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「お気持ち」とはむずかしいもの

「お気持ち」とはむずかしいもの


神社には、初宮、厄除け、七五三といろんな行事があり、祈願に来られる方は決まって、「おいくらですか」と聞かれる。

「おいくら」……。まずこの言葉に私たちはちょっと戸惑ってしまうのだが、祈願を受ける方からいただくお金を「初穂料」もしくは「玉ぐし料」といって、それは神様にお供えするものですとお伝えする。


神社によって、祈願はひとりにつき、いくらと社務所に看板を出して明記しているところもあるが、実家のように小さなお宮では、宮司はそういうことをするのを嫌がり、「お気持ちでお願いします」とずっと言い続けてきた。それでも参拝の方々は、親たちから教わってくるのか、初穂料と書かれたのし封筒に、それなりの金額を納めてお供えしてくれていた。


平成、令和の時代を迎え、今では宮司に代わり、祈願のほとんどは私が受け持っているけれど、どこか変わってきた。「お気持ちで」という言葉はまず通じない。あるとき、お気持ちでといったら、まったく何もなく帰ってしまった人がいた。またあるときは、ほんのわずかの硬貨をお賽銭代わりにくれた方もいた。祈願が終わるや否や、財布をとりだし、いくら?と聞いてきた人もいた。


これじゃだめだよ。ちゃんと決めなきゃと話し合い、聞かれたときには、「おひとりさま~円からお願いいたします」と、最低の金額を答えるようにした。七五三などの場合は、ひとりずつのお土産品を用意するので、人数分の初穂料となるのだが、そのへんの理解が乏しい人がいる。けれども、神様にお仕えしている立場として、とりわけお金のことは強くは言えないものだ。


先日たまたま、神社関係の新聞に投稿されていた記事を読んだら同じようなことが書かれていた。

投稿者はやはり女性神職。宮司の父親に相談したら、ひと言つぶやかれたらしい。

「お気持ちとはむずかしいものだね」と。

 そうよ、そうよ。思わず大きくうなずいてしまった。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 難しいですね。 昔から日本は、物事を、また思っていることをはっきり言葉にしない文化だから……。 初穂料。 金額はいくらでもいいと言っても、それなりの経費がかかっているんだから、そこらを考え…
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