第四話
続きー
前回のも読んでみてね。
「なあ、慎也、この辺りで、良いスーパーは、あるか?」
冷蔵庫を覗いたまま、怜は聞いてきた。
どうやらもう食材がないらしい。
「なんだよ、知らんのか」
あの廃ビルに1人で暮らしてたのに。
「まあ、深くは、考えるな、とにかく、知らないか?」
「んー、ちょっと遠くに大きめのスーパーはあるけど」
「じゃあ、行こう、今すぐに」
まじかよ。
まあ、確かにまだ午前11:17、昼飯にはちょっと早いし、ちょうど良いか。
と、いう訳で、俺らは今家から少し離れたところにあるスーパーにいる。
最寄りの駅の向こう側、俺らの家から徒歩十五分、どこにでもある普通のスーパー。
そこは、主婦らで混雑してはいた。
とは言え、大都市とは言えないこの街のこと、混んでいるといっても、たかだか十数人程度。
もうすでに作るものは決めてあるらしく、怜は迷いなくスーパー内を歩き、食材をカゴに入れていく。
ネギ、白菜、椎茸、豆腐、豚肉、卵……
何を作るのだろう。
……もしかして、いや、そんなはずはないな。
きっと別の料理だろう、うん、そうに違いない。
えーっとお次は…………鍋の素。
待て待て待て待て待て待て待て待て。
「ちょ、ちょ、ちょっと待て!」
思ったより大きな声が出てしまった。
視線が気になる。
が、そんなのどうでもいい。
「なんだ、なにか、問題でも、あるのか」
問題でもじゃねぇよ。
「この季節に鍋?!」
夏だぞ?!
「ああ、そうだが」
ああ、そうだがって……
「なあ、この暑さで頭がやられたかのか?」
「いや、そんなことは、ないぞ、お前も、好きだろ」
「いや、確かに好きだけどさ、それは冬に食べるからであってだな……」
そんなことを言っていると、怜はニヒヒと笑い始めた。
「慎也は、ほんとに、バカだな、この季節に、鍋なんて、作るわけ、ないだろう」
……ムカつくな。
「もちろん、鍋なわけ、なかろうが、エイプリルフールってやつだ」
今日じゃねぇよ。
「まあ、この、鍋の素は、戻すとして、それ以外は、買ってくぞ、しばらくは、買い物したく、ないからな」
「どーぞ、作るのはあんただしな」
とりあえず、この暑い中鍋を食べるなんて馬鹿げたことはしなくて良いんだな。
あー、よかった。
おお神よ、先程の安堵は何処へ。
確かにさ、自由に買えとは言ったよ?
だって作るの俺じゃなくてこいつだから。
でもさ、まさかこんなに買うとは思わないじゃん。
袋何個出来るんだ?
5?6?
いや、それどころじゃないよな。
あーあ、おかげで財布がすっからかんだ。
いや、これが普通なのか?
買い物ってこういうもんなのか?
いつも安いもんしか買わないからな。
……果たして持てるのか?
「ただいまー」
「あー、重い」
帰ってきたら、午後12:06、昼飯にはちょうどいい時間だ。
怜は早速台所に立って、何かを作り始めた。
俺は夏休みの課題でもやるかな。
「おい、慎也、昼飯だぞ」
時計は午後12:11をさす、はやいな。
「ああ、ありがとう」
焼きそばがテーブルの上に二つ置かれる。
「「いただきます」」
夏って感じだな。
祭を思い出す。
そういや最近行ってないな。
まあ、両親が生きてた頃に一、二度行った程度だが。
「なあ、慎也、なぜ、食卓の上で、課題をやるのだ、自分の部屋は、ないのか」
……悪かったな、狭い部屋で。
「ねぇよ、あくまで親戚の金だからな、そんな贅沢できねぇの」
これでも一人暮らしには十分だったんだよ。
「なら、バイトでも、すればいい」
「残念ながら、うちの高校バイト禁止」
「そんなもの、破ってしまえ、約束は、破るものだぞ」
ニヒヒと笑う。サイコパスか?
