権禰宜さん
権禰宜さん
二年間の大阪での研修を終わり、指定神社での実習が済むと、あとは宮司とどこのお宮で、どういう役職で奉仕するかを相談する。
神社には、宮司、権宮司、禰宜、権禰宜という役職がある。権宮司は大きなお宮にしか仕えていないので、ふつうは会社でいえば、社長、専務、常務といった役職に相当するのかもしれない。
最終的に、私は実家の神社で権禰宜という役職として奉仕をすることになるのだが、それは、宮司、禰宜を補佐する仕事でもある。
神社は、数年おきに交代する総代さんたちとともに運営していくのだが、最初に開かれた総代会の席で、紹介を兼ねてひと言ご挨拶を言われたときに、「権禰宜であり、ごんぎつねではありません」と言ったら、大いに受けた。
以来、お宮関係では、常に権禰宜の●●として、書類を作成したり、お祭りの受付をしている。
新型コロナが流行り始める前には、毎日のように社務所に詰めていた。とりわけ、元号が変わる前後はご朱印帳を書いても、書いてもきりなしというくらいで、本来、宮司が書くことになっているが、とても間に合わなくて、権禰宜として、私も横から手伝ったりしていた。
コロナが本格的に流行し始めると、神社本庁からの通達が出された。すなわち、手水のひしゃくの使用禁止、拝殿の鈴の使用禁止など、これまでの参拝の様式をがらりと変えてしまうもので、宮司、禰宜と顔を見合わせ、思わず、ええっと叫んでしまったものだ。
こんな田舎においても、状況はかなり厳しいが、そんな中でも、遠方からでもお参りしたいという方は確かにおられる。そういう方々に気持ちよくお参りしていただくために、宮司、禰宜を支えつつ、奔走する権禰宜の日々を、懐古も交えつつ、これからは書いていきたいと思う。




