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ブレイブソードフロンティア  作者: 川辺 竜介
2/4

日常とはじまり

 朝露が滴る森の中で水滴を切り飛ばす木刀があった

イシュ=レントギアのブレイブ

始まりの木刀「スターリー」は今日も空を切る音を鳴く

素振りは欠かせないのがイシュという少女だ

しかし、ほとんどが本を読むことでイメージを膨らませ

勇気を学んだあとに練習に励む

イシュは活字恐怖症の重症だ

活字を見るだけで失神するし、冒険などで手に入れた古い設計図の文字で

倒れたため同行者に運ばれていた

イシュはメガネに高くも低くもない黒い短髪と見た目は完全に本好きでそれかと思われる

理由はさすがに見た目だけではない

家に本が山積みなのは今は亡き親からの遺産だから

「本は世界を広げるんだぞ? イシュはどんな世界が知りたいかな~」

「そうよ~イシュちゃんは可愛いしきっと物知りだったらもっとすごいわよ~」

親バカなくせして十二歳の時に冒険中にいなくなった

それが親に対しての評価

「本読んだら早いのかな? 」

思わず呟く

「おっ! イシュちゃんがようやく本の力に頼るように?」

うわぁっとビックリしたイシュをからかうのは

お姉さん系の先輩 リツラ=リーガー

「イシュちゃんが行方不明だから探したんだよ~」

「いや、毎朝になんで探すんですか?」

「イシュちゃんは朝ご飯食べずに朝だと認識する?」

何言ってんの? この人は? と呆れた

「だってイシュちゃんのおはようございますが主食なんだも~ん」

なるほど この人はあまり近づかないほうがいいな

そんな納得を声には出してないが

「大丈夫だよ~ グイグイ行くから~」

えっ?なんでわかったの?

これも何故か伝わる

「だって顔に出てるからね~」

思わず顔を触ると口角が引きつっていた

顔が赤くなるのを見たリツラは

「あら~ 知られたくないことも考えてたのかな~」

露骨に嫌な顔になる

「そういうこと言うリツラさんは嫌いです!」

「え~ リツラお姉ちゃんの家に・・・・・・」

昔に言った事をぶり返そうとしたために

慌てて口を閉じようと近づくが

「そいっ」

「うわぁっ」

手を掴まれ開かれた後、グイッと顔を接近させられ

危うくキスという秘技を披露するリツラ

顔を横にすることでなんとか回避

その代わりに耳元で

「そういう反応だから苛めたくなるんだよ?」

ゾワゾワと鳥肌が立ち

子鹿の如く足が震える

「あら? 冗談なのに~」

解放されへたり込んだイシュは周りに助けを求めようと探す

だが、誰もいない

リツラもあっ! とやり過ぎたことに少し焦る

「そっそうだ! ほら干し肉だよ~」

恐怖に染まりきった顔でふるふると首を横に揺らす

なにがあったんだっけ?

リツラは思い出した

そういえばお風呂場で触ろうとしたときに追いかけて・・・・・・

後頭部を押さえながら怯えるイシュ

トラウマになってる!

リツラはさすがにからかうのをやめ

「そっそういえば~ 講習会があるって言ってたよー」

それどころではないイシュは

魂のない目で呆けていた

やばい・・・・・・

「回復の光を降らせっ!」

リツラのブレイブである銃剣を背中から引き抜き

上空に放つ

イシュの周りに光の雨が降る

すると落ち着いたのか

目に光が戻ると

焦点が合うのが先か、即座に猛ダッシュで逃げた

「あっあとで謝ろうかな? いや絶対に謝らないと口きいてくれないよね・・・・・・」


 朝の街にダダダッと音が鳴り響く

これが早朝講習会の音かと思うのが大半だったが

一人のギルド員は気づいていた

その名をクバール、エフィル

冷徹の反対で兄とは対照的な女性

「またリツラさんか・・・・・・」

朝の日差しが射す窓から下を見る

「イシュさ~ん! どうしたんですか~?」

聞いたことのある声に急停止したが前方にこける

「ありゃ~」

イシュは即座に立ち上がると無言で

エフィルの部屋まで来た

エフィルを見た瞬間に

涙が溢れ出しぎゅっとした

「よしよ~し」

エフィルは毎朝、色んな理由によりイシュの頭を撫でいる

すべてリツラ関連で

「しっしごど~っ! ぐだざい~っ!」

「わかりました! まず講習会はどうですか?」

一瞬、時間が止まった

徐々に首を振る

「リヅラがぐるっ! ごわい~っ! いやだぁ~!」

あははっと苦笑する

「じゃあ、このエフィルさんが守っちゃいますよ!」

「・・・・・・ほんど? じゃあいぐっ! いぐがらっ だがらっ! そばにいでぇ~!」

男だったらこんなのは世界すら救ってしまうぐらいだろう

しかし、エフィルは慣れすぎて麻痺しているため

冷徹に近づいたとすら言われる

周りをキョロキョロと警戒しながらしがみつく様は

なにがあったんだ? この子と思われるのはもう過去の話

「イシュ~ 林檎食うか~」

「レンちゃん~ 今日も大変ね~」

町の人がなんか日常としての認識も持つ

リツラが目の前に偶然か待っていたのか

申し訳なさそうに手を振る

イシュはエフィルの後ろに隠れ

雨に降られた猫の様にオドオドとする

「リツラさん? すこしお話があるんですが」

優しさは全くない永久凍土の目がリツラを凍らせる

「困りますよ~? 私のイシュさんに手を出さないでもらえますか~?」

「はっはい面目・・・・・・」

私の? ん? 聞き間違いかな?

