第1話~復讐の地
初投稿なので駄文ですがよろしくお願いします!
今から約二年前の7月7日の七夕…僕は姉を殺された…
殺されたと言っても、明確な証拠はなく、死因は飛び降り自殺。
だが不自然でならないのだ…底辺高校とは言え、高校教師だった姉が、誰にも騒がれることなく、
屋上から飛び降りて死亡するのなんてことが…
その思いと疑念を抱き続けながら二年間生きてきた僕は、今日というこの日をずっと待ち続けていたのだ。姉が殺された高校に新入生として僕は入学をする。一見すると、特段な特徴がないこの高校だが、ネットや地元の噂では名前さえ書ければ入学できるとまで言われるほどの底辺である。
現に僕も勉強や運動は得意ではなく、むしろ、落ちこぼれといっても過言ではない。
そんな自分が大した努力も、勉強もせずに入学できたのだから、程度は知れている。
まるで新入生の入学を祝うがごとく、校舎には日が差し、桜も満開だ。
本当なら僕もこの光景に心を踊らされていたのかもしれない。確かにこのふたつは希望だ。
真実を掴み、復讐を果たすと固く誓った僕にとってはね。
僕が最初に近づくべきターゲットは、この学校の生徒会長にしてヤンキーたちの頂点に君臨していたとされる桜優里という三年生の女子生徒だ。なぜ僕が彼女に近づくのかというと、答えは簡単である。姉…柚由さんがよく話題に出していたのも事実だし、ある協力者によると彼女が姉の第一発見者だからである。
復讐をするにしは好都合とでも言うべきか、僕と姉はいろんな複雑な事情があり、苗字が違うし、
血もつながっていない…僕は生みの親の顔も存在も全く知らないのだ。
そんなことを考えていると、入学式が終わり、典型的なやり取りのホームルームも終わり、
明日以降の流れについて担任の先生が話し始める。どうやら明日は自己紹介やら何やらあるそう。
そして放課後の今、僕は桜優里らが拠点にしているとされる応援団の部室へと向かった。
いきなり、接近しても怪しまれるのが関の山。だからまずは不審な動きをして、誰かに絡まれるのを待とう…
自分の顔が見えないものの、僕が挙動不審な様子をみせると、部室からは今時流行らない短ランとボンタンをなぜか着こなしている中年のおじさん…?のような人が出てきたのだ。
「なんだ?一年坊主がこんなところになんのようだ?さっさと帰んな…」
これは丁度いいチャンスだ。ある程度、僕は復讐をすると誓った時から、柚由さんから指導してもらっていた空手を更に独自に鍛錬を積んだ。今の自分がどの程度、通用するかこの人で試そう。
「えーっと、別に何も用事はないんですけど、喧嘩を売ってるってことですか?」
自分でもわかるくらいに慣れていないセリフと態度を示すと、相手は胸倉を即座に掴んできた。
「入学式から病院は嫌だろ?今なら許してやんよ…」
その力強い手を振りほどくと、相手は殴り掛かってきた。正当防衛を成立させるために敢えて一発もらった僕は正拳突きを腹に食らわせ、反撃する。
「て、てめぇ…なにもんだ…そんな地味なツラしてる割には、や、やるじゃねぇか」
次の瞬間、扉を開けたのは、桜優里だった。整った黒い長髪にモデルといっても過言ではない足の長さ。そして今の状況には似合わない笑みを僕に向ける。この人が本当に番長…なのかな?
「ごめんね、なんか勘違いさせちゃったみたいで!」
その優しい声音とどこか純粋な振舞いに僕は言葉を失い、喉を詰まらせてしまう。
いや待てよ…彼女に自然に近づくにはやはり恋という感情を利用するのが一番だ!
「えっと、桜優里さんですよね?駅前で見たときと同じで綺麗だ!ごめんなさい…つい近くでお顔を拝見したくてこんなことを…」
おそらくこんな風に異性から言われるのは慣れているのだろう…その証拠に彼女はすかさず、
営業スマイルで軽くあしらってきた。
「ははは、君おもしろいね~気に入っちゃったかも~さぁさぁどうぞどうぞ」
彼女に手招きされた僕は部室に入ることに成功した。そこは部室というよりもまるで、
不良チームの典型的なアジトといった雰囲気だ。なぜか部屋中に場違いなぬいぐるみがあるのは、
彼女の趣味なのだろうか…
「おめぇ~岸本を一発で沈めるなんて、なかなかやるな~!さっきの動き空手か?お~わりぃわりぃ、俺は山尾アイクだ。まぁ見ての通り、日系アメリカ人だ。はははは」
そう気さくな雰囲気で話しかけてきた彼はかなり体格がよく、一言でいえばめちゃくちゃ強そうだ。
「ったく岸本ちゃんは早とちりで一年生にやられるなんて情けないな~」
アイク先輩?に同調するかのように軽いノリでリズムのように言葉を繋げたのは、
どこか不良の雰囲気というよりは、おぼっちゃま?優等生?みたいな感じの王道的なイケメンだ。
「ちなみに俺は秋川楓、よろしくな!残念だけどよ~優里は恋愛とか男とかには興味ないぞ?
