生まれたときから
①生まれたときから
「あんたが生まれたときね」
六歳違いの姉が聞かせてくれた、私の出産時のエピソードである。
「家で、お産婆さんがとりあげてくれた瞬間、あんたがオギャアって産声をあげたの。そしたらそれにつられて、飼ってた猫も、そこいらの猫たちも、みんなすごい声で鳴き始めたのよ」
ニャオーン、ニャゴニャゴ、ウオー。
「まるで、自分たちの親分さん誕生を祝ってるような感じだったわ」
幼い姉にとって、その様子は妹の誕生以上にインパクトがあって、いまだに忘れることのできない思い出だという。
偶然にも私は寅年。以来、姉は、自分の妹が猫に対して、並々ならぬ愛情を持つようになったのは、きっと、生まれながらに猫と関わりが深いからだと信じているのである。
真実はわからないが、私が高校を卒業するまで猫はいつもそばにいた。
進学、就職、結婚でしばらく実家から遠ざかったが、その先々で、いろんな猫たちとの出会いがあった。
現在、実家の裏側で、外猫として暮らしているのはキジファミリー。
一方、表で暮らす外猫は、お独り猫のクロである。
「そのまんまのネーミングだね」
夫が笑う。
キジはでっぷり太ったオヤジ猫で、その奥さんが、ロシアンブルー系のグレイ、三匹の子猫たちが、尻尾の先までオヤジ似のキーくんと、本当に見分けのつかない黒猫二匹。クータンと黒ちゃんと名付けているが、多分間違って呼びかけていると思う。
表猫のクロは、名前のごとくの黒猫であるが、尻尾の先が、コの字にくりんと曲がった福猫でもある。お宮にまめに顔を出し、参拝客に愛嬌をふりまく。ただし気乗りしないときは、さっさと帰ってくる。
彼らがゴロゴロとのどを鳴らす音を聞くだけで、幸せな気持ちに包まれる私は、やはり猫と縁が深いのだろう。