第8話
第8話 (救援4)
「オスカー大丈夫か!?」
彼の仲間の槍遣いがキマイラの攻撃をあしらいながら尋ねる。
「あっあぁ…剣が折れちまったが俺の体には問題ねぇ……」
オスカーの腕には折れた剣が当たったのか傷ができておりそこから血が流れ出ていた。
「戦えるのか?」
「何とかこの折れた剣でも、攻撃を防ぐくらいはしてみせるさ。なんなら俺はここで奴らの気を引くからお前らは、レイラとウェーバーの2人を抱えて逃げちまえ」
「それはダメよ!!あなたを置いて逃げることはできない。それに折れた剣じゃ無理だわ」
【魔術師】(ソーサラ―)の女は、魔杖でキマイラに威嚇しながらそう言う。
「そろそろ出るか」
「ああ」
「はい」
ミーナとリタは眦をけっして覚悟を決めたらしい。
「リタ、お前はなるべく派手なやつを上に打ち上げてやつらの気を引き付けてくれ。ミーナお前は俺があいつらに斬りかかるまでそこで矢で後方支援をしてくれ」
「わかった」
「わかりました」
二人は小声で返事をした。
「頼むぞ」
俺は≪神速≫のスキルを発動させ目にもとまらぬ速さで走った。
「雷閃光、ドンナーブリッツェン!!」
眩い光が、キマイラたちの上空に打ち上げられた。
「ギイイッ!」
キマイラは上を向いた。
オスカーたちも手が止まる。
「なんだあれは!?」
「もしや……救援か?」
俺は、キマイラの動きが止まったすきに双剣を腰の左右の鞘から引き抜きそのまま一匹のキマイラの目の高さを狙って目から上を斬り飛ばす。
「ギイイイイイイィィッ!?」
絶命の叫びで他のキマイラたちがこちらに気付く。
そして、口を開けて火炎を放ってきた。
「くっ!!」
すんでのところで≪神速≫のスキルを発動し飛び上がり火炎を避ける。
そして、一匹に狙いを定めて双剣を振り下ろす。
「ギイイアアァァッ」
こちらを見上げたキマイラの口を裂くように斬った。
そして俺の後ろに回り込もうとしていたキマイラの尻にドスドスっと矢が刺さる。
矢はキマイラの表皮が硬いため肉までは届かなかったがキマイラの注意を引くことはできた。
矢の刺さった尻を気にしたキマイラの首に体重をかけた剣を振り下ろす。
剣はキマイラの硬い表皮を突破し、肉を断った。
「ギアァァァァァァッ!!」
血を噴き上げキマイラは倒れた。
あと3体。
3体のキマイラたちは密集して口を開いている。
俺が近づいたところに密度の高い火炎攻撃をするつもりなのか……。
「怒れる火炎、ブルムフランメ!!」
オスカーのパーティーの中の【魔術師】の女が、魔法で援護してくれる。
俺は即座に【神速】のスキルを発動させ、キマイラの一体に近づき剣を目に突き立てる。
「ギアァァァァァァァァァ!!」
そして抉るように抜き取り、こちらに火炎を放とうとしているキマイラの口に突き立てる。
発射の瞬間に剣を口に突き立てられ反射的に口を閉じたキマイラは自分の口の中に高威力の火炎を撃ち込んでしまい顔面がその威力で爆発、四散した。
残り一体。
「ギガァ!!」
なかなかしぶとく火炎を次々に撃ちだしてくる。
頬を火炎がかすりわずかに焦がしていく。
俺は【神速】のスキルを発動して蛇行しながら距離を縮める。
そして間合いに入ると剣を横に薙ぎ足を切り落とした。
そしてバランスを崩したキマイラに対し、脳天に思いっきり剣を突き立てる。
ドッサッという音とともにキマイラは地に伏した。
「ローレン!!来てくれたのか!?」
岩穴の中からオスカーが折れた剣をぶら下げ出てくる。
その姿は、激戦があったことを容易に想像させた。
「ああ」
オスカーに続いて【魔術師】の女と槍遣いの男に背負われた男女が出てきた。
傷がひどく自分で歩くこともままならないらしい。
その傷はひどくなるべく早めに医者に見せたほうがよさそうなものであった。
「オスカー…何があったんだ?」
オスカーのパーティーならキマイラの6体程度に後れを取るはずがない。
「実はな……俺らと遭遇した敵はこれだけじゃないんだ。ここに来るまでにデーモンがいただろ?」
「ああ、いたな…すべて倒したから帰りは心配しなくていいぞ」
「…さすがだな……俺らはあいつらに遭遇した時岩穴に入ってあいつらが上空から去るのを待った。そしてあいつらがいなくなったところまではよかった。そのあとそれまでとは違う高位のデーモンを発見して息をひそめて通り過ぎるのを待った。まとっているオーラが違ったんだ。そして通り過ぎるのを待ってここまでこいつら以外のキマイラ8体を倒した。しかし窪地にさしかかったときに襲撃されたためこうして2人がけがを負ってしまった。で、この岩穴で休むことになったんだがこの岩穴に入ってすぐ、あの6体が近づいてきた。俺らはすでに【魔術師】がかなり魔力を消耗していたのと緊張感による疲労とで苦戦を強いられていた」
怪我をした2人にリタは治癒魔法をかけている。
一方ミーナは周囲を警戒していた。
「なるほど……気になるのは高位のデーモンだな」
「しかし、居場所もわからないんだろう?」
「ああ、だがさっきの騒ぎで気づいていてこの近くにいる可能性も十分高い」
なるほど……厄介な相手だろうな…。
そんなとき、ミーナが絶叫を上げた。
「うわあ何あれ!?大きい!!」
やはりか…噂をすればなんとやら、か。
俺は岩穴の入り口に身をひそめつつ夜闇の空を見る。
「ああ…あれか、本当に来たな……」
それは、今までのデーモンの3倍はあるかという大きさであった。
よく目を凝らして見ると口の中に赤い光が見えた。
マズい!!
「ここから急いで出ろ!!」
「どうした!?]
槍遣いは、そのデーモンの状態を知らない。
「いいから、死にたくなかったら出ろ!!」
ミーナとリタ、それからオスカーのパーティーの【魔術師】が俊敏に反応し走り出た。
「オスカーは!?」
オスカーと槍遣いがいない。
「オスカー!!早く!!」
オスカーは槍遣いと一緒に動けない仲間を運び出そうとしているらしい。
無情にも次の瞬間。
デーモンの口から火炎が放たれた。
それは、今までのデーモンとは異なる威力の火炎であった。
火炎は狙いたがわず岩穴の入り口に着弾。
仲間を抱えて出ようとしていたオスカーと槍遣いは火炎に巻かれあっという間に蒸発していった。
「ああああっ!!」
オスカーの仲間の【魔術師】が泣き崩れる。