恋の結末は……。
恋の結末は……。
「恋猫のもどりてまろき尾の眠り」という句があるが、しばらくわが家に出入りする猫たちの落ち着きのなさといったらなかった。お宮のクロも同じである。いつもであれば、朝拝夕拝のご飯タイムは、腰を据えてゆっくり食べるはずなのに、食べている間も気はそぞろ。あっちを見たりこっちを見たり。何とかカリカリをたいらげたとたんに、また妙ちくりんな声をあげながらどこかに行ってしまう。
そう。俳句の季語にもなっているように、この時期、猫は恋に狂う。
一匹の雌猫に、何匹もの雄猫がアタックを繰り返すのだ。我が家に出入りする猫たちは、みんな雄。そういえば、見慣れぬ猫が少し前から家の周りをうろちょろしており、彼女こそ彼らのマドンナだと思われた。だが、はっきりいって、実に不細工。顔も体も全身斑のブチ猫なのだ。せっかく追いかけるなら、もう少しべっぴんさんの雌猫を選んでほしいものだが。
結局、恋のバトルは、クロ、キジ、茶トラの三者で繰り広げられたようだった。
恋の勝者は、貫禄たっぷりのキジか、神の使いと噂されるクロか、若さが魅力の茶トラか、果たして……?
おそらく、斑の雌猫には、三匹のどれも合格しなかったと思われる。
あれほど重症だった恋の病も、憑き物が落ちたように冷めて、彼らはまた普段通りの生活にもどった。けれど、キジは前足負傷でケンケン歩き状態。茶トラは風邪をうつされたのか、クシャミを連発し、クロはといえば、頭の上をケガして、河童の頭のお皿のようなハゲ状態。何とも情けない有様である。
クロのケガは、毎日消毒を続けるうちにずいぶん治ってきたが、もとどおりになるまでは、まだまだかかりそうだ。茶トラの風邪は薬を飲ませて、ひとまず悪化は免れそうだが、キジのケンケン歩きはいっこうに回復できないままだ。
恋に破れた三匹の、不出来な息子猫たちは、恋など忘れてしまったように、今日も平和そうに眠っている。




