでに感想を求められた。

 段々と好みの味付けに近付いている気がする。




 放課後は大使館に寄り、フランスの試練対策担当者と話し合ったが、概ね僕たちの懸念を理解してくれた。

 ただフランスは判断を自由にさせているため、呼びかけは出来ても最終判断は試練資格者に委ねることになるということだった。

 それはマーレのような政府の協力者も同様だという。

 こういう時の団結は、私兵化を進めた国が優位に思えるけど、判断を間違えた場合はとんでもない被害になりそうだ。


 大使館での会議が長引いたのと、議題がまだあるため今日は泊まり込みになる。

 元々フランスの試練資格者たちの鍛錬を見るつもりだったから、お泊りセットは準備済みだった。明日が土曜日で助かった。

 珍しく空気読めるじゃないか上位観測者。

 

 僕がシャワーから上がって身支度をしようと客室に向かっていると、マーレが焦ったようにスマホを見せてきた。

 

 映っていたのは、報道陣の集まった会見の現場。

 日本の試練対策室のトップ、局長の厳本真純が発言を行おうとしている映像だった。

 

「信也、これっ!」


『日本は、試練資格者を一つの民間団体として契約を行いました。以降、政府直轄の人員として取り扱い、特殊派遣部隊として運用することを、ここに宣言致します――――』


 ついに、日本政府は試練資格者の私兵化を実現させようと動き出したのだ。

 

 

 

 

 事前参加登録の通知から5日、期日の時間がやってきた。

 身近な試練資格者ではマーレは事前登録していない。

 僕も試練の影響で箱庭に行けなくなる事態を避けたかったので登録しなかった。

 内情はっきりと分かれば参加するかもしれないが、今のところその意思はない。


 日本は参加の意思証明が出来る試練資格者は、全て今回の試練に事前参加をした。

 確実に私兵化が影響している。

 私兵化の旗頭の琴羽も例外ではない。

 この政策は未だ混沌を極めているが、試練資格者から大きな反発の声は聞こえてこない。

 今は平穏なものだが、実際に試練が始まればどうなっていくのだろうか。


 琴羽はここ数日、日原邸に帰ってきていない。

 連絡は取っているが、忙しくしているので長い時間は話せていない。

 懸念は伝えてはいたが、今の日本は彼女の意思ではどうにもできない大きな流れが出来てしまっている。

 組織の意向の前に個人が弱い立場となる。琴羽の実績とカリスマであれば纏め上げることも出来そうだが、阻害される要因があるのかもしれない。

 

 僕と関わりの薄い先進国は軒並み事前参加登録を行い、特にアメリカなどの私兵化に成功している国や社会主義国の登録状況は100%に近い。


 ヨーロッパは事前参加登録率3割と低く、フランスに至っては1割を切っていて、先進国ではぶっちぎりで低い。

 他にも僕が異層空間を消滅させた国や地域は、事前参加登録率が低くなっていた。

 僕が様子を見るよう呼び掛けたため、一定の効果はあったようだ。

 世界に対して可能な限り発信したが、私兵化を進めている国や社会主義国の反応は芳しくなかった。

 弱腰だと、あしざまに言われるようなこともあった。


 フランスやヨーロッパの国々が信用してくれたのは有難いけど、これで何もないただのボーナスステージだったら、僕が登録して頑張って取り返さなくてはいけないかもしれない。





 放送の翌週、水曜日の正午。

 事前参加登録の期限が終わり、正式に試練「混迷の大陸」の開始が宣言された。



『ピーンポーンパーンポーン』


『事前参加登録を終了します』


『これより試練、混迷の大陸を開始します』


『今回の試練において、ライブ配信ブラインド機能を追加しました』


『試練資格者のステータスに本試練の成功条件、失敗条件を記載します』


『良き戦いを』


『ピーンポーンパーンポーン』




『試練:混迷の大陸→

 試練残り時間29日23時58分20秒』



『試練 混迷の大陸


 試練成功条件


・試験残り時間を終了するまで、試練に未参加であること。

・参加登録者は資源ポイント10000P以上を所持した状態で、試練残り時間を終了すること。


 試練失敗条件


・試練資格者の死亡。

・参加登録者が資源ポイント10000P未満を所持した状態で、試練残り時間を終了すること。




 追加された項目は少ない。

 それでもタダで資源が手に入ると思っていた人間にとっては衝撃的だろう。

 事前参加登録で得られたのは1000P。

 その9倍を1ヶ月で稼ぎ出さないといけない。

 

 新大陸の現地生物から得られるポイントがどれほどか分からないが、供給を満たせなければ多くの試練資格者が試練資格を喪失、命を失う。

 仮に供給を満たすだけのポイントが存在したとしても、現地生物の強さが顕現した奈落に準じるなら簡単なものではない。

 

「……信也の懸念が的中したということ、よね」

「うん、間違いないと思う。この試練は……試練資格者とって、今までで一番最悪の試練だ」

 

 マーレが震える手で僕の手を握ってきていた。

 僕もその手を握り返す。彼女の恐れは僕の恐れでもあった。


 

 事前参加登録のルールの中で、一部不穏なものがあった。

 情報の危険性を考え、事前参加登録が始まってからフランス側だけに共有した情報。

 確定情報ではなく憶測も含まれるが、まず間違いないだろうという結論に至った。

 気付く人間は当然気付く。

 今回の成功条件が提示されたことによって、気付く人間は増えただろう。

 試練が進めば、誰もが知ることになる。

 

 

 討伐によって資源ポイント得られる生物は、何も現地生物だけではない。

 

 試練資格者も同じなのだと。


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