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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

音のない歌詞

鏡を壊す。

作者: 渋音符



 ざあざあと降る雨に、ひっきりなしに叩かれる。

 地面や扉の気持ちになったことはあるのかい?

 傘を差してやってはくれまいか。

 だんだんと増す雨や。

 しどろもどろに叱られる、僕らや誰かの気持ちになったことはあるのかい?

 船を出してやってはくれまいか。


 雨水を吸ったブレザー。

 肌に張りついたカッターシャツ。

 重くなったスラックス。

 浸水したリュックサック。

 風に飛ばされそうな傘。

 マスクに溜まった雨水。


 鈍器で、鏡を壊す。波紋を広げる。

 破片が飛び散る。刺さりっぱなし。

 気持ち悪さが先行する。

 見ている分には退屈だ。

 早く帰って、シャワーを浴びさせてくれ。


 延々と来ない晴れに、信頼なしの目を向ける。

 てるてる坊主の気持ちになったことはあるのかい?

 雲をのけてやってはくれまいか。

 連綿と続く梅雨に、節操なしに起こされる。

 雨戸と屋根との気持ちになったことはあるのかい?

 硝子を割ってやってはくれまいか。


 湿気を帯びた髪の毛。

 水を含みっぱなしのバスタオル。

 乾かない洗濯物。

 治らない偏頭痛。

 靴底に溜まった水玉。

 玄関先の洪水。


 雫がマンホールを叩く。波紋を広げる。

 飛沫が飛び散る。濡れっぱなし。

 気持ち悪さが先行する。

 立っているだけで憂鬱だ。

 早く帰って、シャワーを浴びさせてくれ。


 捨てた傘が流れる。

 濡れた髪が邪魔をする。

 黒くなった空の上。

 震えている体。

 地面を叩く雫は。

 空からだけじゃなかった。


 涙が、心を砕く。波紋が広がる。

 破片が飛び散る。壊れっぱなし。

 気持ち悪さが先行する。


 言葉が心を裂く。波紋が、千切れる。

 中身がこぼれて、流れっぱなし。

 気持ち悪さが先行する。


 ここにいるだけで辛辣だ。

 ここにいるだけで残酷だ。

 

 早く帰って、シャワーを浴びさせてくれ。

 放っておいて、寝かせてくれ。


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