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秘密売り場の少女  作者: 和音
9/13

第九話

その後のことは、はっきり言ってほとんど覚えていない…………なんて言えたら楽だったんだが、残念なことにそんな漫画のような俺に都合の良いことはおきず、全てはっきり覚えてる。

珍しく怜がずっと下を向いていた。夕日のせいで定かじゃあないが、恐らく照れていたんだろうな。

そして、どっちからともなく作った飯を食ったあと、風呂に入り、その後は、寝室で背を向けて寝た。

……いや、少なくとも俺は背を向けていたの方が、正しいな。

怜はもしかしたらこっち向いていたかもしれないからな。

まあでも、多分背を向けていただろう。


そして次の記憶は、見慣れた天井だった。

「朝か……」

俺は少し憂鬱な気分でリビングにいく。

ちなみに、既に昼だった。


「おお、お、おはよう、昨日は、そ、その、あの、あれだ、あれ」

完全に動揺してるな。

「お、おお、おはよう、き、昨日は、その、えーっと、なんていうか、あれだな、あれ」

ああ、俺もだな。

その後、2人で黙りこくり、飯を食った。

いつもは美味しいのに、今日は味がしなかったな。

まあ当然っちゃあ当然だが。


そのあと、2人でソファの端っこに座って、何もせずただじっとしていた。

もちろん、両端に。

あーあ、気まずい気まずい。

何であんなことしちゃったのか。



暫くそんな時間が続いた。

まあそりゃそうだ。俺は当然として、怜も多分恋愛経験0だろうから、こんな時なんて言えばいいのかわからないんだ。

だが、そんな時間を壊すように、怜が口を開く。

「なあ、慎也、昨日の、その、あれは…………そういう、ことで、いいんだよな?」

『そういうこと』、これで伝わるんだから、日本語って便利だな。

うーん……

「ああ、えっ……と、昨日のは、その、すまん。何と言うか、怜が消えちゃいそうな、居なくなっちゃいそうな、突然そんな気がして、気付いたら、その、抱きしめてた。だから、多分、怜の言うそういうことって訳ではない、と、思う」

しどろもどろながら説明をする。

怜の顔が、悲しいような、驚いたような、ほっとしたような、そんな変な表情を浮かび上がらせた。

何の感情だ?

「そうか、それなら、いい」

果たして、何がいいのだろうか?

「とりあえず、これで、その、誤解?は、解けた、訳だ」

怜は笑顔を浮かべた。

昨日までの、見慣れた子供らしさの残る笑顔だ。

「まあ、そうだな」

自分の心を見ると、もう既に気まずさを忘れていた。

人間って便利だな。



その後は、普通に過ごした。

家にいるのが好きな人間2人の休日の過ごし方って言えば、伝わるだろう。

各々適当に好きなことを好きなようにやる、そんな過ごし方。

互いにほとんど干渉せず、好き勝手に色んなことをする。

そんな、ある人は勿体無いと言い、ある人は贅沢だと言う時間を過ごした。



気付いたら、カラスの声とヒグラシの声が聞こえてくる時間になった。

俺たちは、一日中家にいることに対する軽い罪悪感から、近くの公園まで散歩した。

人はまばらで、幸か不幸か知人は居なかった。

俺は木製のベンチに腰掛けて、怜はその目の前にある小さなブランコを楽しそうに漕ぐ。

「やっぱり、子供だな」

「何か、言ったか?」

かなり小さな声で言ったつもりだったんだが。

その後、ブランコに飽きた怜は一、ニ回滑り台を滑った。

そして、俺たちは、来る時よりも隠れた太陽の中、家までの道を横並びで歩いた。



家に着いたのは午後6:42、俺たちは夕飯として、炒飯を作り始めた。

大体二十分程度で完成させた。

それを皿に盛り付け、テーブルに並べる。

俺たちは向かい合って、その出来立ての炒飯を食べる。

昼と違って、味がするな。美味しい。



その後、夜のいつもの事務(洗濯やら入浴やらなんやら)をこなして、寝室に行く。

いつもの如く、新品の布団が占領されていた。

……おかしいな、怜がここですでに横たわっているのも、すでに当たり前になりつつあるな。

まだこいつが来て数日とかなのに。

はてさて、いつになったら帰るのか。

まあどうせ帰るつもりなんか無いだろうが。

「おお、慎也、ようやくか」

ものすごい笑顔で怜が出迎えた。

ようやくかじゃねえよ、今まで洗い物とかしてたんだよ。怜が手伝わないから1人で。

何故か夜寝る時は早々に寝室に入るんだよな、こいつ。

まあいいか、寝よう。

俺が布団に潜り込むと、示し合わせたかのように、怜は俺の腕の上に頭を乗せる。

ニヒヒと怜が笑顔を見せる。

なんか……癪だが、ちょっとドキドキするな。

いや、昨日のあれのせいに違いない。きっとそうだ。そうじゃなきゃこんなやつ相手にこんなドキドキするはずがない。

「じゃあ、また、明日な、慎也」

真っ直ぐな目を向けて、怜はそう言った。

「ああ、お休み」

……『お休み』の『す』くらいで眠りに入ったな、こいつ。

まあもうなにが起きても驚かないさ。

はー、長い一日だった。

俺も早く寝よう。

ひっさしっぶりー!

なんてね、明るく言えるはずもなくですよ、はい。

ちょっとねー、色々やりたいことがあってなかなか出せなかったわけですわ。申し訳ない。

今回の話もまあ短いし。

今後はね、もっと出していきたいね。待ってる人が居るかどうかは置いといて。


実を言うと、この物語、ほんとは短編のはずだったんだよね。

だけど、途中でやりたいことがたくさん出てきて、気付いたらここまで来てたんだよねえ、おー怖い怖い。

そして更にね、この話で終わらせようかなーとも思ってたわけ。

でもね、まあ、察しの通りまだまだやりたいことがあってね、多分暫くは続くんじゃないかなあ、知らないけど。

じゃあまあとりあえず、まったねー!

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