第七話
続きですー
それでは、行ってらっしゃーい
……ん?リビングの方から物音がする……
なんだ?怜が何かしてんのか?
「———はい!これで完了です!ども、失礼しました!」
ガチャンッ
……なんだったんだ……?
俺はリビングを覗く。
すると、そこには一つの大きな黒い物体があった。
見覚えのある四角いなにか。俺は半開きの目で見て寝起きで白い脳で記憶を掘り起こす。
なんだっけ、これ?
……あー!テレビだ、テレビ!
そうだった、昨日買ったじゃねえか。
「こんな朝早くに来たんだな」
さっきの音はテレビを設置する音か。
「何を、言って、いるのだ、もう、11時だぞ」
「え!?」
うそ?!
時計を見る。
確かに、午前11:07を指している。
目覚ましかけなかったのか?
「いや、目覚ましは、ちゃんと、6:36に、かけたぞ」
え?なんで考えてること……ああ、そういや心が読めるんだったな。
信じ難いが、やっぱほんとなんだな。
それより、やっぱ日に日に起こされる時間早くなってるよな。
ほんとに……はあ。
「だけど、お前は、目覚ましが、鳴っても、起きなかった、相当、疲れてたんだな」
なるほど、確かに、寝不足もあるだろうが昨日は久しぶりに遠出したしな、疲れてたんだな、俺。
まあ、久しぶりに長時間眠れてよかったや、おかげで元気だ。
今日の昼は、昨日作って寝かせてたカレーを食べた。
そういや『カレーは寝かせると美味くなる』なんて言葉があるが、なんだろう……俺の舌がおかしいのか?あんま違いがわからなかったんだよな。飽きかな。
怜は、今朝来たばかりのテレビで何かを見ている。
芸能人がいろんな地域でその土地の特産品を食べる、みたいな番組だ。
俺には何が面白いのかわからないが、まあ、人によっては面白いんだろうな。見ている怜は全然楽しそうじゃないが。
まあいい、そんなことより俺はこの課題を終わらせなければならないのだ。
『歴史上の人物について調べろ』、めんどくさいな……誰にしよう。
まあ、無難に織田信長でいっか。
「……うし、完成でいいだろ」
レポート用紙二枚分は書いたぞ、俺にしては良くやった方だ。
それにしても、ずっとスマホで調べてたからな、目が痛い。
「おお、慎也、お疲れ、随分と、長い間、机に向かって、いたな」
午後3:26、なるほど、大体三時間近く俺はスマホと睨めっこしながらシャーペンを動かし続けてたわけだ。
そりゃ疲れるに決まってる。
「それより、慎也、ここに、座れ」
怜は俺に隣に座るようにポンポンとソファを優しく叩いた。
何する気だ?
「はいはい、で、なんか用か?」
「昨日、買った、ゲームを、やるぞ」
「…………今?」
目痛いんだけど。
「ああ、もちろん、今だ」
嘘だろ?
「明日にしない?」
「だめだ、今だ」
「頼む、今ほんとに目が痛いんだ、だから明日、いや、せめて今日の夜にしてくれないか?」
「やーだー!今やるの!」
くそっ、子供が……
十分間の攻防の末、俺が折れた。
いや違うんだよ、いくら怜とはいえ年下に泣かれるとバツが悪いっていうか……まあともかく、目が痛いのに俺は今から画面に集中しなければならなくなったってわけだ。ふざけんな。
「さあ、早速、やるぞ♪」
さっきまで泣いてたのに、もう語尾に音符をつけてる怜が、ゲームの準備を始めた。
初めて家に来た時は、もっとよそよそしかったんだがな、もうすっかり家族みたいに振る舞ってる。
いやまあ殆ど家族のことは知らないが。
はあ……いつ帰るのやら。
「よし、準備、できたぞ、これが、慎也の、コントローラー、とか、いうやつだ」
「はいはい」
テレビ画面に映ったのは、ヒゲのおじさんとその仲間たちのレースゲームだった。
これなら流石に俺でも知ってる。やったことはないが、クラスの奴らが話しているのを聞いたことはある。
「さあ、始めるぞ」
ボフッと俺の隣に座ってそう言った。
まあ、ちょっとだけだが知ってるし、相手は大人っぽく見えてもまだまだ子供だ、少し手加減してやるか。
「くそっ……!このっ……!くっ……!」
俺の画面に負けが表示され、怜の方に勝ちが表示される。
「はい、また、私の、勝ちだな」
ニヒヒと笑顔を見せつけながら、怜は言った。
なんで勝てないんだ?
