表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/43

スクーリングの悲劇①

スクーリングの悲劇①


 八月と十一月には四泊五日の日程で、大阪国学院での祭式実技のスクーリングが待っていた。宿泊場所は、もちろん自分で探さなくてはならない。私は毎回、学院にいちばん近い東横インにお世話になることにした。


 毎朝着いた順から着かえをする。ふだん使う実技の教室を、カーテンで仕切り十人ほどの女性の更衣室をこしらえる。初めて出会う人同士、なるべく素肌を見せないように、さっさと装束を身に着けていくのだが、毎朝ぎりぎりにかけこんでくるKちゃんという女性にはたまげた。恥ずかしさもなんのその。上着からストッキングまで、どんどん脱ぎ捨てていくのだ。あまりの脱ぎっぷりのよさに女性陣は唖然。

当時まだ二十代だった東北出身のKちゃんは、一番最年少で、少女のように愛くるしい顔だちをしていた。講習の時には、本当に淑やかなのに、なぜ着かえのときだけは、あんなに大胆だったのだろう。今でも同期生の語り草となっている。


 着かえのあとは朝拝。そして九時から五時までみっちり授業。六十人前後はゆったりと入れる大きな教室で、祭式の練習をする。堅い畳の上だったと思うが、毎日八時間は正座。それに耐えきれない人は、悲しくもそこで没落である。


 まずは基本動作。祭式で神様を拝む身体の傾きの角度は、三十度、六十度、九十度いろいろある。

 そして、男性なら笏、女性であれば扇の持ち方や、それらを持つ角度などを体得させられる。

 次に足の回転方法。ひざを使って前後に進む膝進、膝退等々。皆いっせいに、拝とよばれるおじきをしたところでストップをかけられ、十人の講師がいっせいにチェックに走る。もっと曲げろだの、猫背にならないだの諸々諸注意を受け、何度も身体で覚えさせられる。


 そういうことを延々と繰り返し、一日終わると、足腰はガクガクで、五十代六十代の受講生は、悲鳴をあげていた。そしてほとんどの講習生が、足腰に湿布をはって、翌日を迎えるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 第6部分からの感想を纏めて失礼します。 動物との触れ合いは、心を明るくやさしくしてくれますね。子供時代は動物と遊んであげていたつもりでしたが、実際は遊んでもらっていたのかもしれないと、ふと…
[良い点]  正座八時間。  これは耐えられませんね。  いつも行く護国神社の若い巫女さんばかり見ていたので、イメージが変わりました。  神主さんになるのは大変です。
[一言]  スクーリングが自分の想像していたのと違って、少しびっくりです。 イメージとしては、礼法の講義みたいな感じでしょうか?  自分が想像してたのは、滝に打たれたり、火渡りしたり、深山幽谷を法螺…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