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私は鏡をじっと見つめてみた。
「やっぱり・・・」
美少女の要素が何もない。目は一重だし、鼻もそんなに高くない。一重だって綺麗な人はいるし、前世で見たアニメの主題歌には「鼻が低くてもお気に入り」ってフレーズがあった。
「お気に入り・・ってあれだけ目が大きければ多少の欠点も可愛く見えるポイントよね。」
全てが平均点、もしくはそれより低いパーツをかき集めたって美少女に近付く訳がない。それに私の黒い瞳だってこの国では普通だ。青や緑の瞳も珍しくはない。けれども王子様とヒロインの瞳の色は格別なのだ。例えようのない青、としか言いようがない。
「やっぱり主人公って違うのよね。生まれた時から特別なものを持ってるのよ。」
ひょっとしたら、と思い服を脱いでみる。私が気が付いていない場所に生まれつきのアザがあり、その模様がいにしえから伝えられる紋様と同じとか、私がピンチの時に光りだして内に秘められた力を明かすキッカケになる、とかありそうじゃないかと期待して隅々まで見てみる。
「な~~~~~い!!」
黒子はあるけれど、アザなどない。手鏡二枚を両手に持ってあらゆる角度から全裸の自分の体を見てみる。ちょっと冷静になれば、何をしているのかと恥ずかしくなり服を着た。大体、裸にならないと分からない場所にあった場合、どうやってそれを証明するのだ。いちいち裸になって人に説明をするのか。もしお尻にその模様があって、私がピンチになった時にお尻が光りだしたら、それこそ笑いものだ。
「ピンチなんて、ならないに越したことはないわ!」
この国では魔法を使える者がいる。「カレサバ」に出てくる王子様を含むヒーロー達もヒロインもそうだ。けれども人口に対して、魔法が使える者の割合はかなり少ない。ヒロインは最初は自分が魔法が使えることは知らない。王子様と知り合い、環境が変わっていく中で徐々に魔法の力を発揮できるようになるのだ。操作するのは私だったが、そこそこの魔法が使えるようになるまでには長い道のりだった。このことは今は置いておこう。
机の上に置かれた「カレはじ」に手を添えてみる。もしかすると透視ができたり、ページが捲れたりするかもしれない、、という淡い期待を抱いて。1分で諦めた。何も見えてこないし、本が捲れそうになる気配も感じない。