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パイス王子にピース、その他の攻略対象者もこの世界には実在する。顔は見たことがなくても名前くらいなら聞いたことがあった。ピース以外に思い出したことをノートにどんどん書き留めていく。
(登場人物がこれだけ揃っているということは、ヒロインもこの世界にいるのかもしれない。)
ヒロインは絶世の美女で皆から愛されていた。それにヒロインに嫉妬をしたり、意地悪をする様な人物は現れなかった。少なくともゲームの中では「カレサバ」はとても平和な世界だった。
(会いに行ってみようかしら。)
幸い、ヒロインが働いていた食堂はスチル画面で何度も見たので覚えている。今まで意識をしたことがなかったけれど、大体の場所の目安もついている。
(お小遣いを貯めて、パイス王子お気に入りのカレーを食べに行ってみよう。)
ヒロインに会うことも楽しみだが、カレーも楽しみ。私はゲームの世界であり、現実である今をで思いっきり満喫しようと心に決めた。
その夜、私は布団の中で閃いた。
(私も食堂でバイトしたら良いんじゃない?そうすればお金も稼げるし、ヒロインとも仲良くなれるかもしれない。しかも王子様がお忍びでやってくる可能性も大だわ。)
この思い付きに、私は天才だと感じながら眠りについた。
部屋の外からクミンの足音が聞こえてきた。
「お姉ちゃん、朝だよ~」
とクミンが部屋に入ってくる。クミンは今日も早起きをしたようだ。私も今朝は目覚めが良かった。クミンを抱え上げて、
「おはよ~~~。今日も素敵な朝ね。」
と言ったら、クミンは嬉しそうな顔をしていた。
「もっと高く上げて。」
「もちろんよ。」
だってクミンは可愛いし、私は気分が良い。クミンは
「もう1回。もう1回。」
と何度もせがむ。
運動不足の私にはかなり大変で、気持ちは高い高いだけど、最終的には低い低いになってしまった。
(きっと明日は筋肉痛ね。)
(早速、今日の帰りにでも食堂に行ってみようかしら。)
そんなことを考えながら足取りも軽く学校へ向かう。この時私はすっかり昨日の出来事を忘れていた。