消えたご神体
本当に暫くぶりの投稿です。まだまだ続けて参りますのでお読みいただけると嬉しいです。
消えたご神体
毎年十二月ごろに、とある地区で、「山の神」のおまつりがある。山の神様のお祭り自体は珍しいことでないのだが、そこの地区の祠は、社の形をしていて、ご神体とされる石が結構たくさんある。そして少し離れたその横に、ただの大きな石の祠があり、その中にもご神体がある。石に刻まれた文字などからも、相当古いもののようで、霊験もあらたかなので、丁寧にお祭りをしなければと宮司からも言われていた。
年に一度のお祭りのときには、白紙で神様の御衣を作り、ご神体に着せてさしあげる。
お祭りには、毎年座元とよばれ各戸を輪番制にまわる決め事があって、お祭りに使う注連縄やらお供えなどを準備してくれる。山の神様のお祭りも、そのように準備万端整えて、始められるはずであったが……。
「ああっ!」
お祭りの前に、突然、座元の一番の長老が叫んだ。
「どうされましたか?」
「ご神体、先生、ご神体が入っとらん」
思わず、彼の指さした石の祠に目をやると、中はすっからかん。そ、そんなあ……。
「みなさん、とりあえず探してみてください」
こちらの動揺を悟られないよう、あえて冷静に伝えた。しばらくして、
「あったあ、多分これじゃろ」
長老の安堵した声が聞こえてきた。
考えるに、その石の祠は、少し傾いていて、小さな地震でも中身が転がり落ちてしまいそうな不安定さだった。
とりあえず、海水と同じような塩水をつくってもらい、土のついたご神体をきれいに洗って、無事お祭りスタート。
来年からは、ご神体が落ちないように注連縄で抑えるような形にしなければと強く思った。




