表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/43

地鎮祭

地鎮祭

 畑仕事の好きな父は、この頃いろんな花や野菜を植えている。多くの種類の夏野菜は上手く育てばかなり楽しみだけれど、容赦なく伸びる草の手入れがとても追いつきそうになく、収穫の約束は難しいかもしれない。畑を掘り起こすと、柔らかな土くれが気持ちがいいのだろうか。猫たちがこぞってトイレにしようとして叱られている。


 さて先日、地鎮祭をご奉仕した。これまでも宮司とともに何回が助手を務めたことはあるが、ひとりでするのは初めてだ。ご存じのとおり、地鎮祭は家を建てるにあたり、その土地の産土神様、大地主の神様にお断りを申し上げ、工事の安全を祈願するお祭りである。

 敷地の四隅に竹をたて、注連縄を引き回し、中央には神籬をたてる。海の神聖な砂を盛り上げ、そこに埋めたカヤなどの植物を忌鎌、忌鍬の儀式により引き抜き、土を掘り起こす。一連の儀式は、建設会社の方に司会を頼み、早速お祭りは始まった。


 施主のご夫婦は三十代中ごろ。七歳を頭とする三人姉妹がいた。このかしまし姉妹は、いっときもじっとしていない。初めてのことだから心も浮き立つのか、騒ぐのは仕方ないと思っていたが、そのうち、その神聖な盛砂で砂遊びを始めたのである。建設業者の方が優しくとりなすが、聞く耳を持たないとはまさにこのことか。肝心の両親はと、ちらりと横をみると、なんと二人とも笑っているではないか。

 この父親はこんなに早くから、すでに娘たちになめられているのだろうか。「おとうさん」ではなく、「おっさん」呼ばわりである。どちらにせよ、親としての権威はみじんもなく、笑いの中でお祭りは終わったが、これは和やかとはお門違いの、けじめのないお祭りだったことが残念でならなかった。


 少し前まで、両親は怒るときには、声より眼差しで表した。子どもはおのづからしていいこと、悪いことの区別がついていたように思う。

 宮司はため息をつきながらひと言つぶやいた。

「猫でも叱ればわかるのに……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点]  大変でしたね。  こまったでしょうし、なさけなかったのでは……。  これから暑くなります。  お体に気をつけて、お仕事を。  畑をきれいにすると猫がトイレとして使う。  そうなんですよ…
[良い点] 地鎮祭、お疲れ様で御座います。 [一言] 地鎮祭の盛砂で砂遊びとは、何とも凄い事をする姉妹ですね。 大きくなって地鎮祭の意味を知った時に、その姉妹は果たしてどう思うのでしょうか。 出来れば…
[一言] ううむ、これはなんとも…… この子たちの将来が心配になってしまいますね。 お疲れ様でした!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