「バカ言うな」
危険なやつだ。
相変わらず、飯はうまいが。
「よしっ!」
俺は気合を入れて、課題に取り掛かる。
早々に課題を全て終わらせて、あとは遊ぶ。これが俺のやり方だ。
この高校課題少ないからな、すぐに終わるだろう。
「なあ、慎也、誰かと、遊ばないのか?夏休みだぞ」
「…………」
「もしかして、一緒に遊ぶ、友達が、いないのか?可哀想な、やつだな」
「……泣くぞ?」
やめてくれよ、そこをつくのはさ。
「あれ、もしかして、図星か?」
ニヒヒと笑う。
こんな笑うやつだったか?
まあいいや、さっさとやってしまおう。
今日中に数学は終わらせたいな。
「手伝って、やろうか」
「いや、いい」
高校の範囲だ。
子供にわかるもんか。
……ダメだ、さっぱり分からん。
さすが俺、数学赤点の男、逆さの天才。
なんだよこの三角比とか言うやつ、数学の世界に英語を持ってくるな、sinとか罪じゃん、これ。
はあ、もっと真面目に授業聞いときゃよかった……
「なんだ、慎也、やっぱり、困ってるのか、手伝って、やろうか」
「……お願いします」
猫の手も借りたいこの状況、プライドなんて捨ててしまおう。
でも、果たしてこいつに分かるのか?
な、なんだこいつ!
滅茶苦茶わかりやすい!
えっ?!嘘だろ?!
「これで、三角比は、分かったな、もう、問題を、自力で、解けるだろ」
「えっ?!ホントに12?!」
俺より頭いいじゃねぇか!
「ああ、正真正銘、紛うことなき、12歳だ」
「て、天才……」
「何を言う、私は、別に、天才じゃない。こんなこと、基本さえ、わかっていたら、誰でも、わかる」
いや、それが分からないから苦労してんだよ。
「いや、でも助かった、ありがとう」
「少しは、私に、惚れたか?」
いや、それはないが、とにかく、あとの範囲は大体わかるし、ピャッピャと終わらせちまおう。
「終わったーーー!」
時刻は午後7:13、かなりかかったが数学はおしまい。
あとは英語と国語……まあ古文だな。それと生物に歴史。
中学の時と比べてだいぶ少ない。
楽でいいや。
「おお、慎也、終わったか、ちょうど、夕飯が、できたぞ」
テーブルの上には大皿に入ったそうめんと、小さな皿に入ったつゆがあった。
夏だな。
冗談でも鍋を作ろうとしてたとは思えない。
「「いただきます」」
各々好きにそうめんを取り、つゆにつけて食べる。
そうめんなんていつぶりだろう。
やっぱりうめぇな、こいつの作る料理。
よし、風呂にも入った、歯ブラシもした。
皿洗いも洗濯も掃除もした(怜と一緒に)。
午後9:23、まだ寝るには少しはやいか。
「慎也、まだ、寝ないのか?」
「ん?ああ、まだはやいから」
「そうか、なら、私は、もう寝るな、おやすみ」
「ああ、おやすみ」
家事も手伝ってくれる、勉強も教えてくれる、少し家は狭くなったけど、全然暮らせる。
……あれ?もしかして、怜って相当いい奴か?
好きになるまで帰らないってことは、それまでずっといるってことだろ?
ずっと同棲するのも、全然悪くないな……
むしろ良いまである。
スマホの時計は午後11:03、そろそろ寝ようかな。
寝室に行くと、そこには、当然のように唯一の布団に横たわって眠る怜の姿が。
……そうだった、忘れてた。
こいつ布団を独り占めするんだった。
「はあ……」
そうか、だから今日朝から全身が痛いんだ。
こりゃ早めにもう一枚布団買わなきゃいけないな。
くそっ、こいつ、幸せそうに寝やがって。
今日も床で寝るしかないか。
……やっぱり帰ってもらおうかな。
私は数学しかできないです。
なんで、ほんとは文章書けないんです。
でも、なんか書けてるんですよね、不思議ですね。
神のいたずらかな?