というかこいつはやめとけ、仮に夫婦喧嘩になったら殺されんぞ」
「ずいぶんとひどい言い草だね~私だって女の子なんだから気を遣いなさいよ!」
男女間の友情は信じれないタイプだったが、確かにここには存在していそうだ。
「悪かったな坊主、俺の早とちりでよ、先輩たちもすんませんした…」
さっき僕が倒してしまった岸本さん?がみんなに頭を下げる。この人、確かに血の気は多そうだけど根っこから悪い人って感じがしないね。というかここにいる人たちみんな、確かにヤンキーはヤンキーだろうけど、悪人とか人に危害を加えることはなさそうな気がする。
「そういえば桜先輩、さっき弟の大吾さんが何やら揉めていたようですぜ、相手は5人くらいいましたけど大丈夫すかね?なんなら走りますが!」
岸本さんがそういうと、桜先輩は頭を悩ませたような表情でこめかみを指で押さえた。
「まったく…あの子って誰に似て、そんな喧嘩ばかりするんだろう…」
あの子?岸本さんが言っていた弟のことか…桜先輩に弟がいるという情報は初耳だ。
よし、ここは僕が納めて、彼女たちの信頼を少しでも得るとしよう
「あの先輩?お詫びと言ってはあれですけど…僕一年なんで様子見てきますよ!あんまり三年生とかが出ちゃうと大きくなると大変なので!」
僕が物分かりがよいような態度を示すと、桜先輩は僕の前へ詰め寄り、耳元で囁く。
「君、本当は何かやましいことでもあるんじゃないのかな?先輩、気になっちゃうなー?」
おそらく僕の耳元は赤くなっているだろう…それは隠し事を追求されているからではなく、
こんなきれいな女性に耳元で囁かれたからだ。やばい…そんなに近寄らないで!
「…まぁいいや、とりあえず弟のことお願い!暴れるようだったら5発くらい殴っても問題ないわ!」
そんな笑顔でそんな怖いことを言わないでほしい…なんて思う。やはりこの人もヤンキーなんだなと認識をした。
そして僕は、揉め事が起きているとされる屋上へと向かった。屋上へ向かうと、金髪でいかにもヤンキーですよ!といったような少年を複数人が囲んでいた。しかし、次から次へと、まるでボーリングのストライクかのようにその少年は自らを囲んでいるヤンキーたちをなぎ倒していく。
「てめぇら口だけか?群れでかかってくるなら何度でもぶっ殺してやるよ!」
気づけば周囲は騒ぎになっていて、桜先輩の弟らしき人は倒れている相手を何度も何度も殴り飛ばし、ついでかのように周囲の屍も同然の存在を蹴り飛ばす。
僕はすかさず、彼の今にも殺しそうな勢いの手を止める。すると瞬発的に蹴りが飛んでくるが、
何とか空手の動きでかわす。
「おもしれぇじゃん、この雑魚たちの代わりにてめぇがやってくれんのか?」
「い、いやぁ…僕はその喧嘩とか興味ないし、君のおねぇさんに頼まれて止めに来ただけだからさ!ねっ?もう騒ぎになると初日から停学とか君も嫌でしょ?」
焦り気味でそう説得すると、彼はなぜか不気味にほほ笑む。獣の本能的な怖さを感じられた。
「とぼけんな…お前のさっきの動き、そしてその目、そんな地味なツラには似合わねぇ何かがあんな?」
姉といい弟といい、どちらも鋭い。ただここは彼の敵になるのではなく、味方になったほうが後々有利にことが進みそうだ。
「じゃあこういうのはどうかな?君と僕で天下を掴む!昔見ていた漫画にあこがれてさ…福島制覇とか!」
人生でこんなにもダサい言葉を発することにはなるとは思わなかった。まぁ当然、そんな言葉は彼には通用しなかった。結局、その後、周囲が大騒ぎしたので僕たちは退散し、先生から一応事情を聴かれすっかり、もう夕暮れだ。
「弟のことはありがとうね…市原くん、あの子、誰に似たんだか、すぐに手が出ちゃってさ…
年頃もあるんだろうけど、なかなか関係がうまくいかなくてさ、もしよければ友達になってあげて?一目置いているみたいだしさ?」
校門前で待ち伏せしていたかのように彼女は真剣な表情で語り始める。でも彼と友達になるのは無理じゃないかな?いかにも人を信用していない一匹狼みたいだったし…
「あと、明日から部室に自由にきていいよ!なんかみんな市原くんのこと気に入ったみたいだし!それに…」
「…それに?」
その自然な問いかけに対して彼女は僕の心を震わせる一言を発した。
「君ならきっと、できるのかもしれない…あれにたどり着くことがね…」
「あれってなんですか!?」
僕は思わせぶりな発言に取り乱し、つい詰め寄ってしまい、彼女を少し驚かせる。
「うわっ!ちょっとびっくりした!意外と強引ね!ハハ」
その後も彼女は誤魔化すだけで核心を口にはしなかった。でも僕の勘が正しいのかはわからないけれど、彼女と組むべきだと言っている。敵意を向けるのではなく、味方として。
こうして僕の復讐の地における新たなる生活が幕を開けた。
つづく…