見習い神主 実習編①
見習い神主 実習編①
レポートと試験で決められた単位をとり、スクーリングの出席にも合格点が出ると、次に待ち受けるのは、一か月間の実際の神社での実習である。県別に神社庁指定の神社がピックアップされて選べるようになっていた。 私がお世話になることになった神社は某八幡宮。常に参拝者が絶えることのない全国的にも有名な神社であった。
実習第一日目は七月一日だったと記憶している。全国の神社では、毎月一日に月次祭と呼ばれる祭りが行われる。そのため、そこの神社も朝から慌ただしい雰囲気だった。
「来るぞ、来るぞ、来るぞ」
眉間に青筋をたてた年配の神職―彼が私の担当の先生なのだがー上宮をあたふたと走り回っている。
いったい何が来るのか。よほど怖い者かもしれない。待つこと五分。やってきたのは、小太りの小さいおじいさん……と思いきや、その八幡宮の宮司だった。
先生はじめ、数人の神職たちは宮司の前にひれ伏す状態。つられて私も頭を下げるが、宮司さんは優しく微笑みながら、私に激励の言葉をかけて下さった。それからまもなく、月次祭の祭りが始まり、私もいちばんしんがりに並んで参加させていただいた。担当の先生はといえば、祭りの中心的な役割を担っていた。
この神宮内の厳しい縦社会は巫女さんたちの中にもあって、二十代半ばの巫女長を中心に、古い人から順に勢力を保っているようだった。
朝、神社に着くと、後輩の巫女さんたちが、先輩の巫女さんの髪を結っている。きれいに束ねて奉書でまくのだ。短い髪の人にはウイッグも準備されていた。掃除、受付、お守りなどの頒布、祈願者が来れば巫女の舞をおどり、その合間合間に神職の食事の世話や、衣装の手入れなど、片時もゆっくりしていられない。この八幡宮は、八十パーセントは巫女さんたちの力でもっているなと感心することしきりだった。




