第三話
前回の続きですー
前のから読んだほうが良いかもね
ジリリリリリリリリリ!
目覚ましが俺の耳を叩く。
あーあーうるさいうるさい!
わかったって、今起きるから!
ダンッ!
時計を見ると午前7:03、目覚ましは掛けてないはず……怜の仕業か。
あの野郎、余計なお世話を……
リビングに入ると、怜が椅子に腰掛けていた。
昨日のことは夢じゃなかったらしい。
少し期待していたんだがな。
「おう、起きたか、慎也、おはよう」
そいつは、意外にも朝食を作って待っていた。
味噌汁、白米、鮭……完全に和食だ。
こんな外国人みたいな見た目なのに。
家事をやるってのはあながち嘘じゃないらしい。
「ああ、おはよう」
母親かよ、まあ、全く記憶にないけど。
俺は歯を磨いて、その後席につき、そいつらを食べ始めた。
「ところで、お前は、いつも、何時に、家を、出るのだ」
向かいの席でじっと見てくる。
だから母親かって。
「なんでお前に教えなきゃいけないんだよ」
「それは、当たり前だろ、同棲、しているのだから」
「意味がわからん」
それにしても、この味噌汁うめぇな。
「……8時だよ」
「そうか」
怜はニヒヒと微笑んで言った。
「今日は、確か、終業式、だったよな」
なんで知ってんだよ、そうだけど。
でも、母親が生きてたらこんな感じなのかな……
やけにポカポカする、味噌汁が出来立てだったらしい。
食い終わった。
「ごちそーさまでした」
「おう、お粗末さま」
俺の作るやつより圧倒的に美味しかった。
伊達にあの廃ビルで1人で暮らしてたわけじゃないな。
時計を見ると午前7:16、思いの外ゆっくり食べてしまった。
そろそろ着替え始めるか。
席を立って制服を取りに行くと、怜がそれを持って待っていた。
「これだろ、慎也」
「あ、ああ、そうだな、ありがとう」
……心を読む能力、便利だな。
俺は着替え、椅子に座る。
もう準備は終わった。
時間は午前8:02、そろそろ行くか。
「慎也、もう、行くのか」
「ああ、もう時間だし」
なんなら少し遅刻しそうな時間だ。
「着いてって、やろうか」
「マジでやめてくれ」
冗談抜きで。
「じゃあ、行ってきますの、キスを、してくれたら、考えてやっても、いいぞ」
ニヒヒと笑って目を瞑る。
ガチャンッ
生憎、こいつのおふざけに付き合ってる暇はない。
それにしても、相変わらず、蝉の声がうるさい。
エレベーターで一階まで降りる。
学校は、エントランスを出て、左に真っ直ぐいったところにある。
あの廃ビルとこのマンションとの、丁度真ん中だ。
遠くもなく近くもなくって距離だ。
俺は1人で道を歩く。
太陽の光がアスファルトに跳ね返って、暑い。
一緒に登校する友達なんて、当然いない。
一応クラスメイト全員と知り合いにはなったが、友達と呼べる人は、まだ浩介含め数人だけだ。
嫌われてるわけじゃない、と思う。
てか、そう思いたい。
学校に着いた。
キーン、コーン、カーン、コーン
丁度、5分前のチャイムが鳴ったところだ。
危なかったな。
教室は四階にある。
階段の途中、誰ともすれ違わない。
静かだ。この空気、好きだな。落ち着く。
四階につく。
階段に一番近い教室の、後ろのドアから入る。
ドアを開けて中に入る瞬間が一番気まずいが、幸い、席は通路側の一番後ろだから、そこまで気まずくならずに済む。
浩介が俺に気づいて、手をひらひらと振る。
俺も振り返しとこう。
ガラガラガラ
教室の前のドアが勢いよく開いた。
「おはよう!」
担任の森山が野太い声を出す。
さすがは体育の教師、朝から元気だ。
キーン、コーン、カーン、コーン
皆自分の席につき、一限目に備えた。
とは言っても、今日は終業式、授業は当然ない。
それに、この高校は少し変わっていて、終業式でありがちな『校長先生のお話し』やら『夏休みの過ごし方』やらの、長いだけで毒にも薬にもならないようなものもない。
あるのは、担任からの諸連絡だけだ。
「明日から夏休みが始まる!遊びすぎず、学業にも真剣に取り組むように!」
誰がそんなことするのだろう。
課題についてはもう説明されてるし、新しく説明されることもないだろう。
今日はあいつのせいで早く起きたし、寝てしまおうか。
「やあ、慎也、来てやったぞ」
「!!」
後ろを振り向くと、確かにそいつはそこにいた。
来るなって言ったのに!
