ついたちまいり
ついたちまいり
たいていの神社では、毎月ついたちに月次祭というお祭りをしている。私が神職の研修をした、とある八幡宮でも、月次祭は全神職がそろってお祭りをしていた。
前の月を無事に過ごせた感謝と、来る月の息災を願う。実家のお宮は、もともと宮司がひとりで行っていたが、平成の初めより、敬神団体の活動のひとつとしてとり入れることになった。会員は早朝に集まり、三十分くらいの境内の掃除の後、お祭りを始める。朝は女性は忙しい為、当然主流は男性であった。やがて会員の高齢化に伴い、早朝の神事は終わり、令和からは私が引き継いで、午前十時より始めている。時間を遅らせると、女性の参加率は上がるようだ。ついたちまいりには、欠かさずお赤飯。そして神様へのお供えの準備をする。お供えは米、酒、塩、水、これらは基本中の基本。それに加えて、本来なら、餅、魚、海藻、野菜、果物、菓子と続くが、少し省いて、野菜、果物、菓子のお供えを準備する。
菓子は参拝した人に配るため、個包装に限る。最近では、お参りする人がお寿司を作って持参したり、新米の奉納、お菓子や乾物の奉納など大変助かっている。
お祭りは、まず全員で大祓詞を奏上する。今だにマスクごしではあるけれど、ずいぶん声が大きくなりそろってきた。そして、月次祭の祝詞。順番に玉ぐし拝礼。玉ぐしとは榊の枝に紙垂をつけたものに願いと誓いを込めて、神様に差し上げ、二拝二拍手一拝をしてもらう。その間私はひたすら清めの祝詞を奏上している。最後に全員で一拝して終わり。あとはお神酒を始めとしたお赤飯とお菓子の拝戴である。一か月の間は各々の家ではいろんなことがあったかもしれないけれど、とりあえず、元気でここに集えたこと。あたりまえのようであって有難いことを、守ってくれる目に見えない存在に感謝しましょうと話す。このお祭りが、お正月以外毎月ついたちに、令和元年から、一度も休むことなく続けられているのは、本当にありがたいと思う。参拝客の端っこに黒猫が座っているお祭りなんて、そうそうあるもんじゃないし……。




