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第4話

第四話 嘘少なめで、ダンジョンであったことを話しました。




昼下がり、街の中の食事処からは食欲を掻きたてるいい匂いが漂っていた。

今日も、ギルドは冒険者たちでにぎわっている。

丁度、午前中に仕事を終わらせた冒険者たちが帰ってきている頃合いだからか。

受け付けが混雑するのは、決して冒険者が多いからというだけではないだろう。

「男どもがよってたかってデヘデヘしてやがる」

ミーナは、長い間待たされることにイラッとしながらそんなことを言う。

もしかしたら、美への嫉妬かもしれない……。

「お前ら、謎のダンジョンに行ったんだって?」

そんなことを馴染みの冒険者に聞かれる。

声をかけてきたそいつは、冒険者に俺がなったときに俺をはじめての冒険に連れ出してくれたやつだ。

俺は、ずっとミーナとリタと組んでいたわけじゃない。

15歳のときから冒険者家業をやっていて今のパーティーを組んだのは、俺が17歳のときだ。

それまでは、いろんなパーティーに同行してお金を得ていた。

「あぁ、そのダンジョンに行ったよ。めぼしいものなんて全くなかった」

「そうだろうな。ろくな魔物やモンスターもいなかったんだろ?」

「その通りだ」

「あそこはさー、何も金になる(モンスターや魔族がいる)気配がしないって聞いてたから依頼書があっても誰も行かなかっただよなー。じゃ、俺らは今から南のほうで山沿いの街道にキマイラが出たらしいから行ってくるよ、じゃあな」

キマイラというのは、強靭な山羊っぽい体を持ち火を吐く獰猛なモンスターだ。

なかなか厄介なモンスターで、討伐中に死亡するケースは多い。

「気をつけてな」

でも、彼らなら大丈夫だろう。

他にも列に並んで待つ間にいろいろな冒険者たちと話をした。

ここでする話のほとんどは、情報交換のような内容のものばかりだが。

しばらくすると、やっと自分たちの順番が回ってきた。

「こんにちは!! こないだのダンジョンはどうでしたか?」

受付嬢の美人お姉さんは、こうして冒険者たちの冒険内容まで覚えているのだ。

「あー、本っ当に何もなかった。で、報告書を提出に来た。それと、街道で暴れていた盗賊は、討伐したのでそれの報告に」

「はい、ありがとうございました」

お姉さんは、書き忘れの項目がないかを確かめるために一度、報告書を読む。

「あのーこれは何ですか?」

お姉さんは、主従関係を結んだ項目のところを指さして首をかしげる。

「あー、報告書に書いたとおりです」

「この男ねー魔族のかわいい女の子たちのキスしたんだぞ!!」

脇からミーナが余計なことを口走る。

お姉さんが固まった。

そこに、リタが追い打ちをかける。

「それも5人と、です」

その光景を思い出したからか顔を赤らめている。

「あっあああなたは何をしているんですかー!!」

ギルド内にお姉さんの絶叫が響く。




ギルド長さんと相談ということになった。

「どういうことですか?」

ギルド長さんは、美人なのだがどこか威圧を感じさせるオーラを放っている。

人の上に立つとはそういうことなのだろう。

「順を追って説明しますとですねー、ダンジョンに調査に行ったところ何の攻撃もなく最奥の部屋にたどり着いてですねー、その部屋に入ると弱った魔族がいて助命嘆願をしてきたというわけです」

「で、相手は魔族なのにどうして助けてしまうんですか!!」

「実際に魔族と戦え、ダンジョン攻略の模擬戦闘に使えると思ったからです。すでに俺を主とした主従関係は結んでおり、俺への抵抗はできない(嘘)状態にあります。血の契約により彼らの体内には主である俺の血も流れており、抵抗すると死ぬようになっております。(嘘)」

本当のところは、かわいそうだったからなのだがそんなことは言えない。

ミーナとリタも空気を読んで黙っているがときおり笑うのをこらえていたりする。

しかし、ギルド長さんは眉間にしわを寄せて考え込んでしまっているので笑うのをこらえていることに気づかない。

「わかりました、上役に相談してみます。私の判断では決めかねるので。それまでは勝手な行動を起こさないでください。いいですか?」





丁度、昼時は過ぎており、あんだけいたギルド内の冒険者たちは、仕事に行ったか、引き上げたのか、少なくなっていた。

ギルドに併設された宿屋の一階は食堂になっておりそこで、少し遅めの昼食をとった。

少し苦い顔になってしまった美人お姉さんに手を振られてギルドを後にする。

報酬は、ダンジョンの調査で金貨20枚、盗賊の討伐で金貨8枚だった。

 ギルドでの報酬は信用払いという形なっている。

 仮にも報告したことと現場の状態が違ったりすると賠償金問題が発生したり、指名手配されたりする。

「金貨28枚、何に使いましょうかねー?」

リタは、この街に戻ってきた大事なもう一つの目的を忘れてしまっている。

「おいリタ、この金であそこに俺らが生活拠点を整えるための生活必需品とかを買うんだぞ?」

「えっ……忘れていました。そうでした…はぅー」

「ローレン、少しそれだと心許なくないか?」

ミーナはそんなことを言う。

金貨28枚というお金は銀貨に換算すると280枚、銅貨に換算すると2800枚、小銅貨に換算すると28000枚という価値を持つ。

ギルドに併設されているような宿なら一人一泊銅貨8枚から12枚といった具合である。

「どんだけ豪華な内装にするつもりなんだ?」

「いや、だって長い間あそこで暮らすことになるんだぞ?住みよいにこしたことはないだろ」

当たり前だろといったふうに言う。

「まぁ、そうだな…」

「じゃ、もう少し稼ごうぜ!! 馬も手に入れたんだし、どっか適当なとこまでたったか行って依頼こなして今晩のうちに帰ってこようぜ!!」

そう言うとミーナは、ギルドに戻りコルクボードから依頼書を取りに行くのだろう、踵を返して駆けていった。

ってちょと待て!! 絶対、ろくな依頼選ばねーだろアイツ…。

急いでリタとひきとめに行ったが時すでに遅しで依頼書を受付に持っていって手続きをしていた。

依頼内容は、鉱山の坑道にはびこる鎧も解ける粘液を吐くナメクジのモンスターの討伐だった。

報酬金貨12枚の文字は魅力的だったが。

「すまない……金に釣られた」

ミーナが申し訳なさそうに俯いた。


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