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第1章 第5話 〜〜救助

 アレスたちの後を追って、俺は古代遺跡へと向かった。


 遺跡の入り口は、巨大な石の扉で閉ざされており、一筋縄では開かないような、複雑な魔法陣が刻まれていた。


 俺が【鑑定】スキルで魔法陣を解析すると、その構造が手に取るようにわかった。


  師匠から受け継いだ知識によれば、この魔法陣は、特定の元素を正確な比率で配置しなければ、扉は開かない。


  俺は、師匠の書物『万象の錬金術』に記されていた方法で、小さな錬金釜にいくつかの鉱石と薬草を入れ、正確に調合した。


 すると、淡い光を放つ液体が完成し、それを魔法陣の中心に垂らすと、石の扉は音もなく、ゆっくりと開いた。


中に入ると、そこは外界とは全く異なる、時間の止まった空間だった。


  ひんやりとした空気が肌を刺し、奥からは、不気味な魔物の咆哮が聞こえてくる。 俺は、気配を消し、静かに彼らの後を追った。


 数々の罠が仕掛けられていたが、俺の【鑑定】スキルにかかれば、その全てを見通すことができる。


 毒の罠も、爆発の罠も、俺にとっては、ただの素通りできる道にすぎなかった。言っちゃうと素人の作った罠。これに引っかかる間抜けがあるか。


 しばらく進むと、戦闘の音が聞こえてきた。 俺は、物陰に身を潜め、その様子を伺った。哀れでか弱い 彼らは、巨大なゴーレムと戦っていた。


 ゴーレムは、石と魔力でできた魔物で、並の魔法や物理攻撃では、びくともしない。 まぁ彼らの攻撃は並にも届かないような代物なのだが。


 アレスの雷魔法は、ゴーレムの体に吸収され、何のダメージも与えられない。 ゼノの剣も、ゴーレムの硬い皮膚に阻まれ、刃が通らない。 面白い。


 クレアの回復魔法も、ゴーレムが放つ呪いの煙によって、回復力が半減させられていた。


「くそっ、このゴーレム、硬すぎる!」


 アレスが、苛立ちを隠せない様子で叫んだ。 でも君じゃどうやっても無理だよ。


「もう魔力が限界よ……! 回復魔法が、効かない……!」


 クレアは、魔力切れを起こし、地面に膝をついた。 ゼノは、剣を弾き飛ばされ、ゴーレムの攻撃を避けるのが精一杯だった。


 彼らは、完全に追い詰められていた。 そして、ゴーレムの巨大な拳が、クレアに振り下ろされようとしていた。


「クレア!」


  アレスが叫ぶが、もう間に合わない。 クレアは、死を覚悟して、目を閉じた。


 その時だった。 ゴーレムの拳が、クレアに当たる寸前で、淡い光に包まれた。 ゴーレムは、光に包まれると、体が徐々に石化していき、やがて、その場で動けなくなった。


「な……!?」


 アレスたちは、何が起こったのかわからず、呆然としている。 俺は、物陰から姿を現し、静かに彼らの前に立った。


「久しぶりだな、アレス、クレア、ゼノ」


 俺の声に、彼らはハッと顔を上げた。 そこに立っていたのは、数年前に、彼らが「役立たず」と追放した、俺だった。


「ア、アイン……! どうしてここに……?」


 アレスが、震える声で尋ねる。さあ、なぜだろうな。お前らにはわかるまい。 俺は、彼らの問いには答えず、ただ静かに、ゴーレムを見据えた。


「このゴーレムは、光の魔力が弱点だ。ゴーレムの魔力中枢に、光の元素を注入すれば、石化させることができる」


 俺は、そう言いながら、ゴーレムの頭部に、小さな光る石を投げつける。 石は、ゴーレムの体に吸い込まれ、ゴーレムは完全に石像と化した。


「……信じられない」


  クレアが、ポツリと呟く。 彼女の瞳には、驚きと、そして、後悔の色が浮かんでいた。


「アイン……お前、一体、どこで、そんな力を……」


  ゼノが、悔しそうに歯を食いしばりながら、そう尋ねる。


 俺は、またも彼らの問いには答えず、ただ静かに言った。


「お前たちが追放した錬金術師は、もう、お前たちの知っている俺ではない」


 俺の言葉は、冷たく、そして、明確だった。 アレスたちは、何も言い返すことができず、ただ、その場で立ち尽くしていた。


「なあ、アイン……俺たちを、助けてくれないか?」


 アレスが、震える声で、そう尋ねた。 彼の瞳には、もう、あの時の自信はなかった。 あるのは、ただ、絶望と、俺への依存だけだった。無理に決まってんだろ。


 俺は、アレスの言葉に、静かに微笑んだ。


「俺は、お前たちを助ける義理はない」 俺は、そう言い放ち、彼らに背を向けた。


「待ってくれ! アイン!」


  アレスが、叫ぶ。 やだね。


「頼む! もう一度、俺たちのパーティーに戻ってくれ! もう二度と、お前を役立たずなんて言わないから!」


 アレスの言葉は、まるで子供のように、情けなく聞こえた。 クレアも、ゼノも、俺に助けを求めるように、俺の名前を呼んでいる。


 俺は、振り返らなかった。


「お前たちが俺を追放した時、俺は、もう、お前たちの仲間にはもうならないと決めたんだ」 


  俺は、そう言い残し、古代遺跡の奥へと歩いていった。 彼らは、絶望の底で、俺が去っていく背中を、ただ見つめることしかできなかった。


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