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魔王軍の人造勇者の軌跡  作者: 山吹色の大妖精
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ポセイドンの宴

「ねえねえ!この貝の首飾り良くない?」

「えぇ、十分似合います。アリシア」

「……」


 彼女達と共に買い物に出かけることになったが、俺は今、アリシアの性格に驚いている。出会った頃の彼女は落ち着いていたが、今は王女とは思えず、ごく普通の少女としての快活さが出ている。


「もぉ、カルナも何か言ってよ!」

「…良いと思う」

「むぅ…そうだ!カルナも何か欲しいものは無い?」

「欲しいもの?」


 アリシアの言葉に俺は首を傾げて少し思考する。


「…考えたことも無い」

「えーっ!?」

「…驚きました」


 俺の言葉に驚愕を示す二人。


「勿体ないよ!欲しいものの無い人生なんて勿体ない!」

「そうなのか?」

「そうよ!」


 アリシアにそう言われるが、こういう(欲を持つ)のは難しいと思っている。理由はそれ(欲望)とは俺にとって未知のものだからだ。


「…しかし、俺には欲を持つということを知らない。俺にはどうすればいいかわからない」

「むぅ…」

「待ってくださいアリシア、貴女から聞いた彼の話では未だ彼は赤ん坊の様なものです。きっとこれから、彼は欲を持つでしょう」


 セイラの説得にアリシアは悩んでいたが、ため息をつく。


「…そうね。ごめんねカルナ、無理を言っちゃって」

「いや、構わない。今はお前の望みを優先しよう」

「ふふっ、ありがとう!カルナ!」


 この後はアリシアの買い物に付き合った。その間に屋台の食べ物を食べてみたが、味わったことの無い初めての味に目を白黒させた。そうしている内に城の方では宴の準備が整ったらしく、俺たちは城の宴会場へ向かった。


「…すごく人がいる」


 宴会場には先生やその弟子達がポセイドンの人たちと話していた。他にも色んな人たちが談笑している。そして奥にはホウェル王がいる。ホウェル王は俺たちに気づくと立ち上がる。それに気づいた会場にいる人たちは黙り始めた。


「皆のもの!今日は我が娘が帰って来たことで気分が良い!飲んで食って笑え!乾杯!」

『乾杯!』

 

 乾杯という声と共にさっきのとは比べ物にならない程の賑やかな雰囲気に会場は包まれた。その熱気に当てられて動けないでいると、隣のアリシアがこちらの顔を心配そうに覗き込んできた。


「カルナ、大丈夫?」

「あ、あぁ…」


 港町の時もそうだったが、目覚めて以来、俺はこんな光景を見たことが無かった。しかし、俺は自分の胸の中にあるナニかを知っている様で知らない。しかし……この光景を見ていると、


「暖かい」

「え?」

「この光景を見ていると、胸の奥が暖かいんだ」

「…そっか」


 アリシアが微笑んでいると、会場の扉が大きな音共に開いた。そこから入ってくる一人の鎧を着た男性はこう言った。


「申し上げます!混沌派の戦艦を確認しました!」


 その報告に会場中にどよめきが走る。敵を見つけた。そう判断した俺の今すべき行動は決まっていた。俺は即座に港へ向かうべく走り出す。


「カルナ!?」


 後ろの声を無視して道を走り港へ到着すると、海の向こうには三隻の混沌派の戦艦が大砲を撃っていた。


「【Cannon(撃ち落とせ)】」


 俺は敵の砲弾を極太のビームで薙ぎ払った。そして…


「【Jump(跳べ)】」


 地面を強く蹴って高く跳んで敵戦艦に乗り込む。


「何だ貴様!?」

「フンっ」

「グアっ!?」

「敵は一人だ!囲んで打ち倒せ!」

「【Typhoon(吹き荒べ)】」

『うわあああああ!?』


 まずは手近にいる魔族を一人気絶させて囲まれたところを狙い目に嵐を呼び起こして吹き飛ばす。後二隻

…いや、ポセイドンの戦艦が混沌派の戦艦を鎮圧していて後一隻だ。


「ここからなら…【Genocide(殲滅せよ)】【Cannon(撃ち落とせ)】」


 船底に穴を開ける様に撃ち込み、敵戦艦を沈める。混沌派の船員は小型船で脱出しているが、ポセイドンの戦艦が先回りして捕捉されたことで投降した。


「終わったか…【Jump(跳べ)】」


 戦闘終了を確認したので俺は後のことをポセイドン軍に任せることにした。宴会場に戻るとアリシアがやってきた。


「お帰り、カルナ」


 アリシアにそう言われて一瞬思考が停止したが、先生との間でいつも行われていることを思い出して俺はこう言った。


「ただいま、アリシア」

「…うんっ!」

「ワハハハッ!!アリシア王女を助けたその手腕、中々のものだったな!」

「あんたは?」

「バトルフェルドさん!」


 アリシアと話していると後ろから大きな笑い声を出しながら俺の能力を評価する大男が現れた。アリシアはこの男をバトルフェルドと呼んでいるらしい


「俺はバトルフェルド・シーサーペントだ!ホウェル王の直属の騎士だ!よろしく頼む」

「あぁ、俺はカルナ。よろしく」

「うむ、これから共に戦う仲だ、期待している」

「ん?どういうこと?」


 バトルフェルドは“これから共に戦う仲”と言ったので気になって聞いてみた。そしたらバトルフェルドは


「俺も混沌派の撲滅部隊に出頭することになったのだ。これはホウェル王の決断だ」

「へー、そうなんだ」


 俺はバトルフェルドの言うことを理解して納得する。そして肌で感じるこの男は恐らくセイラよりとても強いと直感が告げている。そう思考しているとホウェル王の声が聞こえた。


「皆もの!混沌派の襲撃は治った!そしてこのことをすぐに他国に伝えて、緊急の遠隔会議で決定付けられたことがある!良く聞いてくれ」

『……』


 その場が沈黙に包まれて全員の視線がホウェル王に集中する。そしてホウェル王はこう言った


「ここにいる我々水の国ポセイドンにて選ばれし優秀な戦士たちは、明後日の早朝に戦の国アレスに向かって、混沌派撲滅部隊のチームアップを行う!」


 俺はここから混沌派との戦いが本格的に始まるのだと理解した。

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