表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/20

第7話


第7話    (救援3)

  


 


 「終わったか…」

 やっと、ほっと一息つける。

 ミーナとリタのほうを見るとただ唖然としていた。

 そして目を瞬かせるとようやく正気になったようだ。

 「あっあの、力になれなくてごめんなさい」

 「何もできなくて、すまなかった」

 リタとミーナが頭を下げる。

 「そんなことないよ。時間を稼いでくれていたおかげで3体とも無事に倒せたんだ。ありがとうな」

 辺りには息絶えたデーモンたちの死体から多量の血が流れ出ており地面を魔族の血液の色である緑色に染めていた。

 そして、血の匂いを振りまいていた。

 「なぁ、ここから離れてちょっと休まないか?」

 結構彼女たちも疲れただろうし、ここから先何があるかわからないから体を少しでも休めておきたい。

 しばらく歩くと奥行10メートルほどの岩穴がぽっかりと開いていた。

 中を確認してからそこに入る。

 そこは、ここしばらく誰にも使われていない様子だった。

 俺は、ランタンに火をともした。

 本来なら明かりを使うと、モンスターや魔獣に見つかってしまうので使いたくはないのだが、ミーナとリタを安心させるために使うことにした。

 リュックサックから、ギルドの美人お姉さんにもらった、3つの紙包みを取り出し、ミーナとリタに渡す。

 「食えるうちに食え」

 「うん」

 紙包みの中には、ハムとチーズとキャベツそしてピクルスやオリーブの入ったサンドイッチが入っていた。

 ピクルスのわずかな酸っぱさがアクセントになっている。

 そしてとけたチーズが何ともおいしい。

 あっという間に食べ終わると、ナメクジ退治で気持ち悪くて飲む気がせずに飲み物が余っていることに気が付いた。

 大概の冒険は日帰りなので日持ちするお酒ではなく、普通に水やお茶を入れていたりする。

 水筒に口をつけて水をぐっとあおるように飲む。

 冷たくもなくただぬるい、微妙な温度な水は滑るようにストンと胃に落ちていったところでのどの渇きだ癒えた。

 「そろそろ出発してもいいか?」

 「はい、オスカーさんたちが心配なので行きましょう」

 とリタが言ったがミーナからは、返事がない。

 どうしたのか?と思って彼女のほうを見やるとミーナはもじもじしながら俯いていた。

 「どうしたの?」

 リタは心配そうに聞く。

 「……用を足したい……」

 「大きいほうか?小さいほうか?」 

 冗談めかして聞いてみる。

 「なっ乙女に向かって何を聞く!!」

 「そうですよー」

 ミーナは恥ずかしさにむきになりリタが同情するように言う。

 本当の乙女だったら冒険者稼業なんて血なまぐさい仕事、やってるはずがない。

 「じゃあ、外に行って済まして来いよ」

 しかしミーナはいかなかった。

 「怖いんじゃないですか?またさっきみたいになるかもしれないし」

 「…恥ずかしいがそうだ。二人ともちょっと離れたところで見張っていてくれないか…?」

 「お前のするところをか?」

 ちょっと聞いてみる。

 「だからなぜそうなる!?」

 「言ってみただけだ」

 また、馬のち〇このときみたいに変態扱いはされたくないからここらでやめておこう。

 ランタンの火をおとして、荷物をまとめて二人を伴って岩穴の外へ出た。

 ちょっと、歩いたところの道端にちょうど良いくぼみがあったのでそこで用を足してもらうことにした。

 「…もう少し離れてくれないか?」

 「あいよ、こんなもんでいいか?」

 いくら目がよくとも細部が見えないぐらいの距離にいるのだが…。

 「絶対に見るなよ!! あとリタ、あいつが振り向いたら魔法でぶっ飛ばしてやってくれ」

 「はい、任せてください」

 しばらくすると終わったという声が聞こえた。

 無音の森の中なので、チョロチョロと音が聞こえてしまったのはしょうがないことだろう。

 ミーナは、近くを流れる清水の中に手を浸して洗っていた。

 「じゃあ、行くぞ」

 そう告げてオスカーのパーティーメンバーの捜索を再開した。

 




 しばらくして、再びこの道の入り口で発見したのと同じ蹄の跡を見つけた。

 「まだ新しいな…」

 ほえ?とリタがのぞき込む。

 「ほんとですね。くっきりとしています」

 「ってことは、近くにいるってことか?」

 さっきまで恥ずかしいのか黙りこくっていたミーナが口を開く。

 「おそらくそうだろうな…この足跡をたどっていけば、オスカーのパーティーに、会えるかもしれないな」

 足跡は、しばらく進むと道から外れて沢のほうへと下りていく。

 キマイラが近いかもしれないからか、ミーナとリタは緊張の面持ちだ。

 足跡は、沢沿いの土を踏んで進んでいたため追跡することができた。

 そして、しばらくすると別の沢との合流地点に至り石が増えてきたので足跡をたどれなくなった。

 「どちらを行くか……」

 いまだにスキルの≪接敵察知≫を使ってみても反応がない。

 「困りましたね…」

 リタはそう言って渋面を作って見せた。

 「じゃ、左の沢に進んでみるか」

 ミーナがそんなふうに言う。

 「なんでだ?」

 「忘れたのか?獣人族の中でも特に犬獣人は鼻が利くんだぞ。かすかにだが、足跡からしていたにおいは左の沢のほうへ続いてる」

 「そういえばそうだったな。頼りになるな」

 「へへ!!今さらかよ」

 少し照れながらミーナはそう言って鼻の下をかく。

 左に折れ沢を登っていく。

 「こっちだ」

 ミーナは先頭を歩いて俺とリタを先導する。

 「この辺か…?」

 ミーナはしゃがんで何かを探す。

 「あった。さっきの足跡だ」

 そこには、さっきと同じ足跡があった。

 「ありがとうミーナ」

 沢から再び道へと足跡は戻っていく。

 「ん?何か近くにいるな」

 俺も≪接敵察知≫のスキルを使って探してみると確かに少し向こうに気配を感じることができた。

 はやる心を抑えて、慎重に進むと剣戟の音や悲鳴、怒号といった声が聞こえてきた。

 声のする方向になおも進むと、オスカーのパーティーと6体ほどのキマイラが見えた。

 「いたな…」

 「ああ……思ったよりも状況は芳しくなさそうだ」

 オスカーのパーティーは、俺たちが休憩をするのに使ったような岩穴にこもって入り口あたりで戦っていた。

 「確か5人でギルドを出ていったよな…」

 ミーナがオスカーのパーティーから目を離さずに言う。

 「今、戦っているのは3人ですよ?なんかあったんですかね?」

 リタは心配そうだ。

 そのときバキン!!と音を立ててオスカーの持っていた剣が折れた。

 仕留めようとしたキマイラの表皮の硬い部分に突くように当たってしまったのだ。

 それに、激戦で刃こぼれもかなりしていたのだろう。

 それを機に、徐々にオスカーのパーティーの面々が後退していく。

 「いよいよマズいな…」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