「聞いてますか? リツラさん?」

「聞き間違いかしら? エフィルさんがイシュちゃんのことを私のと聞こえたんだけど?」

「それがなにか?」

少し電気がバチバチと走る

「あのねエフィルさん? イシュちゃんは妹の様な存在なのよ?」

「不思議ですね~ こんな姉妹がいるんですか~?」

ねっ! イシュさ~ん? と後ろに尋ねる

イシュは首を横にブンブンとした

正直すぎる拒絶という意思表示

ショックを隠しきれないのか雪崩れ落ちるリツラ

「そっそうよね・・・・・・」

次第に涙が溢れていたリツラを放置して

講習会へと赴く

「だっだいじょうぶっ? かなっ? リツラさんっ!」

たどたどしく一応、心配するイシュに

「大丈夫ですよ~」

笑いながら頭を撫でると笑顔のままで元気に

ひとさじ指をピンと立て

「あとは深呼吸ですよ!」


 ひそひそと話が聞こえる

「リツラに生気がねえぞ? どうしたんだ?」

「バカっ! 知らねえのかよ! リツラさんが失恋したって話!」

「マジで? 百戦錬磨のリツラが? すげえな・・・・・・」

パンっと手を叩く音がする

「てめ~ら! 聞いてんのか!」

一気に静寂が支配する

集まった視線の先にはセイ=クリアがいた

「今日の朝に来た知らせだっ!」

バッと開く皮の書面を見ながら

「タリアが防衛戦の中で出られねえんだ! タリアのことだから関係ねえ防衛もだろうな!」

どよめくのは当たり前だ

最初の文面では木の伐採と整備だったのだから

巨木の森での伐採は慣れのためにある上級の腕試しだ

「おい! リツラっ! 聞いてんのか!」

「は・・・・・・ はい・・・・・・」

疑問を浮かべたセイはイシュを見た

納得したのかイシュをちょいちょいと手招きし

近くに来たイシュに耳打ちするが最初は首を振られる

だが次の一言でイシュはリツラへ近づき

「リツラお姉ちゃん! 頑張って!」

「リ・・・・・・ ツラ? お姉ちゃん・・・・・・? 頑張って?」

虚ろな目でイシュを見るリツラは

次第に周りに輝きの幻覚が起こす

「まっ任せなさい! 絶対に姫を!」

仕方なく言ったイシュは言葉を聞くとすぐ逃げたが

そんなのは関係なかった

目の前に見える宝に目がくらんだリツラは

食い気味に

「どこですか! 防衛戦は!」

周囲は納得した

いつもの失恋か!

