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「んん・・お姉ちゃん?」
大きな声を出したせいでクミンを起こしてしまった。
「起こしちゃってごめんね。」
「ううん、僕お母さんのところに行くね。」
「うん、わかったわ。」
クミンが部屋を出たのを確認して、鍵付きの引き出しを開ける。さっき思い出したことをノートに記載しておかなくては。
「ピース。パイス王子の右腕で口が悪い、、と。」
でも、そこからは思い出せない。全てのキャラを攻略した後に特別な条件を満たせば・・・というのは思い出した。特別な条件とは何だったのだろう。ピースは隠しキャラなので情報が少なかった気がする。それに私の周りではパイス王子押しが多かった。光り輝く金色の髪。美しい青色の瞳。現実離れした整った顔(ゲームだから現実離れしているのは当たり前だが)。誰に対しても分け隔てなく優しい態度。頭脳も良く、成績は常に学年1位をキープ。更に超強力魔法を使いこなし、完璧を絵にかいたような人物だ。私だってパイス王子のことは好きだった。けれど、それは私がヒロインだったから。パイス王子に気に入られる為に必死に努力もした。午前中は魔法や礼法の授業を受けスキルUPに励んだし、午後からは食堂で働いてお金を稼いだ。魔法や礼法の家庭教師はパイス王子に出会ってから紹介してもらった。王子様からの紹介ということで、かなりレベルの高い教育を受けられた(と思う)が、スキルが向上するにつれて授業料も高くなっていった。稼いだお金は授業料や衣装代に消えた。デートにドレスを着ていくことで相手の好感度を上げる方法があったのだ。それはパイス王子だけではなく、他の攻略対象者も同じだったが、ドレスにも好みがある。相手の好みの装いをするほどに好感度は上がる。シンプルだけれど上品な、目の色と同じ青いドレスを好むのはパイス王子。フリフリの淡いピンクのドレスを好むのはクロー王子。そんな感じでドレスや装飾品、とにかくお金がかかる。
(ヒロインって根性があるわね。さすが可愛いだけじゃないわ。)
操作していたのは私だったが、自分はヒロインと同じことはできないと思っている。
(だって休む暇なくスケジュールを詰め込んで、土日だって情報収集や出会い・・スチル集めの為に町に繰り出すのよ。)
「カレーなサバイバル」の記憶だけは次から次によみがえってくる。サラサラと書き止めているうちに重大なことに気が付いた。