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ここからスタート!

ここからスタート!


 神主になる、そして講習を受けに行くと決めたからには、諸準備が必要だった。通信教育のための教科書は、学校で貰えるとして、こちらでそろえるのは、襦袢、白衣、白袴、白帯、白足袋、草履、扇である。扇というのは、男性の笏に代わる、祭祀の時の女性の必需品だ。

これらは、デパートで売っているわけでもなく、県外の専門の装束店に電話注文する。心得たもので、そこには講習用のセットがあり、袴だけは個人の身長に合わせて作るので、遅めに届くらしい。


 さて、ひととおりそろって送られてきたところで着付けの練習に入る。

 襦袢を着て、白衣を着る……ここまではいい。白帯の巻き方。たるまないよう引っ張りつつ、しめていくのだが、これがなかなか難しい。そしてようやく袴をつける。前と後ろがわからない。留め具がある方が後ろというのがやっとわかり、袴の帯を結ぶのだが、これが男性女性と結び方が違うらしい。結び方の教本を片手に、何度も練習してようやくそれらしき形となる。


 そうこうしているうちにトイレに行きたくなり、はて? この袴は、巫女さんがはくスカートタイプの行灯袴でなく、ズボン型だ。いちいち帯をといて脱がなくてはいけないのか? そんなことしてたら授業に間に合わなくなる。悩んだ末に講習経験のある、県外の先輩神主さんに電話をしてみた。

「ああ、そのときはね、一本足をぬくのよ。ちょっとコツがいるけどね」

 要は、ひとつの側に両足を入れてトイレに行くのだという。

 おそるおそるやってみる。時おりうまくいかないときもあるが、何とかなるかな……? 

 しかし、最近は年のせいか足を抜こうとすると、腰のあたりの筋がギクッとするときがある。

 怖いことである。そんなことでぎっくり腰になりたくない。


 実際に講習が始まってから、装束を脱いだり着たりを相当早くしないと間に合わない場面に何度も出くわした。

 神主修行は、まず、着付けからスタートだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] なんと。装束から修行とは目から鱗です。 トイレは困りますね!
[良い点]  トイレに行くエピソード。  神主になるのは、またなってからも大変なんですね。  もらしそうです。
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