才能の差か?
「いやー、楽しめたぞ、ゲームと、いうものも、悪くないな、そろそろ、夕飯の、時間かな」
時計を見ると午後7:24、嘘だろ!?俺たち四時間もやってたのか!?
うーん、視力大丈夫かな……
それより、数学といいゲームといい、怜ってもしかして凄い奴なのか?
「「いただきます」」
今日の夕飯は餃子だった。
流石に昨日のカレーはもう残ってなかったが、それと同じくらい美味かった。
怜の作る料理って全部美味いんだよな。
今俺の五感のうち二つが悲鳴をあげている。
一方はあまりの美味さに、もう一方はあまりの疲労に。
あー目が痛い。
「「ごちそうさまでした」」
今日は外出てないのに疲れたな、主に目が。
もうさっさと寝てしまおう。
よしっ、寝る前の日課、というか家事やらなんやら終わり!
ふー、短いけど長い一日だったな。
……あ、そういや今日こそ先に寝なきゃ、また怜に新品の方で寝られるからな。
「じゃあ、俺は先に寝させてもらうよ、怜も早く寝ろよ」
ソファの上で夜のバラエティ番組を見ている怜に向かって言った。
「おお、そうか、じゃあ、慎也、おやすみ」
バフッと音を立てながら俺は布団に倒れこむ。
時間は午後9:37、まだまだ早いが、まあ、疲れたし丁度いい。
それにしてもこの布団、古いやつよりフカフカだな。
高いやつ買ってよかった。
よし、寝るか。
……うーん、こういう日に限ってなかなか寝付けないんだよな。どうしよう。
その時、
「おっ、なんだ、慎也、まだ、寝て、いないのか」
扉が開き、怜が寝室に入ってきた。
目と目が合う。
……ちょっと嫌な予感がするな。
「それじゃ、私も、寝ると、するかな」
と言いながら、右を向きながら寝ようとしていた俺の右腕を引っ張って枕にし、その上に寝転んだ。
俺と向かい合わせになるように。
あー、やっぱりこうなるか。
「あれ、慎也、嫌がらないのか?」
「まあな、だって振り払ったらお前泣くだろ」
「おー、よく、分かって、いるでは、ないか」
はあ……仕方ない、まあ一回経験したし、別に特別嫌ってわけでもないしな。
ただただ寝づらいだけだ。
それで泣かれるのを阻止できるなら安いもんだ。
「それよりさ、怜は俺が変な気を起こしたらどうするつもり?」
まあそんな気絶対に起こさないが。
「ん?そんなの、決まって、いるだろ、私と、慎也は、恋人同士、だからな」
ニヒヒと笑う。
そういやそうだったな。それらしい事したことないから忘れてたが、一応俺らはそういう関係だったっけ、俺は納得してないが。
「まあ、お前が、そんな気を、起こさないことは、既に、分かって、いるがな」
ああ、また心を読んだのか。でも、今回のはちょっと毛色が違う気がするな。
「まあ、そんなことは、どうだって、いい、早く、寝るぞ」
「……そうだな」
「おやすみ、慎也」
「はいはい」
……もう寝たぞこいつ、凄いな。
その寝つきの良さ分けてほしいな。
それにしてもこいつ、いくら身長が低いとはいえ、ちょっと軽すぎるな。
まあでも、小学生の頃に同じくらい軽い奴いたし、確かこいつ12だろ?てことは小6か中1……まあ見た感じ元気そうだし、大丈夫、かな?
まあいい、そんなこと考えたって答えは出ない、もう寝よう。
……明日念のため怜に色々聞いたりなんなりしよう。
たまにいるよね、何させても凄い奴って。
怜はそんな感じでコツを掴むのが早いんだよね。
数学にしてもゲームにしても料理にしても。
天才って言葉が似合うかな?
慎也は逆にコツコツやらないと成長しないタイプなんだよ。
しかも自分が興味あるものに対してだけしか努力しない。
だから、英語はできるけどそれ以外は基本的に嫌いだから全然できないんだよ。
ただ、裏を返せば、頑張れば大抵なんでもできる。
まあ、秀才、かな?
あーあとほんとくだらないけど、怜は食べ物に調味料めっちゃつけるタイプで、慎也は一切つけずに食べるタイプ。
それはそうと、読んでくれてありがとうございました!
感想とか書いてくれると泣いて喜びます!
じゃ、またいつか!