未定
春
長いながい廊下を走り抜け、個室に駆け込む
無事到着した事で安堵した僕は少し濡れてしまっている下着を脱ぎ、一気に解放しようとするが思うようにいかない
「んッ…」
ゆっくりお腹に力を込める
そして
しゅ…しゃああああ…
ふぅ、間に合った
でも何故だろう、だんだんとおしりがあったかく…
気怠い朝、おしりの違和感にて目覚めるを得ない状況に陥る
「はぁ…」
部屋中に独特の香りが広がり、お気に入りのパジャマと下着は多量の[水分]にて侵食されていた
もちろん汗ではない
下半身にまだほのかに暖かさを感じながらも、ゆっくり立ち上がる
ぐじゅと湿り気を帯びた音が聞こえ、ぱた、ぱたと[水分]が滴り落ちる
どうしてどうして
悲しみと怒りの感情が波のように交互に押し寄せる
重い足を引きずりながら、キッチンにいる家族に久々の報告する
「ごめんなさい…おしっこが…おねしょしちゃった…」
新しいパンツと制服を身に付け、朝食を何とか詰め込み、家を後にする
桜の花びらがぱらぱらと舞う中、朝の出来事を頭の中から何とか振り払いながら学校へと赴く
夏
体温計が指し示す数字は38.7
座ることさえ困難で僕はベッドに囚われていた
そんな僕を嘲笑うように蝉が鳴いている
新学期を迎えたことへのストレスでしょう
無理はせず安静にしてください
何かあったら呼んでね
という声が近くて遠くで聞こえる
どれくらい時間が経っただろう
気がつくと全身がぐっしょりと濡れている
やってしまったか?と思ったがどうやら発汗によるものの様だ
次の瞬間、頭のてっぺんから足の先まで酷く強い生理的要求に支配される
少しでも動くともう漏れてしまいそうだった
声を出そうとした瞬間
しゅ…しゅうぅ…
「あ」
じわじわとパンツがおしっこで湿り気を帯びていく
止めようとするが高熱の身体ではもちろん上手く出来ない
おしっこはパジャマに浸透し、念の為に用意していたバスタオルにさえダメージを与えていく
しゅう…しゅうぅ…
恥ずかしい香りとあたたかさが僕を包み込んでいく
「ふっ…ふぇっ」
悔しさと恥ずかしさでぐちゃぐちゃになりそうだった
頭ではわかっていても対処不可能な事態に僕は静かに涙を流す事しか出来なかった
秋
白い下着にスルッと足を通す
意外と履き心地が良いこの下着は世の中では紙おむつと呼ばれている
夏以降、ストレスで日毎に増えるおねしょと尿量に、更にストレスも増えるという負のスパイラルに陥っていた僕は、自尊心を失いかけていた
そんな僕を見かねた家族が用意してくれたのだ
しかし、こんな赤ちゃんみたいなマネは簡単には受け入れられない
でも今日だけなら…
そんな思考を巡らせつつ、眠りについた
これならきっと大丈夫だろう
おしりはぬくもりと安心感に包まれていた
不快感で目覚める
ただお尻の辺りを触ると確かに濡れていた
どうして
なんで
涙が込み上げる
満月で照らされたベッド上には、おむつの許容量を超えた僕のおしっこの海が広がっていた
冬
「ん…」
僕の布団に冷たい空気が巡る
もう替えておこうね
冷気とは反対にあたたかく優しい声に朦朧としていた意識が覚醒する
「ごめん…なさい…」
僕のおむつはたっぷりとおしっこを吸収し、ふっくらと丸みを帯びていた
寒さに比例するように更に僕のおしっこの量は増えた
寝ている時だけでなく、起きている時にさえパンツをぐっしょりと濡らしてしまう日さえあった
そんな僕に家族は優しく寄り添ってくれた
特に夜のおむつ交換は申し訳なさと情けなさで胸が苦しくなる
いつかきっとなおる
いつかきっと
そんな気持ちとは裏腹に僕のベッドには意図しない世界地図が描かれ始めていた