教室が静まり返り、クラス全員の視線が俺に集まる。
静かだが、この空気は好きじゃない。
「最上くん、その子は誰ですか?」
やばい、どうしよう!
「えっ……と、その、あ、えー……」
「あれ、その子、お前の彼女じゃなかったっけ」
そう言ったのは、唯一事情を知っている浩介だった。
考えられる限り最悪のセリフだ。
余計なこと言いやがって!
教室がざわめきだす。
「えー、かわいいー!」
「お人形さんみたーい!」
「まだあの子、子供だよな、最上のやつ、どういう趣味してんだ?」
「彼女だと?!あんなかわいい子が?!羨ましいぞ!」
誰かが、
「ロリコン慎也だな」
とか言って、俺を茶化す。
途端、
「ロリコン慎也、ロリコン慎也」
と、クラス全員が声を合わせ、手を叩きながらそう言い始めた。
こういう時だけ高校生は団結力がすごい。
ふざけるな。
ロリコンで何が悪い。
そもそも俺はロリコンじゃないし。
「静かに!」
森山がクラスを静かにする。
「えー、最上くん、後で職員室に来なさい」
真剣な顔をして、言われた。
「……はい」
最悪だ……
まさか昨日よりも最悪な日が、こんなにも早く来るとは……
怜のやつは、俺の隣に立って、ニヤニヤしている。
お前のせいでこうなったんだぞ、分かってんのか?
「えー、とにかく!充実した夏休みにするように!以上、解散!」
この担任の良いところは、無駄な話を一切しないところだな。
「ねえ、君、お名前なんていうの?」
「畏怖羅、怜だ」
「怜ちゃんって言うんだ!かわいー!ねえ、一緒に写真撮ろ?」
あいつはあっという間に人気者になっていた。
クラスのほとんどが怜の周りに集まっている。
おかげで俺は呼び出されたってのに!
まあ、みんなと話すネタが出来たってことにしよう。
嫌われてないって確認もできたしな。
くそったれが。
一階の職員室に入る。
「失礼します……」
「こっちだ」
森山が俺を手招きした。
「はい……」
怖い。
「ふう」
椅子にもたれかけ、大袈裟にため息をつき、その後、俺をじっと見る。
怖い。
「あのな、最上、恋愛をするのは大いに結構。先生だって、高校生活の醍醐味だと思っている。だがな、学校には連れてくるな、みんなの迷惑にもなる。分かったな?」
「はい……」
連れてきたわけじゃないってのに。
「もう連れてくるなよ」
「はい、分かりました……」
「なら、もう行っていい」
「はい、失礼しました……」
そこまで激しくは怒られなかったな。
夏休み直前で、夏の暑さにやられたのか?
それとも、勝手に怜が来ただけだって察したのか?
まあ、声がよく通るから怖かったが。
外に出ると、怜が俺のバッグを持って待ち構えていた。
色んな人と話したんだろうな、ニヒヒと笑っている。
もっと悪びれろ。
「さあ、慎也、帰ろう」
「……後で話がある」
「なんだ、愛の、告白か?」
俺は無言のまま、家に向かって歩き始める。
そのすぐ横を、怜は付いてくる。
歩幅が小さいからか、早歩きになっている、が、気にせず俺は自分のペースで歩く。
部屋に着く。
鍵は閉まってない。
この野郎……
「で、話って、なんだ、慎也」
バッグを置き、睨みつける。
「おい!着いてくるなって言ったろ!」
「なんだ、そのことか、だって、行ってきますの、キスを、してくれなかったでは、ないか」
「だけど!」
「だけど、なんだ?」
「ッ……!」
確かにそうだ……
何も言い返せない。
無茶苦茶だが、筋が通ってる。
こういう時、俺は弱い。
「はあ……」
俺が、悪いのか?
「でも、良かったではないか、明日から、夏休み、なのだろう?」
そうだけど……
「これで、この話は、終わりだな、昼食でも、食べようか」
そう言って、怜は、台所に立った。
これから学校に行く時は、こいつにキスしなきゃならんのか?
好きでもないのに?
はあ……
私、今まで誰かと付き合ったことないからさ、どんな感じか分からないんだよね。
だからさ、この物語は完全なる想像なんだよ。
なんで、変かもしれないけど、これからも頑張って書いていきますわ。
それはそうと、読んでくれてありがとうございました!
感想とか書いてくれると泣いて喜びます!
じゃ、またいつか!