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【朗読劇・ボイスドラマ・舞台演劇にて使用可能】 窓と廊下

作者: 人野かどで

アドリブ大歓迎。改変、ご自由になさってかまいません。脚本として使用する場合は、事前連絡不要でございますが、連絡をいただけますと大変嬉しいです。


メール:takap4106@gmail.com

Twitter:ojigisou4106

登場人物


廊下を歩く人(A)

窓の向こうで歩く人(B)       


※二人の性別は問わない



先の見えない廊下を、Aが歩いている。時折聞こえる水音や人の声、叫びが廊下に木霊す。人の声に年齢や性別の統制はない。Aはその全てに注意深く反応することはしないが、稀に音の方を見つめては、鼻を鳴らして去って行こうとする。


廊下にはいくつも窓のようなものが設けられ、そこから人の声は聞こえてくるようである。


B   「おい! おい!」

A   「……」

B   「おい! おまえだ! おまえ!」

A   「……?」

B   「こっちを見たな! 見ただろ! おい! おまえだ!」

A   「俺(私・僕)を呼んでいるのですか?」

B   「そうだ! こっちにこい!」



AはBが閉じ込められている窓に近づいていく。二人が並んで歩き出す。



A   「なにか?」

B   「たのむ! こっち側に来てくれ! もう俺(私・僕)は限界なんだ!」

A   「はあ……」

B   「もう、目の前に壁があるんだよ! もう終わりなんだ! このままじゃ終わっちまうんだ!」

A   「はあ……」

B   「俺は! 死んじまうんだ! だから! 早く助けてくれ!」

A   「しかし」

B   「ああ!」

A   「俺の道は、まだまだ先がありそうなのですよ」

B   「ああ!」

A   「だから、ここで道を違えたくはないわけです。あなたと俺が一緒になれば、またこの廊下とは違う道を歩むことになるわけでしょう」

B   「だが! だが! 俺はもう死んじまうんだぞ! 見捨てるのか! 一度見た俺を見捨てるのか!」

A   「……」


B   

「本当に、偶然……いや、必然かもしれねえ! 俺とお前が出会ったのは運命かもしれねえ! ずっと窓の向こう側を見つめながら歩いてきたが、お前みたいに俺を見つけてくれた人は初めてだ! だからよ! ここは、縁だと思って!」


A   「それ、なにか俺にメリットがありますか?」

B   「はあ?」

A   「だから、なんか必死ですけど、あなたを助けることが、俺に何か良いことをもたらしてくれるのかって言ってるんですよ」

B   「そ、そんなのわかんねえけどよ」

A   「ではさようなら」

B   「まてよ! おい! ……俺はお前の名前を知ってる!」

A   「……名前?」

B   「そうだ、名前だ。お前の名前」

A   「どこで知りました? 俺の名前」


「た、確か数年前だ。偶然、いや、必然だ! きっとそうだ! あのときお前は……そう! 死にかけてた! 道ばたでくたばりそうだった! あまりに可哀想だったから、俺はお前に飯をやったんだ! そうだ、あれは偶然なんかじゃねえ! 運命だったんだ! ここでまたお前に出会う、運命だったんだ! だから、お前もさ、俺を助ければ、きっと、未来で良いことあるぜ!」


A   「……そうですかね?」

B   「は……」

A   「俺は、あなたに助けてもらった。俺がその恩を返す。……それで終わりません?」

B   「は、え」

A   「一回、一回、助け合った。もう次はないですよね?」


「い、いや! 約束する! お前が今助けてくれたら、今後、見返りなんて求めず、絶対にお前を助ける! 助け合いだ! 困ったときはお互い様だ! ああなんて美しい人間の絆!」


A   「僕はもう困る事なんて無いので。ほら、まだ先は見えない。僕には、果てしなく彼方まで、まだ見ぬ未来が待っている」


A、足を速める。


B   「待ってくれ! 助けてくれ! 頼む! 助けてくれ! 頼む!」

A   「さようなら」


Bの叫びが遠のいていく。静寂が訪れる。Aの足音だけが響き渡っている。

しかし、突如Aの進む廊下が狭まり、窓が消える。光が差し込まず、真っ暗な空間を歩き出す。


A   「……?」


Aは不安を感じ、身を縮めながら歩く。ついにしゃがマナ蹴れば歩けないほど狭くなり、先の見えない不安に駆られ、壁にたどり着く。


「壁だ、壁がやってきた。これは、あの人を助けなかった報いだろうか。いや、違うな。これは、運命だ。俺はどのみちここで死ぬ定めだった。助けていても、結局同じだったさ。むしろ、この真っ暗な空間に、あの人を連れてこなくて良かった。あの人は、明るいところで死ねたのだから」


暗転


人々が歩いている。彼らもいつか壁にぶつかって死んでしまうのだ。


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