盛大な心のツッコミはきっと全員のものだろう

よしっ! とセイが息巻くと

「相手は『紅蓮の死神』である人型の魔物だっ!」

全員の士気が上がった中で

「イシュさんは露払いですね~」

一人だけ下がった・・・・・・


 低級任務である露払いこと

後部防衛つまり弱った魔物や残った魔物の掃討を受注したイシュ

エフィルは笑顔で

「まずは強くなりましょうっ!」

「うっうん・・・・・・」

ひとまず落ち着いたイシュは

気を落としながらも部隊に加わる

リツラが先頭で軍隊を率いる

セイが居残りだ

リツラ=リーガーは回復の銃剣【ヒーラーガンナ-】の異名がある

素早い動きと正確無比の射撃で回復と殲滅を請け負う

意外にすごい器用だったりする

そして移動系のブレイブ持ちの

シータキオン シュヒナは

大量の機装による強化された馬を出す

「移動ならお任せ・・・・・・ です・・・・・・」

自信がなくオドオドした性格でほぼ、工房にこもるのはご愛嬌だ

クルストチームとグリアルチームという

ギルド内で有名な部活みたいなチームの面々もおり

クルストチームのバカ三人組がリツラにいつものアピールを仕掛けていた

「リツラさん! 今回は負けねえっすよ~」

「こらこら~ リツラに追いつかねえだろ~」

「リツラ・・・・・・ 超える・・・・・・」

いつもなら会釈するが今回は

「これで大丈夫だわ・・・・・・ イシュちゃんはきっと・・・・・・」

俯きながらブツブツ言っていた

「おっおい・・・・・・ リツラさんがなんか怖いぞ・・・・・・」

「普通だろ~ 多分~」

「そう・・・・・・ 普通・・・・・・」

あっあの~とシュヒナが恐る恐る

「出発しっしないとっ! だっダメですよ~っ!」

その声でおぉーっと叫ぶ部隊に

ひゃぅっと反応するシュヒナを尻目に

走り出す

それに続こうとするイシュに声を掛けるシュヒナ

「こっこれ・・・・・・ セイさんが・・・・・・」

「ありがとう! シュヒナ!」

はぅっと照れて逃げていく

無理矢理のから元気でもイシュの笑顔で破壊力が増す

手にあったのは水鬼の晶石【アクアタール】

これは水属性の兆しのあるものが使うことが出来る

ブレイブ専用の追加武装だ

効果は単に水を纏うと個人差のある効果

「なんでだろう? 私は樹属性なのに・・・・・・」

考えるのを後にしたが心に引っかかる


 防衛戦 紅蓮の死神 

そう命名した作戦名を知らぬタリアは

息を切らしながら囲まれる

「コンナテイドカ? ニンゲン?」

人型の魔物は首を傾げながら無表情で睨む

「ぐっ! このままではタリア姫が!」

負傷した後ろの同行者達は

ギリギリ歯がみをする

「オロカナ! ヨワイモノハオイテクガジョウリ!」

「黙りなさいっ! みんなは弱くないっ!」

戦闘中は人がガラッと変わるクリシュタリア

そんなのは強がりだと誰もがわかっている

紅蓮を纏う人型の魔物に必殺技は通じなかったのだから

「オモシロイナ、ニンゲン」

ニヤっと笑う死神は炎の鎌を持ち振り下ろす

後ろに向かい鎌先を

気がついた時には遅かった

「やめて~っ‼」

声は空しく後ろを劫火に染めた

「くっ!」

涙が溢れたまま死神を見据えるクリシュタリアに

「ナニヲオソレル? マダイキテイルゾ」

後ろからのうめき声と共に戦慄が走る

炎のなにかが後ろで糸を引いている

まるでマリオネットの様に

「なっなにを・・・・・・?」

「グモンダナ、ヨワキモノドウシノキョウダ」

負傷したものたちは武器をクリシュタリアに向ける

「ワレラ、シニガミ二ハキサマラハアカゴ」

不適な笑みを残し燃え尽きるかのように消えた

ノイズが走り声が聞こえる

「クリシュタリアさん! 大丈夫ですか?」

エフィルが問いかけている

イシュが心配そうに見つめている幻覚まで

目眩が終わると吹っ飛んでいた

「ぐはっ!」

遠目に見えた黄色い死神が微笑みながら舌を出すのを最後に記憶が途切れる


「楽しかった? 紅蓮?」

「つまらんな、あんな弱者は」

フードなどの服装は紅蓮の死神と同じで大柄の男

それに馬鹿にするかのように言葉を掛けるのは

黄色いフードの女性

「貴様らはなぜ、おとなしく出来んのか!」

白い髭を伸ばした老いた男性が叱責を浴びせた

「うっせえな、ジジイ!」

「口の利き方がなっとらんな!」

いつもの口げんかが始まったよと呆れる女性は

映像を出した

それはまがいもなくブレイブの様な剣先から

「これがクリシュタリア=バンドヒールっていう新人ね~」

脇で見ていた

青髪の男性がむーっとして出てきた

「ずるいよっ! 僕も遊びたかったのに~」

「それは」 「お互い様」 「仕方ない」

と三人の顔の似た少女が現れた

右から ピンク 緑 紫と

色とりどりの髪色で眠たそうな顔

三人の少女と髪型や少し顔が似ているが

それぞれに凶悪なブレイブとそれに似合わぬ性格に少し違和感があるという違いがある

そんなやりとりを見ていたのは

上空のでかい『なにか』だ

「キケ!」

全てを制する声が響いたために注目が集まる 

「ツギハッ! ジョウト『アシュルガード』ヲシュウゲキダッ!」

城都『アシュルガード』

城を中心に街が広がる主要都市の一つ

キクアリーナ王国というイシュやクリシュタリアが住んでいる国で

ギルドの本拠地のある大陸一である防衛国家

「あんなザコの国か? 総出で行くほどなのか?」

「仕方ないよ~ 紅蓮~」

「ふん、この青いガキと行くのか! 手を焼かせるなよ?」

「遊べるねっ!」

「楽しみ」「どんなのが」「いるのかな?」

そしてそれぞれの武装は全ての者がブレイブの最上級クラスだった


 倒れたクリシュタリアはようやく光を取り戻す

「クリシュタリアさん! 大丈夫ですか?」

エフィルの横で

イシュは心配そうに見つめていた

「すまねえな・・・・・・ タリア・・・・・・」

セイは申し訳なさそうに俯いていた

「はっ! 同行者の方々は!?」

「それは大丈夫なんだがな・・・・・・」

リツラでも長く掛かるのではあるが何故かそこまで火傷も傷もない

ほとんど擦り傷だ

「タリアはイシュと城都『アシュルガード』に状況説明だ」

「なぜ、イシュが?」

「わからねえが本部からの呼び出しなんだ」


始まるのは戦火の灯火

今は弱けれどいずれ、すべてを燃やし尽くす

燻る命の樹木はその時、どうするか?



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