スクーリングの悲劇④
スクーリングの悲劇④
スクーリングの目的は、一にも二にも祭式実習。一年次は修祓という行事を完璧にこなせるようになることが目標。
基本動作の反復練習が済んだ後は、割り当てられた班で、宮司、大幣後取塩湯後取の役を交代しながら、修祓の練習を行う。
修祓とは、お祭りを始める前に、その場所、神饌、参拝者を祓い清める、最も大事な行事である。
どんなに小さな祭りでも修祓なしには始まらない。宮司が祓詞を奏上し、紙垂をつけた大幣とよばれる榊の枝を、宮司、祭員、来賓、一般の参拝者の順に、左右左となでるように祓う。
続いて、塩水を入れた容器に榊の枝をひたし、左右左と祓っていく。
幼いころから、祖父や父たちの祭りの様子を目の前で見ていながら、修祓の仕方をよくわかっていなかった自分も情けなかったが、足の動き、手の動き、すべてに決まりがあり、何かひとつ注意を受けると、もう動けなくなってしまう。
今こうして、過去をふりかえることができるが、そのときは自分が何をやっているかもよくわからず、進左退右、起右坐左、進下退上、起下坐上とひたすら足の動きばかりをぶつぶつ唱えていたものだった。
そんなあるとき、自分がやってきた数々の点がようやくひとつの線となり、流れとして理解できる瞬間が来たのだった。
スクーリングの間は、毎朝毎夕、朝拝夕拝があったが、その行事の当番となった班は、朝から大変だった。当番の中でも宮司役にあたってしまった私は、緊張の中、みんなが祝詞を奏上する先導の役割を体験させてもらった。
今はあたりまえにやっていることが、習い始めはいっこうにわからない。けれど続けていれば、そのうち必ずできるようになる。世の習いごとは何でもそうだと思うが、私にとっては、今なお身をもって体験し続けていることである。




